異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家

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飛竜探しの旅

新たな依頼

「お願いしたい内容を続けたいのですが、その前に皆さんのことをお聞かせ頂いても……?」

 イザックはエルフの方以外のことも知っておきたいと補足した。
 たしかにアデルが魔法を使うところはばっちり見えたわけだが、俺とハンクについては情報がないはずだ。

「おれの名はハンク。Sランク冒険者だが、ちょっとした経緯があってこの二人と旅を共にしている」

「なんと、エルフの方だけでなく、あなたも実力者でしたか」

 イザックはハンクの言葉に何度か瞬きをした。
 Sランクという響きは分かりやすい上にインパクトが大きい。

「俺は料理店の店主のマルクです。以前はCランク冒険者でした」

「ほほう、Cランク。ギルドの規模にもよりますが、なかなかの実力なのでは」

 こちらへの反応は社交辞令かもしれないので、曖昧に頷いておいた。

「危険を伴うことですが、あなた方なら無事に帰ってこれると信じて、お願いをさせて頂きます」

「心配するな。よほどのことがない限りは何とかなるし、もしもの時は引き返す」

「そう言って頂けると安心です。肝心の内容ですが、町外れの洞窟の封印が解かれて危険な状況になっており、その封印を戻してほしいのです」

 封印という単語が出てきて、自分の専門外だと判断した。
 魔法に詳しいアデルを見やると、肘を突いて手の上に顎を乗せていた。
 緊張感がないように見えるが、その姿勢を見て何とかなるのだと読み取った。

「封印を戻すだけなら、そんな緊張した態度にならないわよね?」

「は、はい、お察しの通り……です。封印されていたベヒーモスが洞窟にいます」

「えっ、そんなヤバいやつが封印されていたんですか?」

 実力者であるアデルとハンク、一般人の部類に入る俺とイザック。
 部屋にいる四人は二対二に分かれて、対照的な状態だった。
 落ちつきがないのは俺たちで、アデルたちは普段通りに構えていた。

「洞窟から出てねえってことは、まだ力が戻らずってところか。相手がベヒーモスだろうと本調子でなければ、何とかなるだろう」

「むしろ、洞窟の中だと肉弾戦になるのが厄介よ。私の出る幕はあるのかしら」

「たしかに大がかりな魔法は使えませんね」

 洞窟内の広さにもよるが、アデルが全開で魔法を使った日には崩落する可能性が高い。
 必然的にハンクの出番になると考えるのが自然だろう。

「ハンク殿が言われた通り、ベヒーモスは力を取り戻していないようです。封印が解かれたのを発見した者が逃げおおせたことから考えても間違いないかと」

「今、その洞窟はどうなってる?」

「即刻、封鎖して立ち入れないようにしてあります。予定では王都の応援がワイバーンを倒しに来た時、今後の対応について伺うつもりでした」

 イザックの判断は妥当なものだった。
 この町の規模でベヒーモスが出たと広まれば、パニックになった上に町を逃れる人が続出しかねない。
 かといって、そのままにするわけにもいかず、封鎖したということだろう。

「おれは引き受けて構わないが、二人はどうする?」

「私は問題ないわよ」

「俺も構いません」

「おおっ、ありがとうございます!」

 イザックは大げさにも見えるような喜びようだった。
 ベヒーモスに関することが重荷になっていたことの表れなのだろう。

「言い忘れていたが、今からっていうのはなしだぜ」

「ええ、それはもちろんです。この後、宿に案内しますので、ゆっくり休んでください」

 食事を用意してもらった上に今夜の宿まで。
 アデルが活躍したことで恩恵を受けることになった。
 自分は何もしていない気もするが、せっかくなのでありがたく頂戴しよう。

 イザックの話が終わった後、食後に出されたお茶を飲んで、宿屋に案内された。
 町の規模からすれば十分に上等な場所で、ゆっくり休めそうだった。



 翌朝。予定通りにベヒーモスを何とかする作戦が始まろうとしていた。
 まずはイザックの屋敷に集まり、俺とアデル、ハンクの他にフェルンの住人らしき姿があった。
 広い部屋に集合した状態でイザックが話を始めた。

「お三方、今日はよろしくお願いします。その者が洞窟まで案内させて頂きます」

「ベヒーモスのことを隠し続けるのは辛かったので、どうか倒してください」

 イザックに紹介された青年は緊張した様子だった。
  
「さあ、ちゃっちゃと片づけようぜ」

「とても心強い。では、お三方を案内してくれ」

 イザックは俺たちを見送ろうとする感じが濃厚だった。
 無理強いするつもりはないが、一応は確かめておきたいと思った。 

「ちなみに町長は行かないんですか?」

「とんでもない。わたしは戦いの経験など皆無ですから、同行しても足手まといになるだけです」

「それはその通りですね」

 単純にビビっているだけの可能性もあるが、冒険者の心構えとして戦えない者を連れていくのは違う気がする。
 ここで待機してもらうのが無難なところだ。 

「それでは、行ってらっしゃいませ」

 イザックに見送られて、俺たちは屋敷を出た。
 朝のさわやかな風が町に吹いていた。
 バラムよりも自然の多い地域ということもあり、空気がきれいな気がした。

「話に出ていた洞窟は町の近くです。すぐに到着します」

 青年は目立たないようにと考えているのか、人気の少ない道を選んでいるように見えた。

 屋敷を出て町の中を通り、町外れの方に歩いてくると、入り口のふさがれた洞窟が目に入った。
 岩が幾重にも積まれて、出入りができないようになっている。

「あの洞窟ですか?」

「はい、そうです。到着しました」

 青年は中にベヒーモスがいるのを知っているからなのか、顔色が青いように見える。
 心なしか洞窟から冷たく暗い空気が流れてくるのを感じた。
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