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魔道具とエスカ
エスカとの帰り道
この場にいる皆が楽しそうにしていて、俺が戻ったことを歓迎してくれるようでうれしかった。
アデルとハンクは酔った素振りを見せず、エステルはあまり酒が強くないようでワインを少しだけしか飲まなかった。
そんな中、エスカが珍しく酔っているようだった。
振り返れば、ワインを口にするペースが速かった気がする。
「今日はジェイクもいるので、まだいてもらって大丈夫ですけど、エスカが飲みすぎたみたいなので家まで送ります」
「おっ、そうか」
「マルクさん、すいませーん」
「気にしなくていいよ。そろそろ帰ろうと思ったところだから」
俺はジェイクに声をかけるために、席を離れて店の中に入った。
彼は厨房で洗い物をしているところだった。
「色々と任せっきりですいません」
「いや、こうしているといい気晴らしになる。城の調理場にいた頃はこの店よりも忙しかったからな」
店の営業時間は昼から数時間、下調理もそこまで時間がかかることはない。
そう考えれば、こちらの方が負担が少ないということなのだろう。
「また明日に店に来ますけど、諸々の準備はお願いしても大丈夫ですか?」
「オレは問題ない。急に入れ替わると不具合が起きる可能性もあるだろうから、徐々に元の体制に戻せばいいと思うが……どうだろうか?」
ジェイクは店の回し方が不慣れなこともあり、珍しく確信がないようだった。
「それでいいと思います。ジェイクの味を楽しみにしているお客もいるはずなので、少しずつ移行しましょう」
「了解した。その方が安心できる」
「それじゃあ、お疲れ様」
「ああっ、気をつけて帰ってくれ」
ジェイクは穏やかな表情で見送ると、手元に視線を戻した。
俺は店の中から外に出て、エスカに声をかけた。
「さあ、帰ろう。エスカの家が分かるのは俺だけだから、家まで送るよ」
「はーい」
「それじゃあ、帰りますね」
「おう、またな」
「また会いましょう」
「彼女にヘンなことしちゃダメだからね」
エステルのいたずらっぽい言葉に苦笑いしながら、俺はエスカと二人で店を後にした。
夜も遅い時間のため、通りを歩く人はいなかった。
魔力灯が石畳の路地を照らしている。
傍らを歩くエスカは千鳥足ということはないが、普段の冒険者然とした足の運びと比べれば頼りない歩みだった。
「それにしても、だいぶ飲んだな」
「七色ブドウのワインが美味しくて。それに……」
「それに?」
「マルクさんが戻ってきたのがうれしくて、飲みすぎちゃいました」
「それはありがとう」
エスカとは冒険者時代からの付き合いということもあり、それなりに親しい間柄ではあると思った。
彼女と恋愛関係になることで今まで築いた関係がなくなる不安があるため、必要以上に距離を縮めないようにしていたところはある。
「あのー、一つお願いしてもいいですか?」
「うん、何かな?」
「酔いが回ってしまったので、マルクさんの家で休ませてください」
「ああっ、俺の家の方が近いよな」
王都に行っている間にしばらく留守にしていたが、人を呼べる程度には片づいている。
エスカから受けた親切を考えれば、それぐらいのことには応じなければいけない気がした。
「うん、分かった」
「ありがとうございます」
それからほどなくして、俺の家に到着した。
この家は町中の建物が立ち並ぶ一角にある。
二階建ての一軒家で玄関は各階にあり、二階の方を借りている。
一旦、荷物を床に下ろしてから、部屋の鍵を取り出して入室した。
魔力灯の電源に魔力をこめると、室内が少しずつ明るくなる。
「近くを通ったことはあっても、中に入るのは初めてです」
「とりあえず、ソファーで休んでおいて。飲みものが何もないから、近くの湧き水を汲んでくる」
「はーい」
エスカはのんびりした返事をすると、部屋の中に入っていった。
俺はキッチンの水差しを手に取り、そそくさと外に出た。
