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ダークエルフの帰還
まさかのドラゴン肉
――動物の解体と剣捌きに共通点はあるのだろうか?
刃物を扱うという意味では同じと言えるのかもしれない。
そして、リリアたちはレッドドラゴンの表面に切れ目を入れて、どんどん鱗剝がしを進めている。
俺の出番はなく、ちょうど近くにいたジョエルと言葉を交わす。
「骨周りは残りそうなので、その鉈が活躍しそうですね」
「グレイエイプには後れを取りましたが、解体では活躍させてください。ちなみに竜種の肉というのは食べられるものでしょうか?」
一応、食べられることは知っている。
バラムを訪れたドワーフの行商人から情報を得た時、実際にドラゴンの身を試食する機会があった。
鳥肉に近い風味で食べられないということはなかった。
「種類にもよると思いますけど、ドラゴン自体は食べられるはずですよ」
あの時のドワーフから情報を仕入れたものの、種類によって違う点もありそうなので、明言できるほど自信はなかった。
毒があるタイプではなさそうなので、少量の毒味をすれば問題ない気もする。
「村では農耕は活発なのですが、牧畜は申し訳程度の規模です。これが食べられれば貴重なタンパク質になります」
「イノシシを食べることもあると聞きましたけど、そんなにしょっちゅう獲れるわけではないですよね」
「その通りです。警戒心が強い上に逃げ足が早いので、数回の狩りで一頭仕留められたら上出来な方かと思います。それにしてもよくご存じで。マルクさんは狩りをされるのでしょうか?」
ジョエルは興味ありげな様子でたずねてきた。
俺がエスカと狩りをした時も同じぐらいの確率だった。
女冒険者でもある彼女が同行すれば捕まえること自体は容易だが、イノシシはどこにでもいるわけではない。
「はい、仲間に付き合って何度か。弓が使えると楽ですよね」
「その通りです。丸い図体のわりにすばしっこくて」
思わぬところで共通点があった。
バラムからは遠く離れたナロック村だが、都会から離れたところでは生活に似通った部分があるのは自然なことだろう。
「村長、この鱗を加工したら売り物になりそうっすね」
「おお、そうか。ちなみに皆さんは何か使われますか?」
ジョエルは俺やリリアたちにたずねた。
全員が首を横に振って、レッドドラゴンの鱗を譲るという意思表示になる。
村人たちはうれしそうに声を上げて喜びを表現した。
「これだけの量があれば、いい臨時収入になります。何から何までありがたいことです」
「いえいえ、そんなに気を遣わないでください。まずはドラゴンをばらして、みんなで食べてみましょう。意外に美味しいかもしれません」
「ははっ、そうですな。存外に美味しいこともあり得る」
リリアとクリストフが主導になりながら、途中で村人たちも加わりつつ、順調にレッドドラゴンの解体が進んだ。
部位ごとに切り分けられて、地面に置いた状態で並べられた。
周囲には血だまりと生々しい匂いが発生したが、途中から内臓を焼却処分したことで悪臭になるほどではない。
もっとも、この世界の住人としては平気なだけで、日本人だった頃の自分には耐えられないような状況だと思う。
牛数頭分の大きさのあるレッドドラゴンを解体したことで、残骸はかなりの量になっている。
ちなみに村人たちを筆頭にラーニャだけでなく、都会人のリリアとクリストフも平気そうだった。
「マルクくん、これは本当に食べられるのかい?」
感慨深くその光景を眺めていると、クリストフが近くに歩いてきた。
その手にはレッドドラゴンの一部が握られている。
「塩焼きでも食べられる気はするんですけど、臭み消し推奨な気もします。まずは運べるだけ運びましょうか」
「あのー、すみません。運びきれない骨や肉にイノシシなどが来ませんか?」
村人の一人が俺たちにたずねた。
もっともな質問だと思った。
ちょうと聞こえる位置にいたラーニャが応じる。
「それなら心配いらない。動物は基本的にドラゴンの匂いを恐れる。グレイエイプがまだ近くにいたとしても、絶対に近寄ろうとはしない」
「へえ、そういうもんなんですか」
彼女が言い切ると、村人は納得したような反応を示した。
たしかにそういったことはあるかもしれない。
ドラゴンでは経験がないものの、危険な肉食獣の匂いで草食獣が近寄らないという理屈ならば分かる気がする。
「こんなこともあろうかと荷車を引いてきました。ここに来る途中に置いてあります。どうぞお使いください」
どうやって運び出すのかと考え始めたところで、村長のジョエルがやってきた。
レッドドラゴンのいた位置はホワイトプラムの木々の奥なので、ここまでは運べなかったようだ。
「さあ手分けして運ぼうぜ!」
村人の一人が声を出して、それぞれに運び出す部位を手にした。
俺はぶつ切りにされた尻尾の一部を持って、荷車の置かれた場所へと歩き出した。
ホワイトプラムの木が生える一帯を通過すると、先行した人たちが順番に乗せているところだった。
「ふぅ、かなりの量だから全部は乗りませんね」
