異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家

文字の大きさ
68 / 561
王都出立編

王都に到着

 乗り場近くの待機所で待つうちに乗船の時間が近づいてきた。
 やがて乗客に向けた呼びかけがあった後、王都近くの港へ向かう便に乗船した。
 定期船が出航すると波は穏やかで、船酔いのことを心配せずに済んだ。
 コルヌとレアレス島を結ぶ航路よりも距離は短く、予想よりもすんなりと港に到着した。 

 今度の港はレアレス島の時とは異なり、活気あふれるような感じではなかった。
 漁港として使われている様子はなく、交通の便として使われているだけのようだ。
 簡素な構造で必要最低限の役割といったところか。
 
「ここから王都までは近いんですか?」

 船を下りた後、桟橋を歩きながらブルームに話しかけた。

「わしもこのルートで向かうのは初めてだが、目と鼻の先のはずだぞ」
「だいぶ近いんですね」

 王都が間近に迫っているようだ。
 移動時間が延びており、いよいよという感慨を抱いた。

 俺たちは定期船を降りた港を離れて、幅の広い街道に移動した。
 バラムのような辺境よりも発展していて通行人の量も多く、ランス王国の中心が近いことを実感させた。

「遠方からでは人の多さに驚くでしょう。私も初めはそうでした」
「リリアも王都以外の出身でしたね」 

 そういえばと道中の会話を思い返す。

「ええ。市街地に入るとまた驚かされると思います」

 王都への道を踏みしめつつ、リリアと並んで街道を歩き始めた。
  
「リリアは剣技をどこで覚えたんですか?」
「故郷に剣の師匠がいて、その方から習いました」
「それはいいなあ。俺はほとんど自己流だから、教えてもらえるなんてうらやましい」

 俺の言葉に、リリアは複雑な表情を浮かべた。
 すぐにそのことが意味するところを理解できなかった。

「剣を握るようになったのは小さな理由でしたが、師の教えは厳しかったです。おかげで少しは強くなれた気はしますが」
「そりゃ、楽に強くなれるわけないか。修業が大変だったんですね」
「辛いことも多かったです」

 リリアは何かを懐かしむように、遠くを見るような目をしていた。
 その横顔は可憐で透き通るような趣があり、彼女の美しさが垣間見えた気がした。
 
「それがどうして、ブルームの護衛に?」
「王都を訪れた時に紹介されて、ブルーム様専属ではなく、城の警護と護衛を任せて頂くようになりました」
「つまり城の警護をしたり、他の人を護衛したりするんですね」
「その通りです」
 
 リリアは彼女自身の役割に誇りを持っているようで、凛々しい表情を見せた。
 要人の護衛は誰にでもできるわけではなく、彼女は立派だと思った。 

「王都は目前だが、初めて訪れるマルクに見せたいものがある」
「見せたいもの? どんなものですか?」
「こっちについてきてくれ。何を見るかはそれまでのお楽しみだ」
「いいですね。一体、何があるんだろう」

 少し前を歩いていたブルームがどこかへ案内を始めた。
 街道から脇に伸びた道を先導するように進んでいく。
 ブルームについて歩いていくと、しばらく上り坂が続いた。
 やがて平坦な道になったところで、この場所が丘の上なのだと気づいた。

「――おおっ、これはすごい」
「王都の城と市街地が全て見渡せる場所だ」

 眼下の少し先には大きな街が広がり、さらにその奥には立派な城が見える。
 日本ならばいざ知らず。この世界では初めて見る規模の都市だった。
 誰もが口を揃えて、この国一番と言うのが納得できる。

「これを見せたかったんですね」
「街の地図を貸すこともできるが、全体像を目で見ておいた方がいいと思ってな」
「ありがとうございます。いい景色です」

 俺は王都周辺の壮大な景色に胸を打たれた。
 しばらくその余韻に浸った後、ブルームに声をかけた。

「存分に堪能しました。王都に向かいましょう」
「ふむ、そろそろ出発するか」

 三人で丘の上を離れて、王都に向かって歩き出した。
 街道に戻って道なりに移動を続けると、王都を囲む城壁が近づいてきた。
 俺の記憶が正しければ、大昔に戦乱が続いた時代に築かれたものだと思う。
 今の時代に他国からの侵攻を警戒することはないので、高い壁で城を守る必要はないはずだ。

「ついに王都に着きますね」
「出入り口に衛兵はいるが、気にせず通ればいい」
「分かりました。検問とかもないんですか?」
「明らかに不審な人物であるか、あるいは大量の武器でも持ちこもうとしない限りは止められないだろうな」
「出入りが楽なのはいいですね」

