異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家

文字の大きさ
163 / 555
飛竜探しの旅

結界を越える飛竜

しおりを挟む
 草原の中を通る道を引き返して、森の手前に来たところでテオと別れた。
 テオから聞いた話では、結界の影響で先に進めないということだった。
 それから、精霊の浮かぶ森の中を三人で歩いていた。

 飛竜もといテオとの話がまとまり、足取りが軽くなるような感じだった。
 移動の途中で、ハンクが話しかけてきた。

「そういえば、飛竜の名前が妙なんだよな」

「たしか、テオボルトでしたっけ?」

「ああっ、珍しい名前だが、おれより前の世代の優れた冒険者と同じなんだよ。飛竜に人間みたいな名前があるとは考えにくいから、テオボルトと面識があったんじゃないかと思ってな」

 ハンクの言葉は何かを懐かしむような雰囲気があった。
 テオボルトという人物について詳しくないが、ハンクが気にかけるぐらい腕の立つ冒険者だったのだろう。
 元冒険者の俺を含めた、たくさんの人間がハンクに憧れを抱くように。
 
 草原と村の間にある森を抜けてから、俺たちは手分けしてコレットを探し始めた。
 アデルの話では結界の調整をしたり、動ける範囲で歩き回ったりしているらしい。
 村自体はそこまで広くないと思っていたのだが、結界の範囲に含まれる面積は思ったよりも広かった。

 コレットの行きそうな場所に見当もつかず、村の外れを歩いていると何かを調べている様子の少女を見かけた。
 もう少し近づいてみると、それがコレットだと分かった。
 
「探していた飛竜が乗せてくれるようになったんですけど、村の結界を通れないみたいで……」

 俺はコレットにテオと交渉したこと、人の姿になれることなどを説明した。

「おおっ、やるねえ。飛竜が人間の言うことなんて聞くんだ」

 コレットは感心したようにこちらに目を向けた。
   
「従ってくれたというより、お互いの利害が一致した感じですね」

「ふーん、そうなんだ。それで通れるようにしたいんだって?」

「はい、何かいい方法があれば頼めませんか?」

「うーん、どうしようかなー」

 コレットは腕組みをしながら考えこんでいる。
 エルフの少女がそうする様子は愛らしい雰囲気だった。

「よーし、弟子の頼みとあらば、聞いてあげようじゃないか」

「あっ、俺は弟子に認定されてるんですね」

「じゃあ、結界の境界まで行こう」

 コレットは意気揚々と歩き出した。
 どのようにそれを可能にするのか見当もつかないが、自信ありげな彼女を見ていると何とかなりそうな気がした。

「先に行っていてください。アデルとハンクに声をかけてきます」

「うん、了解」

 俺は別の場所でコレットを探していた二人に状況を説明した。
 それから、三人で彼女の後を追った。

 やはり、コレットは境界までしか行けないようで、飛竜探しの時に見送ってくれた場所と同じところで待っていた。
 そこまで時間は経っていないものの、少し退屈しているように見えた。

「待ちくたびれたよ」
 
「お待たせしました」

 コレットはおどけた様子で怒ったような仕草を見せた。
 エルフ全般に言えることなのだが、時間に関して寛容な印象を持っている。
 もっとも、人間社会に浸りまくりのアデルは例外になるのだが。

「今、結界を確認したけど、飛竜はこっちに入れないようになってる。たぶん、境界を設定した先人がそうしたんだと思う」

「先人にとって、飛竜は危険という認識だったんですか?」

「そればっかりは、わたしには分からない。向こうの空間に関しては誰がどうやって作ったか知らないし、だからこそ、不慮の事故が起こらないようにしたんじゃないかな」

 コレットに答えを求めてもどうしようもなかった。
 彼女は代々引き継がれている管理者の一人でしかない。
 テオのことが気の毒に思ったが、飛竜について詳しくなかったのであれば、危険を回避しようとしたことを責めるべきではないとも思う。

