114 / 555
魔道具とエスカ
魔道具の気配
しおりを挟む
部屋の鍵を閉めた後、階段を素早く下りて家の敷地を出た。
静まり返った通りを歩いて、自分の店へと引き返す。
急ぎ足で移動するとすぐに到着した。
店の周りは明かるいままで、屋外のテーブル席にアデルがいた。
「ちょっと困ったことがあって戻ってきました」
「あら、そう。何があったのかしら?」
「エスカの身につけていたネックレスが魔道具だったみたいです。俺が魔力を流したら宝石が割れて、彼女が寝こんでしまって……」
アデルは椅子に腰かけたまま、俺の話を聞いていた。
何かを思い返すような間があった後、彼女は口を開いた。
「あぁー、あのネックレスね。特に危険な魔力は感じなかったけれど」
「エスカに何かあるといけないので、来てもらってもいいですか?」
「いいわ。行きましょう」
俺とアデルは厨房で作業中だったジェイクに声をかけてから、エスカの眠る我が家へと向かった。
部屋に戻った時、エスカがいなくなっていないか気にかかったが、ソファーで寝息を立てていた。
「ひと目見た感じでは何もなさそうね」
アデルは一応確かめてみるわと続けてエスカに近づいた。
その場でしゃがんでエスカの様子をじっくりと観察している。
「……どうですか?」
「うーん、魔力の影響があるようには見えないわよ」
アデルはそう言った後、よっと布団を動かした。
その瞬間、まずいと思った。
「――あっ」
「……ええと、これはどういうことなのかしらね」
アデルは怒りというよりも、困ったような反応だった。
布団を動かしたことで、エスカの胸元とブラジャーが見えてしまった。
「おそらくそのネックレスの影響で……、彼女が自分から服を脱いだんです」
「それはそうよね。あなたがそういうことをするようにも見えないし、エスカが強引に迫るわけないもの」
俺の説明を聞いて、アデルは納得したようだった。
彼女は状況を探るようにネックレスに手を伸ばした。
「それって魔道具ですよね」
「ええ、そうみたい。あなたが魔力を流したことで機能しなくなったようね」
アデルはネックレスを取り外し、じっくりと眺めている。
魔法に精通していることもあり、興味が湧いたのだろうか。
目のやり場に困るので、布団を元の位置にさりげなく戻した。
エスカの状態が気がかりだったものの、アデルの様子からして心配ないと思われる。
俺自身の知識では魔道具の影響を判断できなかったので、アデルを呼んできて正解だったようだ。
「装着していると何らかの影響を受けることまでは分かるけれど、具体的にどうなるかまでは分からないわね」
「エスカはこんなものをどこで手に入れたんでしょう?」
「本人に聞いてみないことには分からないわ」
「それはそうですね」
アデルは確認を終えたようにネックレスをテーブルに置いた。
ネックレスは紅色の宝石が目立つデザインで、魔力探知に長けていなければ、そこまで違和感を覚えないような普通の見た目だった。
再びエスカに視線を向けると落ちついた様子で眠っていた。
寝ているところを起こすのも気が引けるので、朝まで待った方がよいだろうか。
「とりあえず、異常なしということでよかったですかね」
「夜通し見守らなければいけないような状態ではないわ。このまま寝かせておくのが一番よ」
「分かりました。俺には判断がつかなかったので助かりました」
「それじゃあ、私は帰るわね。何か異常があれば教えてもらえるかしら」
「はい、そうします」
アデルは部屋から立ち去っていった。
彼女がいなかったら、不安なまま夜を明かすことになっていただろう。
翌朝。目が覚めた時、自分の部屋に帰ってきたことをすぐに思い出せなかった。
見慣れた内装と使い慣れたベッドの感触。
昨日の夕方に王都からバラムへ帰ってきたのだ。
俺はベッドから起き上がり、寝室から廊下を通ってキッチンへと足を運んだ。
水差しからカップに水を入れて飲み干す。
ふと、いつも使っているカップがないことを不思議に思った。
「……あれ、どこかに置いたままだったか」
そのうちに見つかるだろうと違和感を気に留めることなく、リビングへと移動した。
ソファーに横たわる人影を目にした瞬間、昨夜の出来事を思い出した。
「あっ、そういえば」
見当たらなかったカップはテーブルに置かれ、ソファーにはエスカが寝ている。
彼女が下着姿のままなことに気づいて、アデルに服を着せてもらえばよかったと思った。
寝たままの人間に服を着せられるかは分からないが。
「――う、うーん……」
どうしたものかと決めあぐねていると、エスカが目を覚ましてしまった。
「……お、おはよう」
「ふわぁ……あれっ、マルクさん?」
エスカは上半身を起こしてこちらを見ていた。
そして、彼女は自分の状態を探るように手前に視線を向けた。
「……その、何というか」
「え、えっ、どういうことですか!?」
エスカは混乱したように質問を投げてきた。
筋道の通った答えを考えようとするのだが、起きたばかりの頭ではすぐに思いつかない。
ひとまず、確認しておいた方がいいことをたずねることにした。
「昨日の記憶はどこまである?」
「ええと、みんなでワインを飲んでいたことは覚えてます」
エスカは記憶が曖昧なようで思い出すのに時間が必要に見えた。
俺は部屋の片隅に置かれた彼女の服を手に取り、恐る恐る手渡した。
静まり返った通りを歩いて、自分の店へと引き返す。
急ぎ足で移動するとすぐに到着した。
店の周りは明かるいままで、屋外のテーブル席にアデルがいた。
「ちょっと困ったことがあって戻ってきました」
「あら、そう。何があったのかしら?」
「エスカの身につけていたネックレスが魔道具だったみたいです。俺が魔力を流したら宝石が割れて、彼女が寝こんでしまって……」
アデルは椅子に腰かけたまま、俺の話を聞いていた。
何かを思い返すような間があった後、彼女は口を開いた。
「あぁー、あのネックレスね。特に危険な魔力は感じなかったけれど」
「エスカに何かあるといけないので、来てもらってもいいですか?」
「いいわ。行きましょう」
俺とアデルは厨房で作業中だったジェイクに声をかけてから、エスカの眠る我が家へと向かった。
部屋に戻った時、エスカがいなくなっていないか気にかかったが、ソファーで寝息を立てていた。
「ひと目見た感じでは何もなさそうね」
アデルは一応確かめてみるわと続けてエスカに近づいた。
その場でしゃがんでエスカの様子をじっくりと観察している。
「……どうですか?」
「うーん、魔力の影響があるようには見えないわよ」
アデルはそう言った後、よっと布団を動かした。
その瞬間、まずいと思った。
「――あっ」
「……ええと、これはどういうことなのかしらね」
アデルは怒りというよりも、困ったような反応だった。
布団を動かしたことで、エスカの胸元とブラジャーが見えてしまった。
「おそらくそのネックレスの影響で……、彼女が自分から服を脱いだんです」
「それはそうよね。あなたがそういうことをするようにも見えないし、エスカが強引に迫るわけないもの」
俺の説明を聞いて、アデルは納得したようだった。
彼女は状況を探るようにネックレスに手を伸ばした。
「それって魔道具ですよね」
「ええ、そうみたい。あなたが魔力を流したことで機能しなくなったようね」
アデルはネックレスを取り外し、じっくりと眺めている。
魔法に精通していることもあり、興味が湧いたのだろうか。
目のやり場に困るので、布団を元の位置にさりげなく戻した。
エスカの状態が気がかりだったものの、アデルの様子からして心配ないと思われる。
俺自身の知識では魔道具の影響を判断できなかったので、アデルを呼んできて正解だったようだ。
「装着していると何らかの影響を受けることまでは分かるけれど、具体的にどうなるかまでは分からないわね」
「エスカはこんなものをどこで手に入れたんでしょう?」
