14 / 555
新たな始まり
アルダンの武器屋
しおりを挟む
アルダンの入り口で自由行動になり、俺は何をしようか考えた。
三人の中の誰かに声をかけてみようと思ったらすでにいなくなっていた。
途方に暮れかけたところで御者の男が馬車の手入れをしているのが目に入った。
他に聞ける相手もいないのでどんな店が町にあるのかたずねてみる。
「アルダンにはどんな店があるんですか?」
「ロゼル自体の産業が発展している影響で、小さい町にしては色んなお店がありますよ。武器屋、古書店、カフェテリアなど。初めてなら退屈しないはずです」
「参考になりました。ありがとうございます」
俺が立ち去ろうとしたところで御者はおすすめの食堂も教えてくれた。
話を終えてからその場を後にした。
剣を買い替える予定はないが、最初に武器屋を覗いてみることにした。
町の入り口から中心部へと歩いていく。
最初は気づかなかったが、バラムよりも町が整備されている。
足元の石畳も比較的平らで歩きやすい。
俺はアルダンの家々の様子を眺めながら気の向くままに足を運んだ。
地図はないものの、そこまで広い町ではないので問題ないだろう。
少し歩いて路地裏から通りに出た。
そこまでの賑わいはないが、ちらほらと人が歩いている。
左右に目をやると雑貨店や食料品店が並んでいた。
さらに進むと道が突き当たりになり右側に道が続いていた。
ちょうど曲がり角のところで目当ての店を発見した。
軒先に錆びついた剣や防具が転がっており、武器屋だと思った。
どのような品揃えなのか好奇心が刺激される。
「いらっしゃい」
店主は物静かに見えるおじさんだった。
自ら鍛冶をするようで使い古した作業着のようなものを着ている。
店の様子に目を向ければ様々な種類の武器や防具が置かれていた。
商品の中心は剣のようで一本ずつ立てて並べられている。
それ以外は槍や盾に兜などもある。
店内を一通り見た後でショートソードが気になった。
「鞘から抜いてみても?」
「気軽に触るといい」
店主に確認すると穏やかな返事が返ってきた。
いくつか並んだ中から柄や鞘がきれいなものを手に取る。
俺の剣よりも握りの部分が手に馴染みやすい感じがした。
続いて慎重に鞘から引き抜く。
中から出てきたのは磨き抜かれた剣身だった。
おそらく、店主が丹精込めて仕上げた一振りなのだろう。
あえて聞くまでもなく値が張りそうなので、そっと鞘に収めて元の場所に戻した。
他に興味が惹かれるものはないかともう少し店内を眺めてみる。
店主に冷やかしと思われるのは心苦しいので何か買って帰ろうか。
「――っ!?」
そんなことを考えているとありえないものを見つけてしまった。
店主に悟られないように思わず声を抑えた。
それは売り物なのか判断できないような店の片隅に置かれていた。
どこからどう見ても刀にしか見えない。
――それは何であるのか。
――何の目的で作られたのか。
――どのように知ったのか。
最後に脳裏をよぎったことについて知りたかったが、それをたずねてしまえば転生前の記憶が残っていると教えるようなものだった。
自然な様子を装って店を去ろうとしたところで店主が声をかけてきた。
「お客さん、そいつが気になるかね?」
「……そいつとは?」
「ははっ、隠さなくていい。今まで気に留める人などいやしなかったから、すぐに気づいてしまったよ」
店主は穏やかな表情で椅子から立ち上がると刀らしきものを手に取った。
「どうしても頭から離れなくてね……。これは君が思っている通りのものだ」
「……もしかして記憶が」
「ずいぶん前のことだが、ある日突然のことだった。最初は自分の頭がおかしくなったのか不安になったもんだよ」
店主は手元からこちらに視線を移した。
「君もだろ?」
「はい……そうです」
抱え続けた重たい荷物を下ろすような解放感があった。
「誰かに話したことはあるのかい?」
「もちろんありません」
「それが賢明というものだね。ロゼル、ランス……周辺国全てで信仰が禁じられている。誰かに言い広められようものなら危険人物と見なされかねない」
戦乱がなく魔王のいない世界ではあるが、この点だけはシビアだった。
この世界に生まれる前の記憶について口にしたら、よからぬ意図があると勘ぐられてもおかしくはない。
「ところで君は、冒険者なのかね?」
店主は俺の姿をしげしげと眺めながら言った。
「元冒険者です。今回は探索のためにロゼルへ」
「そういうことか。ふむっ」
彼は少し考えるように腕組みをした後、こちらに刀を差し出した。
それがどういう意味なのか理解できず、すぐに言葉が出なかった。
「老いぼれが店の肥やしにするより若い者が使う方がいい。きっと、こいつも喜んでくれるだろうて」
「い、いいんですか、お代は……?」
「ううん、遠慮せんでいい」
俺はためらいながら刀を受け取った。
剣に比べて刀身が細いためずいぶん軽く感じた。
鞘からそっと引き抜くと美しい刃が露わになる。
「大事に使わせてもらいます」
「また旅の話でも聞かせておくれ」
俺は深々と頭を下げて武器屋を後にした。
三人の中の誰かに声をかけてみようと思ったらすでにいなくなっていた。
途方に暮れかけたところで御者の男が馬車の手入れをしているのが目に入った。
他に聞ける相手もいないのでどんな店が町にあるのかたずねてみる。
「アルダンにはどんな店があるんですか?」
「ロゼル自体の産業が発展している影響で、小さい町にしては色んなお店がありますよ。武器屋、古書店、カフェテリアなど。初めてなら退屈しないはずです」
「参考になりました。ありがとうございます」
俺が立ち去ろうとしたところで御者はおすすめの食堂も教えてくれた。
話を終えてからその場を後にした。
剣を買い替える予定はないが、最初に武器屋を覗いてみることにした。
町の入り口から中心部へと歩いていく。
最初は気づかなかったが、バラムよりも町が整備されている。
足元の石畳も比較的平らで歩きやすい。
俺はアルダンの家々の様子を眺めながら気の向くままに足を運んだ。
地図はないものの、そこまで広い町ではないので問題ないだろう。
少し歩いて路地裏から通りに出た。
そこまでの賑わいはないが、ちらほらと人が歩いている。
左右に目をやると雑貨店や食料品店が並んでいた。
さらに進むと道が突き当たりになり右側に道が続いていた。