「ねえ、コレット。飛竜が引っかかってしまう設定は解除できるのかしら?」

「現在、新しい設定を読みこみ中ー。もう少ししたら、飛竜がこっち側に来れるようになる」

 そのまましばらく待っていると、コレットにが口を開いた。

「――これで完了! 向こうに待ってるなら、迎えにいっていいよ」

「はい、ありがとうございます」

 俺とアデル、ハンクの三人で森を歩き始めた。
 今日何度目かということもあり、精霊の浮かぶ光景に慣れが生じていた。

 森を抜けたところで、テオが仁王立ちで待っているのが目に入った。
 不遜な態度に見えるものの、不機嫌という感じではなさそうだった。
 
「お待たせしました」

「結界の障壁を通らんとする大仕事。いくらでも待つつもりだ」

「飛竜というか、テオが通れない制限が解除されたみたいなので、これで森から村の方に出れます」

「では、向かうとしよう」

 テオは思ったよりも乗り気で、すぐに進もうとした。
 俺は慌ててそれを引き留める。

「森の中は一本道ですけど、迷うといけないので、後ろを歩いてもらってもいいですか?」

「ふむ、仕方がない。従うとしよう」

 予想したよりも素直な気がするが、やっぱりハンクのおかげだろう。
 アデルとハンクを前にして、その後ろにテオ、最後尾に俺という並びで歩き出した。

 テオは森の中に初めて入るようで、精霊の浮かぶ様子に興味を示していた。
 それと結界の影響を気にかけるように、何かを警戒するような素振りも見せた。
 俺自身も緊張を覚えたが、何ごともなく森を通過できて胸をなで下ろした。

 森を出て村の方へ歩いていくと、コレットが待っていてくれた。

「すごーい! それが飛竜なんだ。ホントに人の姿になってる」

「おい、この少女は何だ? 我は見せ物ではないぞ」

 テオは少しイラっとした様子で、コレットを一瞥した。
 だが、その程度で我が師匠は怯まなかった。

「誰が通れるようにしてあげたと思ってるのかな? ここで結界の条件を変えたら、キミは元の世界に弾き飛ばされるよー」

「……マルクよ。この少女が守り人なのか?」

「はい、そうです」

「少女よ――」

「コレット」

 コレットは言葉の通じない相手に名前を示すように、自分を指でさした。

「……コレットよ、我はマルクたちと相互不可侵の約束をしている。おぬしもそうすべきだと我は思う」

「コレットちゃんは大人のレディーだから、その条件を吞んであげましょう」

 コレットは腕を組んで堂々と宣言した。
 テオに反撃の手がないことを思えば、少しだけ気の毒に思った。


 あとがき
 お読みいただき、ありがとうございます。 
 しおりやエールで反響を知ることができ、執筆の励みになっています。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした~のんびり暮らしたいのに、なぜかそうならない~

ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。 家族も、家も、居場所もない。 そんな俺を拾ってくれたのは、優しいSランク冒険者のパーティだった。 「荷物持ちでもいい、仲間になれ」 その言葉を信じて、俺は必死についていった。 だけど、自分には何もできないと思っていた。 それでも少しでも役に立ちたくて、夜な夜な一人で力を磨いた。 だけどある日、彼らは言った。 『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』 それは、俺の身を案じた「優しさ」からの判断だった。 俺も分かっていた。 だから、黙ってそれを受け入れ、静かにパーティを離れた。 「もう誰にも必要とされなくてもいい。一人で、穏やかに生きていこう」 そう思っていた。そのはずだった。 ――だけど。 ダンジョンの地下で出会った古代竜の魂と、 “様々な縁”が重なり、騒がしくなった。 「最強を目指すべくして生まれた存在」 「君と一緒に行かせてくれ。」 「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」 穏やかなスローライフ生活を望んだはずなのに、 世界はまた、勝手に動き出してしまったらしい―― ◇小説家になろう・カクヨムでも同時連載中です◇

手切れ金代わりに渡されたトカゲの卵、実はドラゴンだった件 追放された雑用係は竜騎士となる

草乃葉オウル ◆ 書籍発売中
ファンタジー
上級ギルド『黒の雷霆』の雑用係ユート・ドライグ。 彼はある日、貴族から依頼された希少な魔獣の卵を探すパーティの荷物持ちをしていた。 そんな中、パーティは目当ての卵を見つけるのだが、ユートにはそれが依頼された卵ではなく、どこにでもいる最弱魔獣イワトカゲの卵に思えてならなかった。 卵をよく調べることを提案するユートだったが、彼を見下していたギルドマスターは提案を却下し、詳しく調査することなく卵を提出してしまう。 その結果、貴族は激怒。焦ったギルドマスターによってすべての責任を押し付けられたユートは、突き返された卵と共にギルドから追放されてしまう。 しかし、改めて卵を観察してみると、その特徴がイワトカゲの卵ともわずかに違うことがわかった。 新種かもしれないと思い卵を温めるユート。そして、生まれてきたのは……最強の魔獣ドラゴンだった! ロックと名付けられたドラゴンはすくすくと成長し、ユートにとって最強で最高の相棒になっていく。 その後、新たなギルド、新たな仲間にも恵まれ、やがて彼は『竜騎士』としてその名を世界に轟かせることになる。 一方、ユートを追放した『黒の雷霆』はすべての面倒事を請け負っていた貴重な人材を失い、転げ落ちるようにその名声を失っていく……。 =====================  アルファポリス様から書籍化しています!  ★★★★★第1〜4巻発売中!★★★★★  ★★★コミカライズ第1巻発売中!★★★ =====================

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

処理中です...