一人で通りを歩くと静寂に包まれていた。
何となく心細い気持ちになりながら、足早に水汲みに向かった。
俺は目的地に到着すると流れ出る冷たい水を水差しに入れた。
エスカを長い時間一人にするわけにもいかず、すぐに来た道を引き返した。
小走りで部屋に戻ると、少し息が上がっていた。
再びキッチンに行ってカップを手に取ると、汲んだばかりの水を注いだ。
俺は水差しを置いてカップを手にした状態でソファーのある部屋に向かった。
「エスカ、水を入れたから飲んだらどう?」
ソファーに目を向けると寝ているはずのエスカが見当たらない。
もしかしたら、トイレに入っているのかもしれない。
俺は近くのテーブルにカップを置いて、椅子に腰かけた。
「……うわっ!?」
エスカはソファーに寝ていないだけで、俺の死角に立っていた。
というか、何か服を脱いでいないか。
「マルクさん、ワタシは……」
彼女は何かを言いかけた。
酔っている影響もあると思うが、どこか普段の様子と違う気がした。
「ど、どうしたんだ。とりあえず、服を着た方が……」
エスカは上下の衣服を脱いでおり、下着姿になっていた。
付き合いが長いこともあり、彼女らしくない行動だと感じられた。
白い肌と豊かな胸に目を奪われそうだが、違和感が拭えないことで理性を保っている。
「ワタシと愛し合いましょう」
「んっ?」
エスカはそんなことを言わない。もっと奥手な性格のはずだ。
不自然な言動のおかげで思考が澄み渡り、冷静になることができた。
彼女の首元のネックレスが妙に存在感があると気づいた。
「……マルクさん」
「――壊れたらごめんよ」
俺はエスカの間合いに入って、ネックレスの宝石部分に手を触れた。
その直後に電流のようなものが流れてきた。
指先にしびれるような痛みが走り、反射的に魔力を押し返した。
――ピシッと宝石に亀裂が入った。
「……あっ、うーん」
宝石が輝きを失った後、エスカはその場に崩れ落ち、そのまま眠ってしまった。
「寝ているだけにも見えるけど、念のためにアデルに確認してもらおう」
俺はエスカをソファーに横たえて布団をかけた後、店に戻ってアデルを呼ぶことにした。
アデルとハンクは酔った素振りを見せず、エステルはあまり酒が強くないようでワインを少しだけしか飲まなかった。
そんな中、エスカが珍しく酔っているようだった。
振り返れば、ワインを口にするペースが速かった気がする。
「今日はジェイクもいるので、まだいてもらって大丈夫ですけど、エスカが飲みすぎたみたいなので家まで送ります」
「おっ、そうか」
「マルクさん、すいませーん」
「気にしなくていいよ。そろそろ帰ろうと思ったところだから」
俺はジェイクに声をかけるために、席を離れて店の中に入った。
彼は厨房で洗い物をしているところだった。
「色々と任せっきりですいません」
「いや、こうしているといい気晴らしになる。城の調理場にいた頃はこの店よりも忙しかったからな」
店の営業時間は昼から数時間、下調理もそこまで時間がかかることはない。
そう考えれば、こちらの方が負担が少ないということなのだろう。
「また明日に店に来ますけど、諸々の準備はお願いしても大丈夫ですか?」
「オレは問題ない。急に入れ替わると不具合が起きる可能性もあるだろうから、徐々に元の体制に戻せばいいと思うが……どうだろうか?」
ジェイクは店の回し方が不慣れなこともあり、珍しく確信がないようだった。
「それでいいと思います。ジェイクの味を楽しみにしているお客もいるはずなので、少しずつ移行しましょう」
「了解した。その方が安心できる」
「それじゃあ、お疲れ様」
「ああっ、気をつけて帰ってくれ」
ジェイクは穏やかな表情で見送ると、手元に視線を戻した。
俺は店の中から外に出て、エスカに声をかけた。
「さあ、帰ろう。エスカの家が分かるのは俺だけだから、家まで送るよ」
「はーい」
「それじゃあ、帰りますね」
「おう、またな」
「また会いましょう」
「彼女にヘンなことしちゃダメだからね」
エステルのいたずらっぽい言葉に苦笑いしながら、俺はエスカと二人で店を後にした。
夜も遅い時間のため、通りを歩く人はいなかった。
魔力灯が石畳の路地を照らしている。
傍らを歩くエスカは千鳥足ということはないが、普段の冒険者然とした足の運びと比べれば頼りない歩みだった。
「それにしても、だいぶ飲んだな」
「七色ブドウのワインが美味しくて。それに……」
「それに?」
「マルクさんが戻ってきたのがうれしくて、飲みすぎちゃいました」
「それはありがとう」
エスカとは冒険者時代からの付き合いということもあり、それなりに親しい間柄ではあると思った。
彼女と恋愛関係になることで今まで築いた関係がなくなる不安があるため、必要以上に距離を縮めないようにしていたところはある。
「あのー、一つお願いしてもいいですか?」
「うん、何かな?」
「酔いが回ってしまったので、マルクさんの家で休ませてください」
「ああっ、俺の家の方が近いよな」
王都に行っている間にしばらく留守にしていたが、人を呼べる程度には片づいている。
エスカから受けた親切を考えれば、それぐらいのことには応じなければいけない気がした。
「うん、分かった」
「ありがとうございます」
それからほどなくして、俺の家に到着した。
この家は町中の建物が立ち並ぶ一角にある。
二階建ての一軒家で玄関は各階にあり、二階の方を借りている。
一旦、荷物を床に下ろしてから、部屋の鍵を取り出して入室した。
魔力灯の電源に魔力をこめると、室内が少しずつ明るくなる。
「近くを通ったことはあっても、中に入るのは初めてです」
「とりあえず、ソファーで休んでおいて。飲みものが何もないから、近くの湧き水を汲んでくる」
「はーい」
エスカはのんびりした返事をすると、部屋の中に入っていった。
俺はキッチンの水差しを手に取り、そそくさと外に出た。
一人で通りを歩くと静寂に包まれていた。
何となく心細い気持ちになりながら、足早に水汲みに向かった。
俺は目的地に到着すると流れ出る冷たい水を水差しに入れた。
エスカを長い時間一人にするわけにもいかず、すぐに来た道を引き返した。
小走りで部屋に戻ると、少し息が上がっていた。
再びキッチンに行ってカップを手に取ると、汲んだばかりの水を注いだ。
俺は水差しを置いてカップを手にした状態でソファーのある部屋に向かった。
「エスカ、水を入れたから飲んだらどう?」
ソファーに目を向けると寝ているはずのエスカが見当たらない。
もしかしたら、トイレに入っているのかもしれない。
俺は近くのテーブルにカップを置いて、椅子に腰かけた。
「……うわっ!?」
エスカはソファーに寝ていないだけで、俺の死角に立っていた。
というか、何か服を脱いでいないか。
「マルクさん、ワタシは……」
彼女は何かを言いかけた。
酔っている影響もあると思うが、どこか普段の様子と違う気がした。
「ど、どうしたんだ。とりあえず、服を着た方が……」
エスカは上下の衣服を脱いでおり、下着姿になっていた。
付き合いが長いこともあり、彼女らしくない行動だと感じられた。
白い肌と豊かな胸に目を奪われそうだが、違和感が拭えないことで理性を保っている。
「ワタシと愛し合いましょう」
「んっ?」
エスカはそんなことを言わない。もっと奥手な性格のはずだ。
不自然な言動のおかげで思考が澄み渡り、冷静になることができた。
彼女の首元のネックレスが妙に存在感があると気づいた。
「……マルクさん」
「――壊れたらごめんよ」
俺はエスカの間合いに入って、ネックレスの宝石部分に手を触れた。
その直後に電流のようなものが流れてきた。
指先にしびれるような痛みが走り、反射的に魔力を押し返した。
――ピシッと宝石に亀裂が入った。
「……あっ、うーん」
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