 話しながら進むうちに王都の門が目の前に見えてきた。
 鎧を着こんだ衛兵が二人いて、門番のように立っている。
 彼らは周囲に目を配っており、何かあれば対応できるようにしているようだ。
 ブルームは普段と変わらない調子で進んでいった。

「わしだ。戻ったぞ」
「「おかえりなさいませ、ブルーム様」」

 二人の衛兵は丁寧に頭を下げた。

「留守中に変わったことはあったか?」
「いえ、特にございません」
「それはよかった」

 衛兵たちの前を離れて、前方に見える市街地の方へと進む。
 門を越えて城壁を通過すると、目の前の視界が開けた。

「これはすごい! 人通りも多いし、色んな建物がある」

 城壁の内側はまさに都市という雰囲気だった。
 こちらが気後れしてしまいそうなほど、見事に発展している。
 通りを歩く人の数は多く、様々な種類の店が軒を連ねていた。

「まずは大臣へ挨拶に行こう。城まで案内する」
「分かりました」

 ブルームは先を歩き始めた。どうやら城に連れていってくれるようだ。
 彼に遅れないように歩き出すが、周りの光景に意識が向いてしまう。
 俺はバラムで生まれ育ったので、「世界の中心」はあの町だった。
 そんなバラムよりもはるかに栄えている場所はとても刺激的に感じられた。
感想 30

あなたにおすすめの小説

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

転生三男のまったり開発記 ~魔法がなくても、前世の知識とガラクタいじりで世界を便利に変えていきます~

戯言の遊び
ファンタジー
【前世のオタク知識で、不便な異世界をちょっと便利に大改造!】 前世は「何でも屋」の息子で、機械の解体と研究をこよなく愛する技術オタク。 そんな俺が転生したのは、魔法が存在するものの非常に不便な中世レベルのファンタジー世界だった。 しかも、辺境を治める貧乏男爵家の三男坊という、家督の重圧もない完全なる「自由枠」 豊かな自然という名の素材の宝庫を前に、俺の技術オタクとしての血が騒がないわけがない! 風で飛んでいく洗濯物と手荒れに悩むメイドのため、ただの木切れを削って作った『洗濯バサミ』 それが屋敷中で大絶賛されたのを皮切りに、気難しい凄腕の鍛冶職人や、利益の匂いに敏い若き女商人を巻き込んで、俺の「ちょっと便利なモノづくり」はどんどんエスカレートしていくことに!? 大げさな魔法もチートもない。 けれど、前世の知識と底なしの探究心で、不便な世界をまったりと便利に成り上がっていく、三男坊の領地開発記!

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化! 転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

オレの異世界に対する常識は、異世界の非常識らしい

広原琉璃
ファンタジー
「あの……ここって、異世界ですか?」 「え?」 「は?」 「いせかい……?」 異世界に行ったら、帰るまでが異世界転移です。 ある日、突然異世界へ転移させられてしまった、嵯峨崎 博人(さがさき ひろと)。 そこで出会ったのは、神でも王様でも魔王でもなく、一般通過な冒険者ご一行!? 異世界ファンタジーの "あるある" が通じない冒険譚。 時に笑って、時に喧嘩して、時に強敵(魔族)と戦いながら、仲間たちとの友情と成長の物語。 目的地は、すべての情報が集う場所『聖王都 エルフェル・ブルグ』 半年後までに主人公・ヒロトは、元の世界に戻る事が出来るのか。 そして、『顔の無い魔族』に狙われた彼らの運命は。 伝えたいのは、まだ出会わぬ誰かで、未来の自分。 信頼とは何か、言葉を交わすとは何か、これはそんなお話。 少しづつ積み重ねながら成長していく彼らの物語を、どうぞ最後までお楽しみください。 ==== ※お気に入り、感想がありましたら励みになります ※近況ボードに「ヒロトとミニドラゴン」編を連載中です。 ※ラスボスは最終的にざまぁ状態になります ※恋愛(馴れ初めレベル)は、外伝5となります

52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった

よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】 皆様の熱い応援、本当にありがとうございます! ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です! 【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】 電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。 気がついたら異世界召喚。 だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。 52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。 結論――王都の地下下水道に「廃棄」。 玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。 血管年齢は実年齢マイナス20歳。 そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。 だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。 下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。 捨てられた魔道具。 長年魔素を吸い続けた高純度魔石。 そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。 チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。 あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。 汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。 スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。 この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。 魔力は毒である。代謝こそが命である。 軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。 でも、だからこそ――まず1話、読んでください。 【最新情報&著者プロフィール】 代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作! ◆ 2月に待望の【第2巻】刊行! ◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中! ◆ 【コミカライズ企画進行中】! すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!