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飛竜探しの旅
エルフの村を出発
ハンクと一緒にソラルの家から戻ると、宿の中でアデルが出発の準備をしていた。
彼女を見送るためなのか、コレットも来ていた。
「もうそろそろ、村を出ますか?」
俺とハンクは空いた椅子に腰を下ろして会話を始めた。
「おれはいつでも出れるから、二人に合わせるぞ」
「私も問題ないわ。ところで、テオはどうするの? バラムまでついてくるのよね」
荷物の整理を終えたと思われるアデルがこちらを向いた。
テオ本人というよりも俺自身の意見が必要なのだろう。
「今のところ、ついてきてもらう予定です。こことバラムを往復してもらったら、お互いに不便だと思うので」
「――マルクよ、我のことか」
目を閉じて瞑想するかのような気配だったテオが厳かに口を開いた。
この場にいる他者を遠巻きに見るように、端っこの席の椅子に座っている。
「今回は町までついてきてもらう予定ですけど、こっちに残る方がいいですか?」
「ふむ、おぬしについていこう。我の拠点はおぬしに任せる」
「……ああっ、用意してくれって意味ですね」
徐々にテオ語が理解できるようになっていた。
当然ながら、テオは外国人などではないのだが、意思疎通には慣れが必要だと実感している。
種族の違いについて嘆いても仕方がないだろう。
「できれば、俺たちと帰ってほしいですけど、馬が一人一頭ずつなんですよ」
「それなら問題ないぞ。おれの馬にテオが二人乗りすればいいんじゃねえか」
「テオの体重ってどれぐらいでしたっけ」
飛竜の見た目通りの重量ならば、確実に馬が走れなくなる。
それどころか使い物にならなくなることさえ起こりえる。
ただ、人型になっている時の重さ次第で二人乗りはできるはずだと考えた。
そんなことを思っていると、ハンクがテオに立ち上がるように促した。
テオが素直に応じたところ、ハンクが彼の腰を掴んで持ち上げた。
「……なっ!?」
「これはまた、ずいぶん軽いな」
ハンクは拍子抜けしたように言った。
テオは突然の出来事に言葉を失ったように沈黙した。
そして、何ごともなかったように床に下ろされた。
「二人乗りはいけそうですか?」
「そうだな、これだけ軽ければ支障なくやれそうだ」
人型になると軽くなる理由は分からないが、一緒に移動できた方がテオが迷ってしまうことも避けられるメリットがある。
万が一、何かの拍子で飛竜の状態で見つかってしまったら、町はとんでもない騒ぎになってしまうことを気にしなければいけない。
「……ということは、これで出発できそうですね」
「馬でバラムに戻るのなら時間がかかるし、そろそろ行くとするか」
俺たちは各自荷物を手に取り、順番に宿を出た。
三頭の馬は村内の馬小屋に繋いであるらしく、コレットに案内されて向かった。
あまり相手をしてやれなかったことで運動不足になっていないか気になったが、十分に休んだことで元気になったように見える。
逃げないように結んである縄をほどいて、手綱を引きながら馬を移動させた。
馬小屋から村の入口まで来たところで、それぞれに自分の馬に乘りこんだ。
「みんな、楽しかったよ! ぜったい、また来てね」
「これからは師匠と呼ばせてください! また会いましょう」
「コレット、結界を守る役目を果たしてくれてありがとう。きっと、たくさんのエルフがあなたに感謝していると思うわ」
「そうだとうれしいな。それじゃあ、またねー」
俺たちはコレットに見送られながら、ゆっくりと馬を歩かせた。
名残り惜しい気持ちではあるが、バラムへ帰らなければならない。
アデルとハンクも同じ気持ちだったようで、何度か後ろを振り返った。
「もう一度、ここに来たいですね……」
「ええ、そうね。私にとっては生まれた場所でもあるから、また来ないと」
馬に乗った状態で近くにいると、アデルは複雑な表情を見せていた。
