異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家

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ダークエルフの帰還

マリオ特製の石窯で焼いたピザ その2

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 調理場に戻るとマリオが板状の調理器具に盛りつけを終えたピザ生地を乗せているところだった。
 続けて彼は本職のピザ職人のように、慣れた様子で調理器具の持ち手の部分を持ち上げた。

「今から窯にピザを入れるところです。ついてきてください」

 俺とリリアはマリオと一緒に調理場の裏口を出た。
 少し進んだところでペンションの外庭になっている部分にレンガが組まれたものが目に入った。
 その中で薪が燃えているのが見えて、排気口の煙突からは煙が出ている。

「マリオさん、これが窯ですか?」

「はい、その通りです。自家製で少し不格好だけど」

 マリオは照れた様子で笑みを浮かべた。

「ピザを焼くところを見れるなんて、とても楽しみです」

「俺も楽しみです。じゃあマリオさん、進めちゃってください」

「ではでは」

 マリオはおもむろに窯の中へとピザ生地を押しこんだ。
 リリアと二人で中の様子に目を向ける。
 見た目通りに火力が強いようで、すぐに焼き目がつき始めた。
 生地の上のチーズが沸騰するようにぐつぐつと泡が生じている。

「想像したよりも強い火で焼くんですね」

「これはまあ、火力が調整しにくいってのもあるんだけど。焼き上がった時の食感をよくするには弱火だといまいちなんで」

 ツヌーク山の件に手助けをしたことで、マリオが気さくな話し方をしてくれるようになったことに気づく。
 俺たちがお客ということで最初から親しみを感じていたが、より打ち解けた感じがしてうれしくなる。

「なるほど、王都のパン職人も窯の火力を考えているということでしょうか」

 リリアが興味深そうな様子で言った。
 彼女は剣技に真摯に向き合っているようだが、食への関心も高いように見える。

「マリオさん、ちなみに火の通り具合はどう確かめるんです?」

「ああそれは勘です」

「ははっ、勘ですか」

 表面の焼け方で見るとか、時間を計るなどの答えを予想していたが、マリオのあっけらかんとした答えに笑いがこみ上げた。

「窯が完成した時に何度か試作をして、それからお客さんに出すうちにね。生地の厚さはだいたい同じにするのもあって、具材の焼き加減を気にするだけでいいんです」  

 マリオは会話の途中で、ちょっと失礼と言って板状の調理器具を手に取った。
 どうやら焼き上がったようで、ピザを乗せる部分を窯の中に押しこんだ。
 そのまま慎重な動きでゆっくりと引いてくる。
 やがて、ふわりと湯気の浮かぶピザが出てきた。

「きれいな焼き上がりですね」

 見たままの素直な感想だった。
 チーズと生地の焼けた香ばしい匂いが漂ってくる。

「はい、成功のようです。このまま調理場へ運びます」

 裏口は開放したままになっており、マリオは調理器具を掴んだ状態で中へと戻っていった。
 仕事モードになっているようで、普段の彼からは想像できないような素早い足取りだった。

 リリアと一緒に彼を追うようについていく。
 すると、マリオは調理台の上に皿を乗せており、続けて皿の上にピザを移動させた。
 
「焼きたてのあつあつなので、よかったら切り分けましょうか?」 

「じゃあ、お願いします」

 そう答えた後、リリアに視線を向けると頷いて返してくれた。

「ええと、四名様でしたね」

「はい、そうです」

 マリオはこちらの返事を聞いてから、専用のピザカッターを滑らかな手つきで引いていった。
 何かで測ったわけではないが、等間隔で切れ目が入った。
 
「これで一枚目は完成です。マルクさん、よかったら食堂に運んでください」

「はい、もちろん。取り皿とかは使ってもいいですよね」

「どうぞどうぞ。自分は二枚目を焼きます」

 マリオはにこにこしながら、次の一枚の準備を始めた。
 最初と同じように生地を作るところからがスタートだった。

「ささっ、マルク殿。食堂に運んで食べましょう」

「ははっ、ですね」

 リリアの待ちきれないと言わんばかりの様子に笑みがこぼれた。
 とても美味しそうで焼きたてとなれば、彼女の気持ちは十分に理解できる。 

 ピザの乗った大皿に手を触れたら、想像よりも熱かった。
 やけどに気をつけて運ぶ必要がありそうだ。

「――どうぞ、よかったらこれを」

 ピザを用意しているはずのマリオがさりげなく、鍋つかみのようなものを渡してくれた。

「ありがとうございます」

「使った後はあそこに戻しておいてもらえると」

「分かりました」

 俺はマリオが示した棚を確認して答えた。
 リリアには取り皿を運んでもらい、自分の方でピザの乗った皿を運ぶことにした。
 
 皿を持って食堂に入ると他にお客がいないせいか、ずいぶんと広く感じた。
 テーブルがいくつか並んでいて、窓側に面した席に皿を置く。
 位置的に椅子が四脚あるため、ちょうどよかった。
 
「クリストフたちを呼んできましょうか?」

「じゃあ、お願いします」

 リリアには取り皿を並べた後、ロビーに歩いていった。
 食堂にいるのは自分だけの状態になった。 

 ……焼きたてのピザからはいい香りがしている。

 俺もお腹が空いているので、そろそろ食べたいと思っていた。
 食欲と綱引きをしながら、ピザの誘惑に抵抗するのだった。


 あとがき
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