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新たな始まり
脅威の正体
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「分かった。手伝ってやる」
意外にもエスカという名前が出たことが決め手になったようだ。
ハンクが承諾したのは歓迎すべきことだが、ある疑問が浮かんでいた。
「何人も駆り出されているのにゴブリン相手に苦戦するというのは……。現地で何が起きたんですか?」
「それが十分に把握できておらんのだよ」
ギルド長の顔に戸惑いの色が浮かんでいた。
「大規模なコロニーが見つかったわけでもねえだろ?」
だったらもっと騒ぎになってるとハンクは続けた。
「そこまで数が多いわけでもないようなのだ」
「そういうことか。粗方の察しはついた」
「今回の件について何か分かるんですか?」
ハンクは俺の言葉にうなずいて何かを考えるように押し黙った。
「あんたらの方でも異変に気づいてるだろうが、シルバーゴブリンだな」
「あの話は本当だったというのか」
ギルド長はハンクの意見に思い当たる節があるように見える。
続けて絞り出すように言葉を吐いた。
「未確認情報ではあるが、見たことのないゴブリンがいると」
「白っぽい色でゴブリンにしてはやけに賢い――だろ」
「まさにその通りだ」
俺は二人の話についていけなかった。
緑色以外の知恵のあるゴブリンなど見たことも聞いたこともない。
「初めての討伐なら倒せるとは思わない方がいいぞ」
「そこまでの脅威なのか……」
「嬢ちゃんが心配だし準備を始める。お前はどうする?」
ハンクはきわめて真剣だった。
この状況でエスカのことを任せきりにするわけにはいかないだろう。
臨時休業は伸びてしまうが、この状況を静観することなどできない。
「俺も行きます」
「私は行かないわよ。冒険者ではないもの」
一人静観していたアデルが口を開いた。
「そりゃそうだな。ワインの準備を頼めるか」
「もちろんそのつもりよ」
共に行動したことで忘れそうになっていたが、本人が言ったようにアデルは冒険者ではない。
彼女が冷たいというわけではなく、ハンクへの信頼もあるようにも見えた。
「バラムのギルド長、少し時間をくれ。やりかけのことがある」
「承諾と受け取っても?」
「おうよ。そのつもりだ」
「それはありがたい。心より感謝する」
ギルド長の言葉を適当に聞き流して、ハンクは俺とアデルに手招きした。
「あのおっさんに七色ブドウを見せるのは微妙だ。店の中を借りるぞ」
ハンクはアデルにテキパキと工程を説明した。
七色ブドウのワインは色別に実を分けた後、細かい茎や不純物を取り除く。
次に粉砕作業を行って樽の中で発酵させる。
今回は道具の用意がなく粉砕の手前までということだった。
「気をつけて。ハンクが一緒なら大丈夫だろうけれど」
「ありがとうございます」
「ちょっくら行ってくる。ワインの世話は頼んだ」
「もちろんよ。任せて」
俺とハンクはアデルに別れを告げて店を出た。
「待たせたな。それじゃあ早速といきたいところだが、先に市場だな」
「遠征中の食料ですか?」
「それもあるが、今から二人で行くぞ。遠征先はどの辺りだ?」
ハンクがたずねるとギルド長は背筋を伸ばして応じた。
「野営地はシャルト平原奥のトロンの森近くにある」
ハンクは地名を聞いてもピンと来ていないように見えた。
「そこならけっこう遠くです」
「移動の馬はこちらで用意しておく。ハンク殿の案内を頼む」
「了解です!」
ギルド長はハンクに一礼すると足早に立ち去った。
俺とハンクはすぐに市場に向かった。
ハンクは市場に着いたところで話を始めた。
「シルバーゴブリンと戦うのは厄介だ。確実に長期戦になる」
「そんなに危険なんですか?」
「人間とそう変わらない知性があって、森を拠点にしたゲリラ戦にめっぽう強い」
「それは……」
最強の名にふさわしい冒険者にそこまで言わしめるのか。
「不安にさせちまったな。戦いにくい相手なら戦わなければいい」
「というと……?」
「あいつらは酒と美味いものが好きでな。それを手土産に交渉する」
「そんなまさか!? 人間臭い話し合いが通じるなんて」
「被害を最小限に食い止めて最短で決着をつける方法だ」
ハンクの言葉に迷いはなかった。
自然に捉えるなら真実を口にしているように思われた。
俺たちは市場を歩きながら自分たちの分と手土産にする食料を揃えた。
料理を振る舞うことはないかもしれないが、少しの調味料も追加した。
最後に酒屋で穀物の蒸留酒を仕入れて買い出しは完了だ。
市場を後にしてハンクをギルドの馬に乗る場所へ案内した。
俺たちが到着すると専用の馬が用意されていた。
「ギルド長から話は伺いました。こちらの二頭がそうです」
ギルドの職員が馬の方を向いて言った。
立派な身体つきの栗毛と黒鹿毛の馬が一頭ずつ待機している。
「おれは黒い方だな」
「それじゃあもう片方で」
馬にこだわりはないが、久しぶりの乗馬に緊張していた。
ハンクを見ればあぶみに足を乗せて軽々とまたがっていた。
俺も同じように足をかけて馬の背中に上がる。
視点が高いことで遠くまで見通せるような視界だった。
すでに固定する紐は外されていて自由に馬を動かせられる。
ハンクが先を行きその後に続くように馬を歩かせた。
「どうかご無事で」
