異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家

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王都出立編

工房を探して

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 俺はドライデーツを購入してから、青果店が並ぶところへ引き返した。
 その途中で忘れないように、精肉店に行って牛もも肉の塊の配達を頼んだ。
 後で切り分けやすいように、小さいブロックにしてもらうように注文した。

 青果店のある辺りへ到着すると、野菜についた土の匂いや果物の甘い香りを感じた。
 タレの甘みはデーツで調整する予定なので、果物の出番はなさそうだった。
 あとは焼き野菜のための野菜を仕入れたら、市場での用事は完了するはずだ。

 ここまでと同じように一軒一軒の店を眺めながら、各店の品揃えを確かめる。
 最初に市場に来た時に簡単に見ただけだが、やはり種類が豊富だった。
 どれも新鮮で仕入れが目的でなければ、じっくり時間をかけて自分が食べるものを選びたくなるような魅力があった。

 バラムでは日によってネギが売っていたり、売っていなかったりするわけだが、この市場では何軒かの青果店で並んでいる。
 おそらく、王都周辺では収穫される量が多いのだろう。
 焼き野菜は焼きネギを中心に、無難なニンジン辺りにするとしよう。

 俺は一通り見比べた後、ネギとニンジンを何本か購入して、城へ配達してもらうようにお願いした。
 ついでに支払いも城への請求にしておいた。
 もう少し歩く予定なので、できるだけ荷物は軽くしておきたい。

 市場での仕入れが終わり、今度は鉄板と焼き台を制作してもらうために工房を探すことにした。
 人通りがまばらなところで、再び地図を開く。
 工房があるのは職人街と書かれた一帯のようで、そこまで移動することにした。
 
 街の中をしばらく歩くと、煙突の突き出た建物や軒先に湯気や煙のようなものが漂う場所に来た。
 鍛冶や木工の職人など色んな工房が集まっている場所のようだ。

 どこに頼めばよいのかブルームに聞いておけばよかったが、わざわざ城まで戻るのは手間だと感じた。
 店の様子を確かめながら、信頼できそうな店に制作を依頼するとしよう。

 歩き出したところで、歴史を感じる街並みが先まで続いていた。
 おそらく、昔から職人たちが活動してきた場所なのだろう。

 通りがかりに一軒の鍛冶屋の中を覗いてみると、鍛冶を行う職人の姿が目に入った。
 建物の奥には炎が見える炉があり、職人は金づちで熱された金属をカンカンと打っていた。
 形状的に剣や槍などの武器以外のものに見える。

 鍛冶屋の様子をしっかりと見たことはなく、興味深く眺めていた。
 少ししてこちらの気配に気づいた職人が近づいてきた。

「どうした、何か用か?」

「ほしい道具があって、いいところがないか探してるんです」

「そうか、どんな道具だ? よかったら聞かせてくれ。おれはジャン。うちは王都で代々続いてる鍛冶屋だ」

「俺はマルクです。肉を鉄板で焼く料理を作っていて、その鉄板と下で支える台が必要で――」

 ジャンは三十代ぐらいの屈強な男だった。
 見た目のわりに聞き上手でこちらの話に耳を傾けている。

「お前さんの説明からして、誰かが同じものを作ったことがあるんだろう。鉄板はだいたいの厚さと寸法。その台っていうのは作りが分かればいけるはずだ」

「そうですね、ありがとうございます」

 俺は感謝を伝えた後、納品と請求を城宛てにしてもらうように頼んだ。

「上手くいけば明日の朝には完成したものを納める。万が一、出来がいまいちだった時は伝えてくれ。新しいものを作り直す」

「分かりました。鉄板と焼き台の説明を書いておくので、メモできるものはありますか」

「ああっ、待ってな」

 俺はジャンから書くための道具を受け取ると、紙に記して手渡した。

「ふんふん、なるほど。鉄板は問題なさそうだ。焼き台の方もそこまで複雑な構造ではないな」

「作ってもらえそうで安心です」

「ははっ、安心して任せてくれ」

「それじゃあ、お願いします」

 俺はジャンの鍛冶屋を後にした。

 これで仕入れの材料と鉄板と焼き台の全てが準備できた。
 王都の街を散策してみるのも面白そうだが、食材を吟味するのに疲れたので、城に戻るとしよう。
 地図で帰りのルートを確かめてから、城へと引き返した。
 
 思ったよりも仕入れに時間がかかったようで、城に着いてから日が傾いていることに気づいた。
 大きなランス城の向こうに夕日が浮かんでいた。

 俺は城門に近づいたところで、衛兵に声をかけた。

「すみません。ブルームさんのいるところへ案内してもらえますか」

「ブルーム様のお客人ですね。私はここを離れられないので、城内の別の兵に頼んでください」

 衛兵はそう言うと、きれいなお辞儀を見せた。

「分かりました。それじゃあ、中に入らせてもらいます」

「はい、どうぞ」

 俺は衛兵に会釈をして、城門を通過した。
 城の敷地に入ったところで、ブルームに会えなくても、大臣の間に行けばいいことに気づいた。
 ブルームに会えたら話は早そうだが、直接大臣に進捗を報告してもいいだろう。

 城門から城内の庭に入ったところで、見回りをしている兵士がいた。
 ひとまず、彼に頼んでみよう

「すみません。ブルームさんのところに案内してもらえますか」

「承知しました。ブルーム様は執務中と思われますので、この時間にいらっしゃいそうな場所へお連れします」

「ありがとうございます。城内は広いので、どこに行けば見当もつかなくて」

「ランス城に初めて来る方は必ずそうおっしゃいます。城内で働くことが決まった時、最初に覚えるのは地図と入ってよい場所、入ってはいけない場所ですから」

「さすがにそのへんはきっちりしてるんですね」

「はい、そうです。王様と王妃様、王子様がおられる辺りは限られた者しか立ち入ることを許されておりません」

 兵士は淡々と話しているが、何気に重要なルールだと思った。
 言うまでもなく、俺も王族エリアには立ち入れないということだ。
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