ちょうど曲がり角のところで目当ての店を発見した。
軒先に錆びついた剣や防具が転がっており、武器屋だと思った。
どのような品揃えなのか好奇心が刺激される。
「いらっしゃい」
店主は物静かに見えるおじさんだった。
自ら鍛冶をするようで使い古した作業着のようなものを着ている。
店の様子に目を向ければ様々な種類の武器や防具が置かれていた。
商品の中心は剣のようで一本ずつ立てて並べられている。
それ以外は槍や盾に兜などもある。
店内を一通り見た後でショートソードが気になった。
「鞘から抜いてみても?」
「気軽に触るといい」
店主に確認すると穏やかな返事が返ってきた。
いくつか並んだ中から柄や鞘がきれいなものを手に取る。
俺の剣よりも握りの部分が手に馴染みやすい感じがした。
続いて慎重に鞘から引き抜く。
中から出てきたのは磨き抜かれた剣身だった。
おそらく、店主が丹精込めて仕上げた一振りなのだろう。
あえて聞くまでもなく値が張りそうなので、そっと鞘に収めて元の場所に戻した。
他に興味が惹かれるものはないかともう少し店内を眺めてみる。
店主に冷やかしと思われるのは心苦しいので何か買って帰ろうか。
「――っ!?」
そんなことを考えているとありえないものを見つけてしまった。
店主に悟られないように思わず声を抑えた。
それは売り物なのか判断できないような店の片隅に置かれていた。
どこからどう見ても刀にしか見えない。
――それは何であるのか。
――何の目的で作られたのか。
――どのように知ったのか。
最後に脳裏をよぎったことについて知りたかったが、それをたずねてしまえば転生前の記憶が残っていると教えるようなものだった。
自然な様子を装って店を去ろうとしたところで店主が声をかけてきた。
「お客さん、そいつが気になるかね?」
「……そいつとは?」
「ははっ、隠さなくていい。今まで気に留める人などいやしなかったから、すぐに気づいてしまったよ」
店主は穏やかな表情で椅子から立ち上がると刀らしきものを手に取った。
「どうしても頭から離れなくてね……。これは君が思っている通りのものだ」
「……もしかして記憶が」
「ずいぶん前のことだが、ある日突然のことだった。最初は自分の頭がおかしくなったのか不安になったもんだよ」
店主は手元からこちらに視線を移した。
「君もだろ?」
「はい……そうです」
抱え続けた重たい荷物を下ろすような解放感があった。
「誰かに話したことはあるのかい?」
「もちろんありません」
「それが賢明というものだね。ロゼル、ランス……周辺国全てで信仰が禁じられている。誰かに言い広められようものなら危険人物と見なされかねない」
戦乱がなく魔王のいない世界ではあるが、この点だけはシビアだった。
この世界に生まれる前の記憶について口にしたら、よからぬ意図があると勘ぐられてもおかしくはない。
「ところで君は、冒険者なのかね?」
店主は俺の姿をしげしげと眺めながら言った。
「元冒険者です。今回は探索のためにロゼルへ」
「そういうことか。ふむっ」
彼は少し考えるように腕組みをした後、こちらに刀を差し出した。
それがどういう意味なのか理解できず、すぐに言葉が出なかった。
「老いぼれが店の肥やしにするより若い者が使う方がいい。きっと、こいつも喜んでくれるだろうて」
「い、いいんですか、お代は……?」
「ううん、遠慮せんでいい」
俺はためらいながら刀を受け取った。
剣に比べて刀身が細いためずいぶん軽く感じた。
鞘からそっと引き抜くと美しい刃が露わになる。
「大事に使わせてもらいます」
「また旅の話でも聞かせておくれ」
俺は深々と頭を下げて武器屋を後にした。
271
あなたにおすすめの小説
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。
彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
【完結】テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~
にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。
「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。
主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。
35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~
月神世一
ファンタジー
紹介文
「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」
そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。
失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。
「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」
手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。
電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。
さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!?
森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、
罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、
競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。
これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。
……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる