異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家

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飛竜探しの旅

バラムへ帰還

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 エルフの村はランスとメルツの国境にほど近いため、リムザンの町からはそこまで離れていない。
 そこからリムザンの次の町に当たる、フェルンまではそれなりに距離がある。
 
 リムザン周辺を通過してからは、ひたすら馬を走らせるような状態だった。
 馬での移動にも慣れたため、そこまで長距離移動は苦にならなくなっていた。
 
 天気は雲が増えたり、減ったりするぐらいで大きな崩れはない。
 街道の途中で休憩を挟みながら、夕方頃にフェルンに到着した。

 町に着いた後、町長のイザックに不審な魔法使いに遭遇したことなどを報告に行った。
 封印破りの件やベヒーモスのことがあったため、今後は国境に加えてフェルンにも兵士が常駐する話が進んでいるそうだ。

 まじめな話が終わった後、町長の親切で用意してもらった宿に宿泊した。
 テオはフェルンと直接関係がないわけだが、彼の分の部屋も用意された。


 
 翌朝。出発の準備が済んだ俺たちは再び移動を開始した。
 馬に乘りながら今回の旅を思い返すと、色んなことがあったとしみじみ思った。

「……ワイバーン、ベヒーモス、幻覚魔法。最後にエルフの村と飛竜か」

 今までにないような濃密な数日間だった。
 アデルたちと出会ったことで、行動範囲が広がったことを実感させられる。

 俺たちの馬たちが快足で駆けたおかげで、予定よりも短い時間でバラムに着くことができた。
 途中の小さな町で昼食を済ませたが、まだ夕方までには時間がある。

 まずは馬をしまわなければいけないので、町の外周にある係留所にやってきた。
 一時的に繋がれたような数頭の馬が目に入り、ギルドの職員らしき人が世話をしているところだった。

 俺は馬から下りてから、固定するための金具に縄を結んだ。
 今回のためにギルドから買い取った馬ではあるものの、これからはテオに乗ることができるので、そこまで出番があるとは考えにくい。
 それに所有を続ける場合は厩舎を間借りして、ほぼ毎日通って馬の世話をする必要がある。

 今回の旅で自分が乗った馬に愛着が湧いたものの、今後も世話を続けたいというほどではない。
 購入した時の価格を下回るはずだが、ギルドに頼んで引き取ってもらおう。

「俺はギルドに返すつもりですけど、ハンクはどうします?」

 ハンクはすでに馬から下りており、同乗していたテオと近くにいた。

「すっかり忘れちまったが、テオに乗るなら馬はなくても困らないか」

「維持費がかかるので、現金を持たない生活と相性がよくないかもですね」

 ハンクのお財布なし生活は今でも続いている。
 物々交換、対価としての働きを提供しているので、貧しいわけではない。
 彼の所持品は珍しいものが多く、現金換算すれば裕福な部類に入る気もする。

「おれもギルドに返すとするか」

「ちょうど、近くにギルドで馬を管理している人を見かけたので、ハンクの分と合わせて話をしてきます」

「おおっ、任せたぜ」

 先ほど見かけたギルドの職員に声をかけて、馬を手放したいと伝えた。
 最近までギルドが所有していた馬なら問題ないだろうということになり、係留所に繋いでおくだけでよいことになった。

「お待たせしました。そのままにしておいたら、手続きなどはやってくれるそうです。あとは下取りした分のお金は後日にと」

「よしっ、分かった。それじゃあ、町の方に戻るか」

 俺たちは愛馬との別れを済ませると、町の中心に向かって歩き出した。
 ちなみにアデルはそのまま所有したいようで、厩舎を間借りするらしかった。 

 係留所を離れると、徐々に町の賑わいが増していった。
 王都から戻った時には新鮮さを感じたものの、今回は数日離れただけなので、そこまでの感慨を抱くことはなかった。

「まだ暗くなるまでに時間がありますし、二人でアスタール山に行きますか」

 町の中を移動しながら、近くを歩くアデルに声をかけた。

「私は飛竜を隠せる魔道具がなくても困らないけれど、乗りかかった舟だし、最後まで付き合うとするわ」

 山中に工房を設営した老人は、わりと気難しい性格だった。 
 ハンクやテオを同行させるよりも、会ったことのある俺とアデルの方が上手くいきやすいはずだ。
 それに彼女が一緒だと何かと心強い。

「テオに近くまで乗せてもらう手もありますけど、山の手前で下りないといけないとなると、徒歩とそこまで差はありませんね」

「今日はほとんど馬に乘っていたから、そのぐらいは歩くわよ」

「分かりました。荷物を家に置いてきたいので、それから出発でも?」

「私も荷物を軽くしてから行くわ。アスタール山に向かうなら、同じ方向の町の入り口に集合しましょう」

「では、それで」

 アデルと話し終えたところで、ハンクとテオに意識が向いた。
 テオの寝床も確保しなければいけないのだが……。

「申し訳ないんですけど、アスタール山から戻るまでテオをお願いできますか?」

 まるで幼い子どもを預けるようにハンクに願い出た。
 
「ああっ、それぐらい気にすんな。適当にバラムの町を案内したり、どこかで飯でも食わせたり……こいつはあんまり飯を食わないんだったな」

 ハンクは少し気まずそうに頭をかいた。
 テオは飛竜の時は現地の草や鳥の肉などを食べていたらしいが、人間の状態だとカロリーを必要としないかのように飲み物ぐらいしか摂取していない。
 食が細い子どもを気にかけるように、心配する素振りが見受けられた。

「日暮れまでには戻るつもりなので、俺の店にテオを連れてきてもらったら大丈夫です。そこからは俺が案内します」

「そうだな、分かった。また後でな」

「はい、お願いします」

 俺はハンクとテオに会釈をして、その場を離れた。
 まずは荷物を軽くするため、自宅のある方向に向かって歩き始めた。

 自宅に到着した後、遠征用のカバンをテーブルの上に乗せた。
 アスタール山へ行くのに必要なものだけをカバンの中から取り出す。
 護身用のショートソードを手にしたところで、荷物を整理する動きが止まった。

 ソラルの施術やコレットの特訓のおかげで、魔法の威力が底上げされているので、この剣の出番も少ないかもしれない。
 とはいっても、藪を払ったり、近接戦闘になったりした際には有用なため、今までと同じように腰に携えることにした。


あとがき
お読みいただき、ありがとうございます。
エールを下さる皆さま、ご親切に感謝します。
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