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高級キノコを求めて
ノブレス・オブリージュ
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「さあ、トーレス。オレたちは公都へ戻ろう。フラン様との誓いを果たす」
「はっ、承知しました」
根回しの件を実行するつもりのようで、スヴェンがトーレスと去っていった。
スヴェンは相手がフランでなければ、毅然とした振る舞いができるように見えた。
今回は恋慕の念があり、格上の貴族相手で脈なしという点が致命的だったのだ。
徐々に遠ざかり小さくなる背中を見て、そんなことを思った。
「うーん、フランの気を引くには、ハンク並に強くなるしかないのか」
俺は誰にともなく呟いた。
「まさか、こんなところでトーレスと出くわすとは」
ハンクはそう言った後、肩のこりをほぐすように首を左右に動かした。
彼にしては珍しく、緊張を覚えたらしい。
「なかなかの気配でしたけど、あの人は強いんですか?」
「まあ、魔法はまるでダメだが、腕っぷしはなかなかのものだ」
「ハンクがそこまで認めるなんて……とにかく、戦いにならなくてよかったです」
トーレスのことは少し気になるが、何も起きなかったことを喜ぶべきだろう。
今回は立入禁止ということで、油断していたことは反省点だった。
ハンクやフランならば自己防衛できるとしても、俺の実力では相手の力量に左右されやすい。
「はぁ、とにかく無事でよかった」
「なあ、ため息なんか吐いてどうした?」
「いえ、別に何でもないです。二人が戦ってたら危なかったなと思っただけで」
「そうか、それならいいが」
さらに言うと、スヴェンのことは少し気の毒に思ったが、口にするほどのことでもなかった。
ここでの用事は済んだとばかりに、それぞれが来た道を引き返した。
落ち葉を踏みしめながら足を運びつつ、近くを歩くハンクに声をかける。
「そういえば、あの二人は門から出入りしてないような口ぶりでしたね」
「たぶん、帰りも門は通らないんじゃねえか? 急に出てきたら、いくら貴族でも守衛は不審に思うだろうな」
「たしかにそうですね」
このことについてはフランの方が詳しいかもしれない。
俺は少し前を歩く彼女にたずねることにした。
「もしかして、貴族にしか分からない出入り口があったりします?」
「これだけ広い森なら、そういったものが一つや二つあったとしても、おかしくありませんわ」
「やっぱりそうですか」
スヴェンたちが怪しまれたら、根回しの件どころではなくなると思った。
しかし、トーレスもいる以上、そこまで抜けたことはしないはずだ。
俺たちは森の中を歩いて門を通過すると、テオが着陸した開けた場所に戻った。
それから、周りに人目がないことを確認した後、飛竜になった彼の背中に乗って、公都方面に引き返した。
テオが公都近郊の空き地に降り立った後、彼は人間の姿に戻り、全員が可視化できる状態に戻った。
フランとはここで別れることになり、ハンクはバックパックから一枚の布袋を取り出して彼女に手渡した。
「これ、お前の分な。たくさん採れたと思うが、一人分はそんなもんだ」
「お気になさらないで。これだけあれば、コショネ茸の味を堪能できますもの」
「そうか、そいつはよかった」
ハンクは明るい表情で笑みを見せた。
一方のフランは少し遠慮がちな様子だった。
「立ち入り禁止を解いてもらう件ですけど、任せてしまって大丈夫ですか?」
再確認の意味をこめて、フランにたずねた。
「それはもちろん。わたくしやスヴェンのように地元の者でかつ、貴族でないと何もできないと思いますわ」
「うーん、やっぱりそうですよね」
「わたくしに遠慮することなく、バラムへ帰って構いませんわよ」
フランは自分に任せろと言わんばかりに、自信ありげな様子だった。
それと同時に、こちらの負担を減らそうという気遣いも感じられた。
「それじゃあ、お言葉に甘えて、帰らせてもらいます」
「あっ、あと……お姉さまに、よろしく伝えてくださる?」
「お姉さま……アデルのことですか。何と伝えておきましょう?」
アデルの話題になった途端、フランはもじもじしている。
どのような好意かは分からないが、彼女に親しみを寄せているのは間違いない。
「わたくしが会いたいと申していたと伝えてもらえれば、それで……」
フランは頬を朱に染めたかと思うと、こちらから顔を逸らしてしまった。
「今は帰省中のはずですけど、アデルがバラムに戻ってきたら、必ず伝えます」
「お姉さまのふるさと……エルフの村ですの?」
「はい、妹のエステルと出てると思いますよ」
俺が言い終えると、フランは時が止まったかのように静止した。
もしや、エステルの存在が初耳だったのだろうか。
「――何ですって、お姉さまに妹が……?」
「はい、そうですけど……」
ギギギッとさび付いた歯車のような動きで、フランがこちらを見た。
その瞳から感情を読み取ることは難しく、何を考えているのかまるで分からない。
「ふふふっ、お姉さまの妹となれば、さそがし美しいのでしょうねえ」
フランの恍惚とした表情に言葉を失った。
あれ、アデルの見た目が好きだったのか?
彼女の優雅さや気高さに惹かれたのだと解釈していたのだが。
「その……エステル、という方はお姉さまに似ているのかしら?」
「うーん、アデルに比べると少し若いというか幼さがありますし、顔も面影があるかどうかといった雰囲気でしたね」
兄のソラルでさえ、二人とそこまで似ていないので、あの兄妹は全体的にそんな感じかもしれない……ややこしい話になるので、ソラルのことは伏せておくとしよう。
「あれ、そういえば、ハンクとテオは……」
二人とも巻きこまれないようにしているのか、離れたところでこちらを見ていた。
ハンクはともかくとして、テオもちゃっかりしている。
「とにかく、お姉さまに妹がいらっしゃるなら、ぜひお会いしたいですわ!」
フランは再びうっとりするような顔を見せた。
彼女には大役が残されているので、そろそろ引き離す時だと思った。
「分かりました。次にフランがバラムへ来ることがあれば、会えるといいですね」
「ええ、もちろん。その時は紹介お願いしますわね」
「はい、頼まれました」
俺が笑顔で答えると、フランもにこやかな表情を返してくれた。
上位貴族の彼女とこれだけ打ち解けられただけでも十分だと思った。
「では、また。ごきげんよう」
「はい、また会いましょう!」
フランは上品な動作で身を翻すと、上下探検家風の服装に布袋を手にした状態という、野性味溢れる装いで歩いていった。
「はっ、承知しました」
根回しの件を実行するつもりのようで、スヴェンがトーレスと去っていった。
スヴェンは相手がフランでなければ、毅然とした振る舞いができるように見えた。
今回は恋慕の念があり、格上の貴族相手で脈なしという点が致命的だったのだ。
徐々に遠ざかり小さくなる背中を見て、そんなことを思った。
「うーん、フランの気を引くには、ハンク並に強くなるしかないのか」
俺は誰にともなく呟いた。
「まさか、こんなところでトーレスと出くわすとは」
ハンクはそう言った後、肩のこりをほぐすように首を左右に動かした。
彼にしては珍しく、緊張を覚えたらしい。
「なかなかの気配でしたけど、あの人は強いんですか?」
「まあ、魔法はまるでダメだが、腕っぷしはなかなかのものだ」
「ハンクがそこまで認めるなんて……とにかく、戦いにならなくてよかったです」
トーレスのことは少し気になるが、何も起きなかったことを喜ぶべきだろう。
今回は立入禁止ということで、油断していたことは反省点だった。
ハンクやフランならば自己防衛できるとしても、俺の実力では相手の力量に左右されやすい。
「はぁ、とにかく無事でよかった」
「なあ、ため息なんか吐いてどうした?」
「いえ、別に何でもないです。二人が戦ってたら危なかったなと思っただけで」
「そうか、それならいいが」
さらに言うと、スヴェンのことは少し気の毒に思ったが、口にするほどのことでもなかった。
ここでの用事は済んだとばかりに、それぞれが来た道を引き返した。
落ち葉を踏みしめながら足を運びつつ、近くを歩くハンクに声をかける。
「そういえば、あの二人は門から出入りしてないような口ぶりでしたね」
「たぶん、帰りも門は通らないんじゃねえか? 急に出てきたら、いくら貴族でも守衛は不審に思うだろうな」
「たしかにそうですね」
このことについてはフランの方が詳しいかもしれない。
俺は少し前を歩く彼女にたずねることにした。
「もしかして、貴族にしか分からない出入り口があったりします?」
「これだけ広い森なら、そういったものが一つや二つあったとしても、おかしくありませんわ」
「やっぱりそうですか」
スヴェンたちが怪しまれたら、根回しの件どころではなくなると思った。
しかし、トーレスもいる以上、そこまで抜けたことはしないはずだ。
俺たちは森の中を歩いて門を通過すると、テオが着陸した開けた場所に戻った。
それから、周りに人目がないことを確認した後、飛竜になった彼の背中に乗って、公都方面に引き返した。
テオが公都近郊の空き地に降り立った後、彼は人間の姿に戻り、全員が可視化できる状態に戻った。
フランとはここで別れることになり、ハンクはバックパックから一枚の布袋を取り出して彼女に手渡した。
「これ、お前の分な。たくさん採れたと思うが、一人分はそんなもんだ」
「お気になさらないで。これだけあれば、コショネ茸の味を堪能できますもの」
「そうか、そいつはよかった」
ハンクは明るい表情で笑みを見せた。
一方のフランは少し遠慮がちな様子だった。
「立ち入り禁止を解いてもらう件ですけど、任せてしまって大丈夫ですか?」
再確認の意味をこめて、フランにたずねた。
「それはもちろん。わたくしやスヴェンのように地元の者でかつ、貴族でないと何もできないと思いますわ」
「うーん、やっぱりそうですよね」
「わたくしに遠慮することなく、バラムへ帰って構いませんわよ」
フランは自分に任せろと言わんばかりに、自信ありげな様子だった。
それと同時に、こちらの負担を減らそうという気遣いも感じられた。
「それじゃあ、お言葉に甘えて、帰らせてもらいます」
「あっ、あと……お姉さまに、よろしく伝えてくださる?」
「お姉さま……アデルのことですか。何と伝えておきましょう?」
アデルの話題になった途端、フランはもじもじしている。
どのような好意かは分からないが、彼女に親しみを寄せているのは間違いない。
「わたくしが会いたいと申していたと伝えてもらえれば、それで……」
フランは頬を朱に染めたかと思うと、こちらから顔を逸らしてしまった。
「今は帰省中のはずですけど、アデルがバラムに戻ってきたら、必ず伝えます」
「お姉さまのふるさと……エルフの村ですの?」
「はい、妹のエステルと出てると思いますよ」
俺が言い終えると、フランは時が止まったかのように静止した。
もしや、エステルの存在が初耳だったのだろうか。
「――何ですって、お姉さまに妹が……?」
「はい、そうですけど……」
ギギギッとさび付いた歯車のような動きで、フランがこちらを見た。
その瞳から感情を読み取ることは難しく、何を考えているのかまるで分からない。
「ふふふっ、お姉さまの妹となれば、さそがし美しいのでしょうねえ」
フランの恍惚とした表情に言葉を失った。
あれ、アデルの見た目が好きだったのか?
彼女の優雅さや気高さに惹かれたのだと解釈していたのだが。
「その……エステル、という方はお姉さまに似ているのかしら?」
「うーん、アデルに比べると少し若いというか幼さがありますし、顔も面影があるかどうかといった雰囲気でしたね」
兄のソラルでさえ、二人とそこまで似ていないので、あの兄妹は全体的にそんな感じかもしれない……ややこしい話になるので、ソラルのことは伏せておくとしよう。
「あれ、そういえば、ハンクとテオは……」
二人とも巻きこまれないようにしているのか、離れたところでこちらを見ていた。
ハンクはともかくとして、テオもちゃっかりしている。
「とにかく、お姉さまに妹がいらっしゃるなら、ぜひお会いしたいですわ!」
フランは再びうっとりするような顔を見せた。
彼女には大役が残されているので、そろそろ引き離す時だと思った。
「分かりました。次にフランがバラムへ来ることがあれば、会えるといいですね」
「ええ、もちろん。その時は紹介お願いしますわね」
「はい、頼まれました」
俺が笑顔で答えると、フランもにこやかな表情を返してくれた。
上位貴族の彼女とこれだけ打ち解けられただけでも十分だと思った。
「では、また。ごきげんよう」
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