彼女の横顔には切なさが見て取れて、とても珍しいことだと思った。
いつもは悠然と構えているようでも、故郷を大切に思う気持ちを持っていると知り、意外な一面を見たような気持ちだった。
エルフの村が徐々に遠ざかったところで、アデルの馬が先頭になった。
来た時に通った道とはいえ、周辺の地理に通じている彼女が先導した方がスムーズに移動できるだろう。
いくらか馬を走らせたところで、急に空が暗くなったように見えた。
しかし、それも少し進むうちに収まった。
一度目はそうであることを知らなかったが、今回は結界の影響だと気づけた。
進行方向の空にまっすぐ目を向けると、先ほどまでの上空の様子がウソだったかのように晴れ渡る空が広がっていた。
馬を走らせていると、エルフの村の前から伸びる道と街道が交わるところに出た。
俺たちはそのまま前進して街道に進入した。
街道に入ってしばらく経ってから、ふいにハンクとテオのことが気になった。
興味深い組み合わせだが、二人乗りで無事に移動できるのか。
とりあえず、今のところは何ごともない様子で進んでいる。
「……それにしても、今日は馬がやけに元気だな」
最初はアデルがハイペースかと思いかけたが、三頭は共にすごした絆が生まれたように息が合っているように見える。
決して、一頭だけが飛ばしすぎているわけではなさそうだ。
「あそこの村にいると、生き物が元気になるような何かがあるのかもしれない」
そんな効果が確認できたら、あの村で調子の悪い人を療養させて儲けることができるような気もした。
もっとも、コレットが反対しそうな可能性が高く、ソラルに至っては率先して治療してしまい、悪意なく商売を成り立たせないようにしかねない。
「際どい商売はこの世界の人たちに許容されにくいと思うけど、村で生じる効果は奇跡みたいなものだよな」
そんなことを考えていると、見覚えのあるところを通過した。
たしか、この近くにリムザンの町があった。
食事休憩にはまだ早く、立ち寄る用事はなかった。
今のペースで進めるのなら、この前のフェルンの町に泊まることになりそうだ。
彼女を見送るためなのか、コレットも来ていた。
「もうそろそろ、村を出ますか?」
俺とハンクは空いた椅子に腰を下ろして会話を始めた。
「おれはいつでも出れるから、二人に合わせるぞ」
「私も問題ないわ。ところで、テオはどうするの? バラムまでついてくるのよね」
荷物の整理を終えたと思われるアデルがこちらを向いた。
テオ本人というよりも俺自身の意見が必要なのだろう。
「今のところ、ついてきてもらう予定です。こことバラムを往復してもらったら、お互いに不便だと思うので」
「――マルクよ、我のことか」
目を閉じて瞑想するかのような気配だったテオが厳かに口を開いた。
この場にいる他者を遠巻きに見るように、端っこの席の椅子に座っている。
「今回は町までついてきてもらう予定ですけど、こっちに残る方がいいですか?」
「ふむ、おぬしについていこう。我の拠点はおぬしに任せる」
「……ああっ、用意してくれって意味ですね」
徐々にテオ語が理解できるようになっていた。
当然ながら、テオは外国人などではないのだが、意思疎通には慣れが必要だと実感している。
種族の違いについて嘆いても仕方がないだろう。
「できれば、俺たちと帰ってほしいですけど、馬が一人一頭ずつなんですよ」
「それなら問題ないぞ。おれの馬にテオが二人乗りすればいいんじゃねえか」
「テオの体重ってどれぐらいでしたっけ」
飛竜の見た目通りの重量ならば、確実に馬が走れなくなる。
それどころか使い物にならなくなることさえ起こりえる。
ただ、人型になっている時の重さ次第で二人乗りはできるはずだと考えた。
そんなことを思っていると、ハンクがテオに立ち上がるように促した。
テオが素直に応じたところ、ハンクが彼の腰を掴んで持ち上げた。
「……なっ!?」