「我々は往復しても苦にならないので、皆さんは村に戻られたらゆっくり休んでください」
「何度も行き来するのは大変ですし、無理しないでくださいね」
気遣いの言葉を伝えるとジョエルは人のよさそうな笑みで応じてくれた。
刃物を扱うという意味では同じと言えるのかもしれない。
そして、リリアたちはレッドドラゴンの表面に切れ目を入れて、どんどん鱗剝がしを進めている。
俺の出番はなく、ちょうど近くにいたジョエルと言葉を交わす。
「骨周りは残りそうなので、その鉈が活躍しそうですね」
「グレイエイプには後れを取りましたが、解体では活躍させてください。ちなみに竜種の肉というのは食べられるものでしょうか?」
一応、食べられることは知っている。
バラムを訪れたドワーフの行商人から情報を得た時、実際にドラゴンの身を試食する機会があった。
鳥肉に近い風味で食べられないということはなかった。
「種類にもよると思いますけど、ドラゴン自体は食べられるはずですよ」
あの時のドワーフから情報を仕入れたものの、種類によって違う点もありそうなので、明言できるほど自信はなかった。
毒があるタイプではなさそうなので、少量の毒味をすれば問題ない気もする。
「村では農耕は活発なのですが、牧畜は申し訳程度の規模です。これが食べられれば貴重なタンパク質になります」
「イノシシを食べることもあると聞きましたけど、そんなにしょっちゅう獲れるわけではないですよね」
「その通りです。警戒心が強い上に逃げ足が早いので、数回の狩りで一頭仕留められたら上出来な方かと思います。それにしてもよくご存じで。マルクさんは狩りをされるのでしょうか?」
ジョエルは興味ありげな様子でたずねてきた。
俺がエスカと狩りをした時も同じぐらいの確率だった。
女冒険者でもある彼女が同行すれば捕まえること自体は容易だが、イノシシはどこにでもいるわけではない。
「はい、仲間に付き合って何度か。弓が使えると楽ですよね」
「その通りです。丸い図体のわりにすばしっこくて」
思わぬところで共通点があった。
バラムからは遠く離れたナロック村だが、都会から離れたところでは生活に似通った部分があるのは自然なことだろう。
「村長、この鱗を加工したら売り物になりそうっすね」
「おお、そうか。ちなみに皆さんは何か使われますか?」
ジョエルは俺やリリアたちにたずねた。
全員が首を横に振って、レッドドラゴンの鱗を譲るという意思表示になる。
村人たちはうれしそうに声を上げて喜びを表現した。
「これだけの量があれば、いい臨時収入になります。何から何までありがたいことです」
「いえいえ、そんなに気を遣わないでください。まずはドラゴンをばらして、みんなで食べてみましょう。意外に美味しいかもしれません」
「ははっ、そうですな。存外に美味しいこともあり得る」
リリアとクリストフが主導になりながら、途中で村人たちも加わりつつ、順調にレッドドラゴンの解体が進んだ。
部位ごとに切り分けられて、地面に置いた状態で並べられた。
周囲には血だまりと生々しい匂いが発生したが、途中から内臓を焼却処分したことで悪臭になるほどではない。
もっとも、この世界の住人としては平気なだけで、日本人だった頃の自分には耐えられないような状況だと思う。
牛数頭分の大きさのあるレッドドラゴンを解体したことで、残骸はかなりの量になっている。
ちなみに村人たちを筆頭にラーニャだけでなく、都会人のリリアとクリストフも平気そうだった。
「マルクくん、これは本当に食べられるのかい?」
感慨深くその光景を眺めていると、クリストフが近くに歩いてきた。
その手にはレッドドラゴンの一部が握られている。
「塩焼きでも食べられる気はするんですけど、臭み消し推奨な気もします。まずは運べるだけ運びましょうか」
「あのー、すみません。運びきれない骨や肉にイノシシなどが来ませんか?」
村人の一人が俺たちにたずねた。
もっともな質問だと思った。
ちょうと聞こえる位置にいたラーニャが応じる。
「それなら心配いらない。動物は基本的にドラゴンの匂いを恐れる。グレイエイプがまだ近くにいたとしても、絶対に近寄ろうとはしない」
「へえ、そういうもんなんですか」
彼女が言い切ると、村人は納得したような反応を示した。
たしかにそういったことはあるかもしれない。
ドラゴンでは経験がないものの、危険な肉食獣の匂いで草食獣が近寄らないという理屈ならば分かる気がする。
「こんなこともあろうかと荷車を引いてきました。ここに来る途中に置いてあります。どうぞお使いください」
どうやって運び出すのかと考え始めたところで、村長のジョエルがやってきた。
レッドドラゴンのいた位置はホワイトプラムの木々の奥なので、ここまでは運べなかったようだ。
「さあ手分けして運ぼうぜ!」
村人の一人が声を出して、それぞれに運び出す部位を手にした。
俺はぶつ切りにされた尻尾の一部を持って、荷車の置かれた場所へと歩き出した。
ホワイトプラムの木が生える一帯を通過すると、先行した人たちが順番に乗せているところだった。
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