1 / 1
婚約破棄された悪役令嬢は王子様に溺愛される
しおりを挟む
「すまないが、彼女ができたので別れてくれないか」
言いにくそうに、しかし私の目をまっすぐと見据えながら宣言した。
一瞬だけ意味が分からずに固まってしまったが、内容が何にしろすぐに返事するのが私のモットーだ。
「……そうですか」
だが、どう返していいのかが瞬時には思い浮かばずに少し時間が空いてしまったようだ。
彼女が出来ようと、この人ーーアッシュは私の最愛の人だ。アッシュが幸せになれるのならば、それが私の隣でなくとも、誰の隣でも構わないーー。
この世界が乙女ゲームの世界だと、私は婚約破棄されてしまう運命の悪役令嬢だということに気がついたあの日からそう思っていたはずなのに……。
「……ッ」
涙が浮かんでくる。
誰の隣でも構わないと思ったのは私なのに何でだろう?
「ごめん」
罪悪感で押しつぶされそうな彼を見ていると、こちらまで悪い気持ちになってくる。
やっぱり私はアッシュを幸せに出来ないのか。
「大丈夫ですから! どうかお幸せに!」
無理やり笑顔を作って自分勝手にその場を離れた。
その場からは離れたというのに、アッシュの悲しい顔は頭から離れなかった。
「どうしたんですか?」
しばらく公園で呆然としていると、学園の王子ーーまあ国の王子でもあるのだがーーから声を掛けられた。
クラスメイトという関係で、王子と接するのは慣れていたはずなのだが、タイミングとやはり差を拭いきれない身分により内心かなり動揺してしまう。
果たして、これはどう答えるのが正解なのだろうか?
婚約破棄されました、とバカ正直に答えるのも何だか具合が悪いし、かといって嘘をつくというのも気持ちのいいものではない。
「ごめん、聞かれたくないことだった?」
「も、申し訳ございません……」
「謝る必要なんてないよ。むしろ僕の方が謝らなきゃいけないね」
ダメだ、この人イケメンすぎる!
婚約破棄された直後にこの対応……。くらっとしそうになる。
「でも、辛い事があったら何でも言ってね。僕ができることならば何でもするから」
微笑みながら言う王子。さすが学園の王子としても崇められるだけはある。
少しだけ心が癒えたことを実感しながら、帰路に着くのであった。
「おかえり」
「ただいま……じゃないですよ何やってんですか!」
何の気なしに自室のドアを開けたら先程別れたはずの王子が仁王立ちしていた。何これどんなホラー?
「ねえねえ、一個だけビックリするかもしれないこと言っていい?」
「もう既にビックリしているのでどう返答するか分かりかねるのですが」
「そうかそんなに知りたいのか」
人の話聞いてるこの人?
「実はね……三年前からずっと好きでした」
「えっ」
確かに特進クラス(クラス替えなし)で三年前対面したことはあるがーーそんなに話したことはないよね?
「君の自己紹介に惚れちゃったんだ」
私の自己紹介……って確かオタク趣味を語ったうえに噛みまくりだった黒歴史の権化みたいな存在じゃないですか!?
「君が一番好きだと言ったライトノベル、僕も一番好きなんだ」
下ネタ要素が八割のライトノベルじゃないですかヤダー……。
っていうか、そんなキテレツな理由で王子様が恋されましてもそれこそ反応に困るのですが!
「でも、君が婚約者持ちだと聞いて略奪するわけにも行かないから諦めてたんだけどーー」
その点ではアッシュよりちゃんとしてるわね。てっきりお前のものは俺のもの形式と思ったのだけれど。
「ごめんね、たまたま聞いちゃって……」
疑って悪いがそれ本当にたまたまなのだろうか。
推しキャラにフラれた私の気持ちを慮ることもなく続ける。
「でさ! これで告白して王妃になっても問題ないんじゃないかって思ったの!」
「いえ、私は承諾致しませんが」
「家族のタイアップ凄いけど大丈夫?」
確かに婚約破棄されたと知られたりしたらーーというか王家の人間から好意を持たれたと知ったら無理やりにでも婚約しろとか言われる!
「わ、私は納得しません!」
そもそも王子とはいえ、一位と僅差で好きなキャラクターとはいえあまりにも唐突すぎる!
「そもそもまだアッシュ様への未練タラタラ状態なんですよ私! せめてもうちょっと時間置いてくださいよ!」
「分かった。五分後にまたこれ再開するから」
「ちょっとの感覚が違いすぎる!」
アッシュ様、婚約破棄されて数時間後にこんな状況に陥って申し訳ございませんがーー。
私、今結構楽しいです。
なので、どうかお二人共幸せになってください。
「指輪どうする?」
「まだ私何も言っておりませんが!?」
言いにくそうに、しかし私の目をまっすぐと見据えながら宣言した。
一瞬だけ意味が分からずに固まってしまったが、内容が何にしろすぐに返事するのが私のモットーだ。
「……そうですか」
だが、どう返していいのかが瞬時には思い浮かばずに少し時間が空いてしまったようだ。
彼女が出来ようと、この人ーーアッシュは私の最愛の人だ。アッシュが幸せになれるのならば、それが私の隣でなくとも、誰の隣でも構わないーー。
この世界が乙女ゲームの世界だと、私は婚約破棄されてしまう運命の悪役令嬢だということに気がついたあの日からそう思っていたはずなのに……。
「……ッ」
涙が浮かんでくる。
誰の隣でも構わないと思ったのは私なのに何でだろう?
「ごめん」
罪悪感で押しつぶされそうな彼を見ていると、こちらまで悪い気持ちになってくる。
やっぱり私はアッシュを幸せに出来ないのか。
「大丈夫ですから! どうかお幸せに!」
無理やり笑顔を作って自分勝手にその場を離れた。
その場からは離れたというのに、アッシュの悲しい顔は頭から離れなかった。
「どうしたんですか?」
しばらく公園で呆然としていると、学園の王子ーーまあ国の王子でもあるのだがーーから声を掛けられた。
クラスメイトという関係で、王子と接するのは慣れていたはずなのだが、タイミングとやはり差を拭いきれない身分により内心かなり動揺してしまう。
果たして、これはどう答えるのが正解なのだろうか?
婚約破棄されました、とバカ正直に答えるのも何だか具合が悪いし、かといって嘘をつくというのも気持ちのいいものではない。
「ごめん、聞かれたくないことだった?」
「も、申し訳ございません……」
「謝る必要なんてないよ。むしろ僕の方が謝らなきゃいけないね」
ダメだ、この人イケメンすぎる!
婚約破棄された直後にこの対応……。くらっとしそうになる。
「でも、辛い事があったら何でも言ってね。僕ができることならば何でもするから」
微笑みながら言う王子。さすが学園の王子としても崇められるだけはある。
少しだけ心が癒えたことを実感しながら、帰路に着くのであった。
「おかえり」
「ただいま……じゃないですよ何やってんですか!」
何の気なしに自室のドアを開けたら先程別れたはずの王子が仁王立ちしていた。何これどんなホラー?
「ねえねえ、一個だけビックリするかもしれないこと言っていい?」
「もう既にビックリしているのでどう返答するか分かりかねるのですが」
「そうかそんなに知りたいのか」
人の話聞いてるこの人?
「実はね……三年前からずっと好きでした」
「えっ」
確かに特進クラス(クラス替えなし)で三年前対面したことはあるがーーそんなに話したことはないよね?
「君の自己紹介に惚れちゃったんだ」
私の自己紹介……って確かオタク趣味を語ったうえに噛みまくりだった黒歴史の権化みたいな存在じゃないですか!?
「君が一番好きだと言ったライトノベル、僕も一番好きなんだ」
下ネタ要素が八割のライトノベルじゃないですかヤダー……。
っていうか、そんなキテレツな理由で王子様が恋されましてもそれこそ反応に困るのですが!
「でも、君が婚約者持ちだと聞いて略奪するわけにも行かないから諦めてたんだけどーー」
その点ではアッシュよりちゃんとしてるわね。てっきりお前のものは俺のもの形式と思ったのだけれど。
「ごめんね、たまたま聞いちゃって……」
疑って悪いがそれ本当にたまたまなのだろうか。
推しキャラにフラれた私の気持ちを慮ることもなく続ける。
「でさ! これで告白して王妃になっても問題ないんじゃないかって思ったの!」
「いえ、私は承諾致しませんが」
「家族のタイアップ凄いけど大丈夫?」
確かに婚約破棄されたと知られたりしたらーーというか王家の人間から好意を持たれたと知ったら無理やりにでも婚約しろとか言われる!
「わ、私は納得しません!」
そもそも王子とはいえ、一位と僅差で好きなキャラクターとはいえあまりにも唐突すぎる!
「そもそもまだアッシュ様への未練タラタラ状態なんですよ私! せめてもうちょっと時間置いてくださいよ!」
「分かった。五分後にまたこれ再開するから」
「ちょっとの感覚が違いすぎる!」
アッシュ様、婚約破棄されて数時間後にこんな状況に陥って申し訳ございませんがーー。
私、今結構楽しいです。
なので、どうかお二人共幸せになってください。
「指輪どうする?」
「まだ私何も言っておりませんが!?」
12
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない
エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい
最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。
でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。
婚約破棄ブームに乗ってみた結果、婚約者様が本性を現しました
ラム猫
恋愛
『最新のトレンドは、婚約破棄!
フィアンセに婚約破棄を提示して、相手の反応で本心を知ってみましょう。これにより、仲が深まったと答えたカップルは大勢います!
※結果がどうなろうと、我々は責任を負いません』
……という特設ページを親友から見せられたエレアノールは、なかなか距離の縮まらない婚約者が自分のことをどう思っているのかを知るためにも、この流行に乗ってみることにした。
彼が他の女性と仲良くしているところを目撃した今、彼と婚約破棄して身を引くのが正しいのかもしれないと、そう思いながら。
しかし実際に婚約破棄を提示してみると、彼は豹変して……!?
※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも投稿しています
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
乙女ゲームに転生した悪役令嬢! 人気が無い公園で出歯亀する
ひなクラゲ
恋愛
私は気がついたら、乙女ゲームに転生していました
それも悪役令嬢に!!
ゲーム通りだとこの後、王子と婚約させられ、数年後には婚約破棄&追放が待っているわ
なんとかしないと…
婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた
夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。
そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。
婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。
死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?
六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」
前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。
ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを!
その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。
「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」
「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」
(…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?)
自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。
あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか!
絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。
それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。
「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」
氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。
冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。
「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」
その日から私の運命は激変!
「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」
皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!?
その頃、王宮では――。
「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」
「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」
などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。
悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!
最推しの幼馴染に転生できた!彼とあの子をくっつけよう!
下菊みこと
恋愛
ポンコツボンクラアホの子主人公と、彼女に人生めちゃくちゃにされたからめちゃくちゃに仕返したヤンデレ幼馴染くん(主人公の最推し)のどこまでもすれ違ってるお話。
多分エンドの後…いつかは和解できるんじゃないかな…多分…。
転生、ヤンデレ、洗脳、御都合主義なお話。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
初めまして、米カキコさせて頂きます(*´ω`*)
王子が清々しすぎて、ここまで素早いという事は、ライバルが多いのかな?(´・ω・`)と思いまして(;゜゜)
婚約破棄より、婚約解消の方が良くないですか?( ̄▽ ̄;)