ギルドの職員は真摯な態度で俺たちを見送った。
二人で街道に出てシャルト平原へと馬を走らせた。
意外にもエスカという名前が出たことが決め手になったようだ。
ハンクが承諾したのは歓迎すべきことだが、ある疑問が浮かんでいた。
「何人も駆り出されているのにゴブリン相手に苦戦するというのは……。現地で何が起きたんですか?」
「それが十分に把握できておらんのだよ」
ギルド長の顔に戸惑いの色が浮かんでいた。
「大規模なコロニーが見つかったわけでもねえだろ?」
だったらもっと騒ぎになってるとハンクは続けた。
「そこまで数が多いわけでもないようなのだ」
「そういうことか。粗方の察しはついた」
「今回の件について何か分かるんですか?」
ハンクは俺の言葉にうなずいて何かを考えるように押し黙った。
「あんたらの方でも異変に気づいてるだろうが、シルバーゴブリンだな」
「あの話は本当だったというのか」
ギルド長はハンクの意見に思い当たる節があるように見える。
続けて絞り出すように言葉を吐いた。
「未確認情報ではあるが、見たことのないゴブリンがいると」
「白っぽい色でゴブリンにしてはやけに賢い――だろ」
「まさにその通りだ」
俺は二人の話についていけなかった。
緑色以外の知恵のあるゴブリンなど見たことも聞いたこともない。
「初めての討伐なら倒せるとは思わない方がいいぞ」
「そこまでの脅威なのか……」
「嬢ちゃんが心配だし準備を始める。お前はどうする?」
ハンクはきわめて真剣だった。
この状況でエスカのことを任せきりにするわけにはいかないだろう。
臨時休業は伸びてしまうが、この状況を静観することなどできない。
「俺も行きます」
「私は行かないわよ。冒険者ではないもの」
一人静観していたアデルが口を開いた。
「そりゃそうだな。ワインの準備を頼めるか」
「もちろんそのつもりよ」
共に行動したことで忘れそうになっていたが、本人が言ったようにアデルは冒険者ではない。
彼女が冷たいというわけではなく、ハンクへの信頼もあるようにも見えた。
「バラムのギルド長、少し時間をくれ。やりかけのことがある」
「承諾と受け取っても?」
「おうよ。そのつもりだ」
「それはありがたい。心より感謝する」
ギルド長の言葉を適当に聞き流して、ハンクは俺とアデルに手招きした。
「あのおっさんに七色ブドウを見せるのは微妙だ。店の中を借りるぞ」
ハンクはアデルにテキパキと工程を説明した。
七色ブドウのワインは色別に実を分けた後、細かい茎や不純物を取り除く。
次に粉砕作業を行って樽の中で発酵させる。
今回は道具の用意がなく粉砕の手前までということだった。
「気をつけて。ハンクが一緒なら大丈夫だろうけれど」
「ありがとうございます」
「ちょっくら行ってくる。ワインの世話は頼んだ」
「もちろんよ。任せて」
俺とハンクはアデルに別れを告げて店を出た。
「待たせたな。それじゃあ早速といきたいところだが、先に市場だな」
「遠征中の食料ですか?」
「それもあるが、今から二人で行くぞ。遠征先はどの辺りだ?」
ハンクがたずねるとギルド長は背筋を伸ばして応じた。
「野営地はシャルト平原奥のトロンの森近くにある」
ハンクは地名を聞いてもピンと来ていないように見えた。
「そこならけっこう遠くです」
「移動の馬はこちらで用意しておく。ハンク殿の案内を頼む」
「了解です!」
ギルド長はハンクに一礼すると足早に立ち去った。
俺とハンクはすぐに市場に向かった。
ハンクは市場に着いたところで話を始めた。
「シルバーゴブリンと戦うのは厄介だ。確実に長期戦になる」
「そんなに危険なんですか?」
「人間とそう変わらない知性があって、森を拠点にしたゲリラ戦にめっぽう強い」
「それは……」
最強の名にふさわしい冒険者にそこまで言わしめるのか。
「不安にさせちまったな。戦いにくい相手なら戦わなければいい」
「というと……?」
「あいつらは酒と美味いものが好きでな。それを手土産に交渉する」
「そんなまさか!? 人間臭い話し合いが通じるなんて」
「被害を最小限に食い止めて最短で決着をつける方法だ」
ハンクの言葉に迷いはなかった。
自然に捉えるなら真実を口にしているように思われた。
俺たちは市場を歩きながら自分たちの分と手土産にする食料を揃えた。
料理を振る舞うことはないかもしれないが、少しの調味料も追加した。
最後に酒屋で穀物の蒸留酒を仕入れて買い出しは完了だ。
市場を後にしてハンクをギルドの馬に乗る場所へ案内した。
俺たちが到着すると専用の馬が用意されていた。
「ギルド長から話は伺いました。こちらの二頭がそうです」
ギルドの職員が馬の方を向いて言った。
立派な身体つきの栗毛と黒鹿毛の馬が一頭ずつ待機している。
「おれは黒い方だな」
「それじゃあもう片方で」
馬にこだわりはないが、久しぶりの乗馬に緊張していた。
ハンクを見ればあぶみに足を乗せて軽々とまたがっていた。
俺も同じように足をかけて馬の背中に上がる。
視点が高いことで遠くまで見通せるような視界だった。
すでに固定する紐は外されていて自由に馬を動かせられる。
ハンクが先を行きその後に続くように馬を歩かせた。
「どうかご無事で」
ギルドの職員は真摯な態度で俺たちを見送った。
二人で街道に出てシャルト平原へと馬を走らせた。
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