婚約破棄された悪役令嬢は聖女の力を解放して自由に生きます!

白雪みなと

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婚約破棄された悪役令嬢は聖女の力を解放して自由に生きます!

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「リタ・ホーリィ。貴様は俺の彼女を苛めたそうだな。よって、婚約破棄を言い渡す」

 きたか、と思う。
 汚物を見る目を向ける元婚約者――この国、ヒストリア王国第二王子を前に、私は冷静だった。

 第二王子を公爵令嬢から略奪した男爵令嬢は私にドヤ顔を向けている。『身分なんて関係ない』という言葉を振りまいているだけはある。奴隷よりもよっぽど醜いツラだ。

 なぜ私がこんなに物事を俯瞰して見ることができているか。それはひとえに前世の記憶を思い出したからに違いない。

 ここは乙女ゲーム、『エンゲージメント・プリンセス』の世界だ。17年間ここにいた私が言うのだから少なくともそれに近しい世界ではあるはず。

 ここには魔法が存在していて、持っていれば貴族になれるという設定がある。

 ヒロインは回復魔法を所持しており、のちに聖女と呼ばれる存在になるのだが。

 悪役令嬢のリタは魔法を持っていないのに身分を振りかざし横暴な態度を取った挙句、ヒロインに嫉妬。数々の嫌がらせを決行。

 当然天罰は下るものだ。

 断罪イベントと呼ばれる婚約破棄の場面で、私、つまり悪役令嬢は婚約破棄された。ゲーム通りならば、国外追放イベントも襲ってくるだろう。

 はぁ、と思わずため息が口から零れてしまった。
 特に使えそうなスキルもない。要領も悪い。
 私はいったいどうなってしまうのだろうか。

 だけど、こうなったらせめて自由に生きてやろうではないか。
 そう、心に決めた。


   ⿴⿻⿸


 結論から言うと、普通にどうにでもなった。しかも、かなり自由な生活を送れている。

「ああ、聖女さま! お待ちしておりましたぞ!」
「リタおねーちゃん、治してくれてありがと!」
「リタさま、今度はこちらの兵を回復してください!」

 隣国に行き、路頭に迷っているところ野犬に襲われ。
 痛みが頭を支配するなか、治れ治れと念じていたらなんと本当に治ってしまった。

 つまり、私はヒロインが持っているはずの回復魔法に目覚めたのだ。

 それからは色々な人を治し、人々から聖女として崇められ。
 こんな生活も悪くはないな、と思っていたときのことだった。

「リタ・ホーリィさま。あなたを迎えに来ました」
「……はへ?」

 隣国の極東に位置する街に泊まっていたところ、母国の第一王子が私にそんなことを言ってきた。

 元第二王子の婚約者ということもあり、第一王子ともかなり会ったことがある。なのでかなりの確率でこのかたは第一王子のウィング・シードステラなのだろうけれど……。イマイチ状況が呑み込めない。

「失礼しました。僕はウィング・シードステラと申します。名乗らずこんなことを言ってしまって申し訳ない」
「い、いえ。あなたさまがそのようなことを気にする必要はございませんよ」

 前までだったらこんなオドオドとして第一王子と対峙することはなかったかもしれない。

 だが、今の私は庶民の庶民。一応リタ・ホーリィとしての記憶はあるものの、傲慢すぎて戻れそうな気がしないのだ。

「随分、お変わりになられましたね」
「それほどでも……?」

 褒めてくれているのは察したが、人によっては激怒しそうな内容だった。
 それに気がついたのか、ウィングさまは顔を赤くしながら謝罪の言葉を口にする。

 金髪と青い瞳、赤くなった顔がやけに眩しく感じた。

「あの、よろしければなのですが」

 それから、王子は恥ずかしそうに口を開き。

「僕と一緒に、本国へ、シードステラ王国へ帰りませんか?」

 史上最高のお誘いを私に持ちかけた。
 だけど、かなり疑問が残る。

「あの、私は国外追放を第二王子様に言い渡された身です。おいそれと帰るわけにはいきません」

 伝えなければ始まらないので、思ったことをそのまま口に出した。

 私の問いにウィングさまはふっと笑い、優しい声で答える。

「弟がすみません。あれから弟とその婚約者は至るところで問題を起こし、身分を剥奪されました。その結果、あなたの国外追放もなかったことにされました」

 こんなざっくりとしか言われていないのに鮮明なビジョンが浮かんだ。そうなるかもとは思っていたが。

 弟の不始末に頭を下げるウィングにその必要はないと伝える。性格平民には恐れ多すぎた……。

「そうなのですか……。でも、今さら帰ったところで私に居場所はないのでは?」

 当たり前の疑問を口に出すと、信じられないものでも聞いたかのようにウィングは固まってしまう。
 何か、失言でもしてしまったのだろうかと思っていると。

「あの……。僕、さっきプロポーズしたつもりだったのですか」
「ふぇっ!?」

 驚きのあまり変な声が出てしまう。
 ウィングさまは困惑と気恥しさが混ざった表情で、頬を掻いていた。

「分かりにくかったですよね。では改めて言います」

 そう言い、ウィングは真面目な顔をして。
 でも、口には笑顔を宿して言葉を紡いだ。

「僕と一緒に、人生を共にしていただけませんか?」

 若干低くて心地よい声が聞こえるとともに、私は差し出された右手に手を置いた。
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