異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家

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新たな始まり

冒険の始まり

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「――Bランクの冒険者か。そりゃ戦力になるな、ふむふむ」

 フランの話を聞き終えたハンクは興味深そうにしていた。

「ところで何か用事だったんですか?」
「おっとそうだ。この前の嬢ちゃんに町で行き合って、手紙を託されたんだった」

 ハンクは背中のバックパックから筒状に丸まった紙を差し出した。
 俺はそれを受け取り読めるように伸ばした。

「……なるほど、そういうことか」

 ギルドの遠征で人が足りず適任ということでエスカが選ばれた。
 しばらく会えないかもしれない――そんな内容だった。   
 文字は走り書きに近く、急いでいたようで行き先もなかった。
 ギルド経由なら目的地を調べられるので、その点は問題ない。
 彼女もそれなりに経験を積んでいるが、無事に戻ることを願うばかりだ。

「何か問題があったか?」
「いえ、しばらく留守にするという連絡だったみたいです」
「心配ないみたいね。それじゃあ七色ブドウの話を進めましょう」

 アデルは少し気遣うような表情を見せた後、用件を切り出した。
 俺たちはいつの間にか仲間のように一つのテーブルを中心に集まっていた。

「まずはおれから話すぞ」
「ええ、お願い」

 ハンクが話し始めるとフランは緊張した様子で耳を傾けた。
 伝説の男の言葉を金言とばかりに聞き入れようとするように見えた。

「七色ブドウは隣国ロゼルの山の中にある。幸か不幸か、キラービーがうろうろしているおかげで人が寄りつかない」
「……あの、ハンク様」
「様はいらねえ、ハンクでいいぞ」
「はい。わたくしはキラービーの討伐経験がありますわ」

 フランは遠慮がちながらも自信を感じさせる様子だった。

「こいつは心強い。何匹ぐらいだ?」
「少なく見積もっても十匹以上は……」 
「なかなかやるじゃねえか」

 ハンクは感心したように目を輝かせた。
 彼のそんな反応を引き出すほどにフランの実績は目を見張るものだった。 
 キラービーは非常に獰猛で人里に出た時はギルドが討伐対象に指定する。 
 そのことをキラービーたちが学習したようで危険度と希少性の両方が高い。
 俺が冒険者をしていた頃は一度も遭遇しなかった。

 俺はちらりとフランの方に顔を向けた。
 その細身にどれだけの力を秘めているのだろう。

「マルクは今回も行くよな」
「い、いいんですか?」
「ふふっ、行きたそうな顔をしているわ」

 アデルが冷やかすように笑った。

「おれとアデルは自分で身を守れる。お前さんはフランと組んでくれ。この娘(こ)と一緒なら何とかなるんじゃないか」
「それはあんまりですわ」

 俺は心強く思ったが、フランは不服そうだった。
 ここまでの様子からアデルと組みたいのだろう。   

「フラン以外に適任はいないと思うぞ」
「そ、そうですの?」

 偉大なるハンクの申し出にフランの心は動いているようだった。

「私からもお願い」
「お姉さまがそう仰るなら仕方ないですわ」
 
 強力な後押しを得てフランは俺と組んでくれるようだ。
 彼女に守ってもらうようなかたちでも、こればかりは仕方がない。
 今も現役だったとしてCランクとBランクでは大きな差があるのだ。

 話し合いの結果、三日後にバラムを出発することを決めて解散した。
 今回は馬車移動になり、料金はフランの奢りになった。
 最初はアデルが払うと申し出たのだが、フランが支払いを懇願した流れだった。
 どうにかしてアデルに恩を着せたかったのかもしれない。


 出発当日。空は澄み渡るほどに青く、絶好の冒険日和だった。
 店の売り上げは好調だったが、今回のために三日間の臨時休業にした。

 朝早く目が覚めてしまい、一番乗りで馬車乗り場に到着した。
 特にやることもなかったので、馬の世話係と雑談をしながら待った。

 そのうちにフラン、アデル、ハンクの順番で顔を出した。
 やがて出発の時間になり四人で馬車に乗った。
 今回の馬車は幌がついた立派な作りだった。
 
「馬車に乗るなんて久しぶりだぜ」
「なかなか乗れる機会がないので、楽しみですね」

 俺とハンクは向かい合うかたちで腰を下ろした。
 今回は相乗りではなくいわゆるチャーター便なので、庶民には手の届かない金額がかかっている。
 それを余裕で支払えるアデルやフランの財力に底知れぬものを感じた。
 
 御者台の向こうを眺めると歩くよりも数割増しの速さで景色が流れていく。
 徒歩ではロゼルに入るまで丸一日かかるが、馬車なら夕方より前には到着する。
 七色ブドウは山中にあるらしいので、体力を節約できて幸いだった。

 馬車は順調に進み途中で休憩を挟みながら移動を続けた。
 アデルとハンクは話しかけてくれたものの、フランは少し愛想が悪かった。
 二人で戦うのであれば前途多難だが、まずは冒険を楽しみたいところだ。

 目的地に到着すると御者の男が道が空いていて早く着いたと教えてくれた。
 それを聞いてから下車してみると夕方には少し早い明るさだった。
 現在地はロゼルの町、アルダンらしい。
 ワーズほど田舎ではないものの有名なところではなく、手持ちの情報は少なかった。
 一方で俺以外の三人は多少土地勘があるらしい。

「今から出向くと途中で日が暮れそうだな。ブドウ探しは明日にするぞ」

 全員が馬車から降りたところでハンクが言った。

「賛成ですわ。夜闇でキラービーと戦うのは不利ですもの」

 落ち着いたフランの言葉には妙に説得力があった。

「ひとまずここで解散。明日の朝に出発な」

 話についていけずにいると宿屋は一軒だけだとハンクが補足してくれた。
 それを聞いて待ち合わせるまでもないことを理解した。
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