「本人に聞いてみないことには分からないわ」
「それはそうですね」
アデルは確認を終えたようにネックレスをテーブルに置いた。
ネックレスは紅色の宝石が目立つデザインで、魔力探知に長けていなければ、そこまで違和感を覚えないような普通の見た目だった。
再びエスカに視線を向けると落ちついた様子で眠っていた。
寝ているところを起こすのも気が引けるので、朝まで待った方がよいだろうか。
「とりあえず、異常なしということでよかったですかね」
「夜通し見守らなければいけないような状態ではないわ。このまま寝かせておくのが一番よ」
「分かりました。俺には判断がつかなかったので助かりました」
「それじゃあ、私は帰るわね。何か異常があれば教えてもらえるかしら」
「はい、そうします」
アデルは部屋から立ち去っていった。
彼女がいなかったら、不安なまま夜を明かすことになっていただろう。
翌朝。目が覚めた時、自分の部屋に帰ってきたことをすぐに思い出せなかった。
見慣れた内装と使い慣れたベッドの感触。
昨日の夕方に王都からバラムへ帰ってきたのだ。
俺はベッドから起き上がり、寝室から廊下を通ってキッチンへと足を運んだ。
水差しからカップに水を入れて飲み干す。
ふと、いつも使っているカップがないことを不思議に思った。
「……あれ、どこかに置いたままだったか」
そのうちに見つかるだろうと違和感を気に留めることなく、リビングへと移動した。
ソファーに横たわる人影を目にした瞬間、昨夜の出来事を思い出した。
「あっ、そういえば」
見当たらなかったカップはテーブルに置かれ、ソファーにはエスカが寝ている。
彼女が下着姿のままなことに気づいて、アデルに服を着せてもらえばよかったと思った。
寝たままの人間に服を着せられるかは分からないが。
「――う、うーん……」
どうしたものかと決めあぐねていると、エスカが目を覚ましてしまった。
「……お、おはよう」
「ふわぁ……あれっ、マルクさん?」
エスカは上半身を起こしてこちらを見ていた。
そして、彼女は自分の状態を探るように手前に視線を向けた。
「……その、何というか」
「え、えっ、どういうことですか!?」
エスカは混乱したように質問を投げてきた。
筋道の通った答えを考えようとするのだが、起きたばかりの頭ではすぐに思いつかない。
ひとまず、確認しておいた方がいいことをたずねることにした。
「昨日の記憶はどこまである?」
「ええと、みんなでワインを飲んでいたことは覚えてます」
エスカは記憶が曖昧なようで思い出すのに時間が必要に見えた。
俺は部屋の片隅に置かれた彼女の服を手に取り、恐る恐る手渡した。
55
あなたにおすすめの小説
35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~
月神世一
ファンタジー
紹介文
「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」
そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。
失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。
「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」
手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。
電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。
さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!?
森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、
罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、
競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。
これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。
……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!
土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~
にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。
「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。
主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
【完結】テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~
荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。
それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。
「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」
『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。
しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。
家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。
メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。
努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。
『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』
※別サイトにも掲載しています。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。
彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。
そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。
カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。
やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。
魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。
これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。
エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。
第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。
旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。
ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる