異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家

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異国の商人フレヤ

焼肉屋で働きたい若者

「さっきの話の続きですけど、二人の意見も聞きながら決めたいと思います」

「パメラが言っていたみたいに週休二日でいいんじゃないかな」

「わたしは冒険者なので、あんまり経営のことは詳しくなくて……」

 ベンチに座りながらアイスティー片手に話し合いを進める。 
 転生前に色んな種類の会議を経験しているが、こうやってくつろげる雰囲気で話ができるのは気楽でいいものだと思った。

「そういえば、休みを増やした分だけ売上は減ると思うけど、それは大丈夫なの?」

「売上ベースで考えると、多少は今よりも下がっても問題ありません。改装にかかった費用は営業を続けるうちに回収できると思います」
 
「パメラは曜日を固定すれば、影響を抑えられるって言ってたから、どの曜日にするかが重要だね」

 かつて、信仰が許された時代には日曜日は休むという概念があったらしいが、今ではそういった文化は薄れている。
 とりあえず、週の半ばということで水曜日、次いで習慣だけが残った影響で日曜日を休日にするところが多い。
 
「あのー、マルクさん」

「どうした、エスカ? 何かあるなら言ってほしい」

「皆さん、毎月二十日が給料日の方が多いので、曜日関係なく、その日はお客さんが多くなりやすいです」

「そうか、ありがとう」

 エスカの意見にフレヤが頷いていた。
 こうして、三人で自由に意見が出せた方が質の高い話し合いになるだろう。

「うーん、二十日は必ず店を開く場合、他の曜日を連動して休みにしないといけなくなるか。そうすると、その日は気に留めつつ、曜日は固定の方針はそのままにするのが無難でよさそう……だな」

「あっ、ごめん。定休日とは関係ないけど、パメラの店みたいにもう少し店員がいてもいいのかも。私とマルクの二人が中心でエスカが臨時のお手伝いだと、誰かが体調を崩したら、お店は回らなくなるんじゃないかな」

 フレヤの提案は至極まっとうなものだった。
 俺自身、人を増やした方がいいと思いながらも、忙しくなってくるとそっちまで手が回らないような状況なのだ。

「マルクさんがイヤじゃなければ、冒険者で手伝ってくれそうな人を探してみますけど」

「それは助かる。何となく遠慮する気持ちがあったけど、エスカが訊いてくれるなら、人を探す負担が軽くなる」  

「依頼が重なると忙しいですけど、そうじゃない時は空いている人もいますよ」

 エスカの説明に頷いた。
 冒険者をしていた頃と変わりがなければ、彼女の言った通りの状況なのだろう。
 そもそも自由業みたいなもので、決まった拘束時間というのはないに等しい。

「これで話し合っておきたいことは出た気がします。急に定休日を設定するとお客が困るかもしれないので、曜日が決まってから周知する方針でいきます」

 今までは食材探しを優先しがちなところがあったので、これからは計画的にしたいと思っていた。背景にはフレヤの影響が大きい。

「それいいんじゃない」

「わたしも問題ないと思います」

 二人の同意を得ることができて、定休日についての話はまとまりそうだった。

「従業員を増やすことについては……」

 俺が話を続けようとしたところで、見知らぬ若者――俺と大して年齢の変わらなそうな――が近くまで歩いてきていた。
 
「あ、あの、すみません……」

 若者は緊張した面持ちでこちらを見ていた。
 金色の髪を肩の上まで伸ばし、町で見かける定番の衣服を身にまとっている。
 正面に向き合うと、こちらよりも少し年下に見える風貌だった。
 
「ええと、何か用ですか?」

「先ほどパメラさんの店でお見かけして……」

 若者はもじもじしている。
 少年のようなあどけなさを感じさせる美男子ということもあり、なぜだかいけない気持ちに……なることはないが、自分にはない魅力を羨ましく思った。

「あっ、この人、何度か焼肉を食べに来たのを見たことがある」

「おっ、そうなんですか。ありがとうございます」

 フレヤに教えられて、自然とお礼の言葉を口にしていた。
 それを聞いた若者は恐縮しているようだったが、意を決するように口を開いた。

「いえ、実は……店主さんのお店で働かせてもらいたいです」

「ええっ!?」

 予想外の出来事に、手にしたグラスを落としそうになった。
 近くに座っているエスカとフレヤも驚きを隠せないといった様子だ。

「自分はバラムから離れた農村出身なんですが、職場の親方が店主さんのお店に連れていってくれて、こんなに美味しいものがあるのかと感動しました」

「俺はいいですけど、その親方はあなたが辞めてしまったら困るんじゃないですかね……あと、店主さんと呼ばれるのに慣れてないので、マルクと呼んでもらっていいですよ」

 こちらがそう伝えると、若者は再び恐縮した様子で話し始めた。

「すす、すみません。自己紹介が遅れてしまって。自分はシリルといいます」

「いえ、気になさらず。それで今の仕事はどんな感じですか?」

 もう一度、似たような質問をすると、シリルの表情が少し暗くなった。
 何かまずいことを訊いてしまったかと焦りを感じた。

「自分の仕事は現場作業なのですが、元々親方の足を引っ張りがちで……」

「マルクさん、この人を雇ってあげてください」

 エスカが捨て犬を拾ってあげてほしい、みたいに訴えてきた。
 気持ちは分からないでもないが、もう少し彼の話を聞いた方がいいだろう。

「ちょっと待って。まだ事情が分からないから」

「あっ、すみません」

「……それで続きを話してもらえますか」

「は、はい」

 シリルは少し緊張しっぱなしだったが、気を取り直すように話を再開した。

「それでも、何とかやってこれたんです。……ただ、少し前にハンクさんという方が手伝いに来てから、自分の役立たずっぷりがイヤになってしまって」

「んっ、ハンク?」

「たしか、ハンクさんは建築関係のお手伝いをしていると聞きましたけど」

 俺が疑問を浮かべていると、エスカが説明を補足してくれた。
 そういえば、そんなようなことをしていると聞いた気がする。

「ハンクは冒険者としても一流で何をやらせても器用だから、比較対象として適切じゃない気はします」

「えっ、そうなんですか……」

 シリルは初めて聞いたと言わんばかりの反応を返した。
 冒険者同士でなければ話題にしないこともあるだろうし、ハンクの謙虚ぶりを考えれば納得できるところはある。
  
「にしても、どうしてうちの店なんでしょう? バラムの町には他にも食堂なり、レストランなりがありますよね」

 俺がたずねると、シリルはうつむきがちだった顔を上げた。

「うちの実家はしがない食堂なのですが、将来はバラムから故郷に戻って食堂を手伝うつもりです。せっかくなら、一流の店で働いて思い出を作って帰ろうと思いました」

「ああっ、なるほど」

 真意は測りかねるが、一流と言われて悪い気はしなかった。
 他に焼肉屋がないので、比較対象がないとそう見えるのかもしれない。

「ちなみに実家が食堂ということは、多少料理はできるんですか?」

「下準備や補助ならそつなくこなせます。現場仕事はダメでしたが、料理に関することは問題ないです」

「うーん、じゃあお願いしてみようか」

 エスカとフレヤの意見も確かめた方がいいと思い、二人の様子に目を向けた。
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