「これはまた、ずいぶん軽いな」
ハンクは拍子抜けしたように言った。
テオは突然の出来事に言葉を失ったように沈黙した。
そして、何ごともなかったように床に下ろされた。
「二人乗りはいけそうですか?」
「そうだな、これだけ軽ければ支障なくやれそうだ」
人型になると軽くなる理由は分からないが、一緒に移動できた方がテオが迷ってしまうことも避けられるメリットがある。
万が一、何かの拍子で飛竜の状態で見つかってしまったら、町はとんでもない騒ぎになってしまうことを気にしなければいけない。
「……ということは、これで出発できそうですね」
「馬でバラムに戻るのなら時間がかかるし、そろそろ行くとするか」
俺たちは各自荷物を手に取り、順番に宿を出た。
三頭の馬は村内の馬小屋に繋いであるらしく、コレットに案内されて向かった。
あまり相手をしてやれなかったことで運動不足になっていないか気になったが、十分に休んだことで元気になったように見える。
逃げないように結んである縄をほどいて、手綱を引きながら馬を移動させた。
馬小屋から村の入口まで来たところで、それぞれに自分の馬に乘りこんだ。
「みんな、楽しかったよ! ぜったい、また来てね」
「これからは師匠と呼ばせてください! また会いましょう」
「コレット、結界を守る役目を果たしてくれてありがとう。きっと、たくさんのエルフがあなたに感謝していると思うわ」
「そうだとうれしいな。それじゃあ、またねー」
俺たちはコレットに見送られながら、ゆっくりと馬を歩かせた。
名残り惜しい気持ちではあるが、バラムへ帰らなければならない。
アデルとハンクも同じ気持ちだったようで、何度か後ろを振り返った。
「もう一度、ここに来たいですね……」
「ええ、そうね。私にとっては生まれた場所でもあるから、また来ないと」
馬に乗った状態で近くにいると、アデルは複雑な表情を見せていた。
彼女の横顔には切なさが見て取れて、とても珍しいことだと思った。
いつもは悠然と構えているようでも、故郷を大切に思う気持ちを持っていると知り、意外な一面を見たような気持ちだった。
エルフの村が徐々に遠ざかったところで、アデルの馬が先頭になった。
来た時に通った道とはいえ、周辺の地理に通じている彼女が先導した方がスムーズに移動できるだろう。
いくらか馬を走らせたところで、急に空が暗くなったように見えた。
しかし、それも少し進むうちに収まった。
一度目はそうであることを知らなかったが、今回は結界の影響だと気づけた。
進行方向の空にまっすぐ目を向けると、先ほどまでの上空の様子がウソだったかのように晴れ渡る空が広がっていた。
馬を走らせていると、エルフの村の前から伸びる道と街道が交わるところに出た。
俺たちはそのまま前進して街道に進入した。
街道に入ってしばらく経ってから、ふいにハンクとテオのことが気になった。
興味深い組み合わせだが、二人乗りで無事に移動できるのか。
とりあえず、今のところは何ごともない様子で進んでいる。
「……それにしても、今日は馬がやけに元気だな」
最初はアデルがハイペースかと思いかけたが、三頭は共にすごした絆が生まれたように息が合っているように見える。
決して、一頭だけが飛ばしすぎているわけではなさそうだ。
「あそこの村にいると、生き物が元気になるような何かがあるのかもしれない」
そんな効果が確認できたら、あの村で調子の悪い人を療養させて儲けることができるような気もした。
もっとも、コレットが反対しそうな可能性が高く、ソラルに至っては率先して治療してしまい、悪意なく商売を成り立たせないようにしかねない。
「際どい商売はこの世界の人たちに許容されにくいと思うけど、村で生じる効果は奇跡みたいなものだよな」
そんなことを考えていると、見覚えのあるところを通過した。
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