手のひらサイズの…

𝐄𝐢𝐜𝐡𝐢

文字の大きさ
2 / 3

手のひらサイズのイラダチ

しおりを挟む
 ――ばたん!

 と、勢いよくドアを閉め、美沙は自室に入る。
 そして、彼女は盛大にため息をつくと、

「ぐぬぬぅ……! なにさぁ……! 人が、遊ぼうっていってるのにぃ……! いつからあの弟は、あんなになちゃったのかねぇ……!」

 ぷんぷん、と。そんな擬音が聞こえてきそうな様子で。
 美沙は勢いよく、ふかふかのベッドへダイブした。
 そしておもむろに、枕の横に置いてあった――例の、手のひらサイズの人形を取り出すと、

「もう怒った! 怒ったからね!」

 まるで人形に話しかけるように、美沙は憤りを人形にぶつけ。
 美沙は私服のまま、布団の中に入り込むと、人形をその中に潜り込ませた。
 そして、

「さて。今日は、どうかな……」

 美沙はそう言って、自分の尻の谷間に人形を挟み込むと、

「うーん……。ちょっと、今は出そうにないなあ……」

 美沙は人形から手を離し、人形をそのままの位置で放置する。

「けど……、汗のニオイとかも、伝わってるよね……。まあでも、健人のやつ、今はリビングに一人でいるはずだから、さすがに私のニオイだとは、思いもしないだろうけど……」

 なにやら意味深な、美沙の独り言。
 まるで、人形に伝えたニオイが、誰かへと届いているかのような、いいぶりだが――。
 それはさておき。

 美沙はそのまま、人形を意識の外にやると、ポケットからスマホを取り出し、時間をつぶし始める。

「あ、通知きてる……。ふーん……」

 どうやら、彼女は適当にSNSのページの閲覧をいるようで。
 美沙はせわしなく指を動かし、スマホの画面に、じっと目を向けてる。
 と、そのとき、

「んっ……」

 ぷう~……

「おお。中々にいい音……」

 美沙は放屁をし、ほっと息を吐く。
 そして、彼女はおもむろに布団をもちあげ、少しだけ中に顔を入れると、

「うっ……! くっさぁ……」

 顔をしかめ、布団を閉じる美沙。
 それから彼女は再びスマホに、意識を戻すと。
 眠そうに、あくびをしながらも、ぼんやりとその画面をいじりだした。

「なんだか、退屈だなぁ……」

 美沙はそうこぼすと、手の届くところに置いてあったイヤホンを手に取り。
 それをスマホに装着し、スピーカーを耳に差し込むと、彼女は適当な動画のページの閲覧をはじめた。

 そして、それからさらに数分後――、

 ぶっ――ぶぶっ! っすぅううぅぅ~~……

 美沙は、自分の尻から出でたそんな音に、「おお……」と。
 地味なリアクションをすると、

「あれ……、なんだか、急におなかの調子が……」

 なにやら、反応が薄い様子だ。
 その理由は単純で――、

「けど……、なんだか、眠く……」

 うとうと、と。
 美沙は重たそうなまぶたをゆっくりと閉じ、スマホを枕のすぐ横に置いた。
 そして、そのまま――、

 ふ――しゅぅぅううううぅぅ~~……

 眠りの合図かのように、彼女は気の抜けるようなすかしを、静かに放出した――。

 そして――。

 ……。
 ……。
 ……。

 + + + + + +

「あ、あれ……。私、寝ちゃってた……?」

 目を覚ました美沙は、ゆったりとした動きで、上体を起こし、

「――っ!? な、なにこれ……!?」

 突然漂ってきた、卵の想像させるような強烈な悪臭に、目を見開く美沙。
 それから彼女は、その臭いが布団の中からの臭いだということに気づくと、

「は? もしかして……、ねっ屁……? にしても……。おえぇ……」

 と、美沙は青い顔をし、具合の悪そうな声を漏らした。

「っていうか、人形は……!?」

 美沙はそう言って、自分の尻へと手を滑らせると、その谷間に挟んだままだった、人形を手に取り。
 じっとりとしたような、体温による熱を、人形から感じ、「あちゃあ……」と、苦笑いをする。

 そして、彼女は人形を適当に置き。
 布団をはがし、ベッドから降りると。
 その足で、おもむろに部屋を出て、すぐそばの階段をおりた。

 と、そこで。
 美沙は一階の廊下にあるトイレの電気がついているのを確認すると、

「……」

 とんとん、と。
 彼女はドアをノックし、

「健人~……」

 名前を呼ぶ。
 すると中から、

「ぁ……、ねえぢゃ……」

 具合の悪そうな少年の声だ。
 その声に、美沙が「大丈夫?」とたずねると、

「わがん、なぃ……。とにかく、もうちょっど、まっでで……」

 中にいたのは、美沙が呼んだとおり、健人という少年だったようで、

「うん。お姉ちゃんは大丈夫だから、無理しないで」

 美沙は心配げな口調で少年の声に返事する。
 つまり、どうやら二人は兄弟のようで、

「それより、どうしたの? 具合、悪そうだよ?」

 美沙がそう尋ねると。
 健人はその問いに、どう答えたらいいもんかと、少し考えた様子で、

「わがんない……。なんか、急に……、卵のような、にお――」

 彼はなぜか、そこで言葉を区切り。
 そして――嘔吐した。

 その様子に、美沙はなぜか口角をぴくぴくと痙攣させ。
 しかし、それを押し隠すかのように、

「だ、大丈夫?」

 美沙は何かをこらえるように無表情を浮かべたまま、少しあせったように訊く。
 しかし、答える余裕がないのか、健人は、あーだの、うーだのといった返事をし。
 それを受け、美沙はそれ以上何も訊いたりはせず、

「わかった。とにかく、お大事にね」

 その声に、「ありがとう……」と、具合の悪さを引きずった様子で、健人が返すと。
 美沙は――笑いを懸命に堪えながら、自分の部屋へと戻っていったのだった――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

三匹の○○○

𝐄𝐢𝐜𝐡𝐢
大衆娯楽
【注意】特殊な小説を書いています。下品注意なので、タグをご確認のうえ、閲覧をよろしくお願いいたします。・・・ とある家を襲おうとしている狼の、下品な話。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...