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彼女たちの未来
モモカの答え
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「カルンならうちで出してるお店があるから、もしかしたら役に立てるかもしれないわね。ダークエルフの人たちはどんなお店を出すつもりなの?」
「薬草の知識を活かして、ハーブの商品を売りたいそうです。というか、ヒイラギの方で店を出しているというのは初耳でした」
「そうね、特に話すタイミングもなかったし、少し前は山賊のことで手一杯だったから」
「それはそうですね」
気心知れた仲とまではいかないことを再認識する。
ヒイラギを訪れるようになってから何度か会話をしているが、そこまで頻繁に話しているわけではない。
あるいはモモカがミズキに比べて領主然としていることも関係ありそうだ。
「仕入れにお店の立地、物件の選定……うーん、考えることは多そうね。まずはダークエルフから代表者を選んでもらって、その人を連れてカルンに行った方がいいわ」
「街のこともよく知らないみたいなので、俺もそれがいいと思います」
ここまで話したところで、モモカが少し考えこむような表情を見せた。
「エルフとダークエルフは大きく変わらないと聞いていたから、自然の多いヒイラギで暮らしてもらったけれど、自分たちで出店したいだなんて知らなかったわ」
「俺もさっき聞いたばかりなので、気にすることはないですよ。控えめな人ばかりなので、話すタイミングを探っていたのかもしれません」
こちらがそう伝えると、モモカは理解を示すようにうなずいた。
ミズキと遠縁ということもあるのだろうか、人の上に立つ者としての度量を感じさせることがある。今はまさにそんな仕草だった。
「軍資金が必要だし、カルンの街は土地の整備がしっかりしてるから、店舗を借りるのに契約が必要よ」
モモカは途中で言葉を切り、少し考えるような間があった。
「ダークエルフの人たちはお金を出せないだろうから、そこはヒイラギで出させてもらうわ」
「えっ、大丈夫ですか?」
「山賊の拠点から盗品と思われる品々が見つかって、エスタンブルクに確認したら討伐報酬として授かったわ。そのおかげで臨時収入が得られたし、そのお礼と思ってもらえばいいんじゃないかしら」
「ラーニャさんが頼まなければ、ダークエルフの人たちを助けに行くこともなかったとも言えますか。俺もそれがいいと思います」
「あとは契約についても協力するわ。ヒイラギで知恵者の兵士がいて、カルンでお店を始める時は彼が手続きをしてくれたの。きっと今回も役に立つはずよ」
「ありがとうございます。ダークエルフの人たちはきっと喜ぶはずです」
会話を続けながら自分の店を始めた時のことを思い出した。
カルンほどではないにしろ、バラムの町もそこそこ発展しているので、自分の店の土地は所有者から買ったものだ。
「具体的なことはこれから考えるけれど、ダークエルフの人たちには手伝うって伝えておいて」
「はい、分かりました」
話がまとまったところで、モモカが小さく息を吐いた。
「それじゃあ、他に用がないのなら私は休むから」
「もう大丈夫です。休憩に入るところで失礼しました」
俺は小さく頭を下げてそそくさと部屋を出た後、戸を閉めてからその場を離れた。
廊下を歩いて玄関に向かう。
予想以上に実りある結果になり、ダークエルフの人たちの喜ぶ顔が浮かんでいる。
ヒイラギはエスタンブルクと上手くやっているようなので、カルンに店を出すとしても順調に進みそうな予感がした。
バラムを発ってからは商人の娘であるフレヤ、弟子のシリルに店を任せっぱなしになっているが、今回の件がまとまるまではもう少しここにとどまろうと思う。
玄関で靴を履いてから、再びダークエルフの人たちのところに戻る。
早く伝えたい気持ちになり、自然と足の運びが速まるのを感じた。
先ほどの場所にたどり着くと休憩を終えた人たちが作業に戻ろうとしているところだった。
「皆さん、聞いてください――朗報です!」
こちらが声を張ったため、散らばるようになっていたダークエルフの人たちが次々と視線を向けた。
それぞれの表情から期待と不安が入り混じったものが感じられた。
「モモカさんが協力してくれるそうなので、カルンの街に店が出せそうです」
「……よかった」
数メートル離れたところにいるフレイが安堵するようにため息を吐いた。
そんな彼女に寄り添うように他の人がそっと肩に手を乗せた。
感情を露わにして喜ぶわけではないが、彼らが喜びを感じていることは伝わってきた。
囚われの日々から解放されて、自分たちの手で何かを始めようとしている。
それに向けて前進できたのだから、間違いなくうれしいのだろう。
皆の顔がやわらいでいくのを見て、俺も自然と頬が緩んだ。
大げさな歓声や拍手がなくても、この静かな喜びの波は確かなものだ。
誰かが小さく「ありがとう」とつぶやいた。
それは誰かに向けてというよりも、この先の未来に向けた祈りのようなものだった。
自分自身がダークエルフではなくとも、この場に居合わせたことに感謝したい気持ちになっていた。
「薬草の知識を活かして、ハーブの商品を売りたいそうです。というか、ヒイラギの方で店を出しているというのは初耳でした」
「そうね、特に話すタイミングもなかったし、少し前は山賊のことで手一杯だったから」
「それはそうですね」
気心知れた仲とまではいかないことを再認識する。
ヒイラギを訪れるようになってから何度か会話をしているが、そこまで頻繁に話しているわけではない。
あるいはモモカがミズキに比べて領主然としていることも関係ありそうだ。
「仕入れにお店の立地、物件の選定……うーん、考えることは多そうね。まずはダークエルフから代表者を選んでもらって、その人を連れてカルンに行った方がいいわ」
「街のこともよく知らないみたいなので、俺もそれがいいと思います」
ここまで話したところで、モモカが少し考えこむような表情を見せた。
「エルフとダークエルフは大きく変わらないと聞いていたから、自然の多いヒイラギで暮らしてもらったけれど、自分たちで出店したいだなんて知らなかったわ」
「俺もさっき聞いたばかりなので、気にすることはないですよ。控えめな人ばかりなので、話すタイミングを探っていたのかもしれません」
こちらがそう伝えると、モモカは理解を示すようにうなずいた。
ミズキと遠縁ということもあるのだろうか、人の上に立つ者としての度量を感じさせることがある。今はまさにそんな仕草だった。
「軍資金が必要だし、カルンの街は土地の整備がしっかりしてるから、店舗を借りるのに契約が必要よ」
モモカは途中で言葉を切り、少し考えるような間があった。
「ダークエルフの人たちはお金を出せないだろうから、そこはヒイラギで出させてもらうわ」
「えっ、大丈夫ですか?」
「山賊の拠点から盗品と思われる品々が見つかって、エスタンブルクに確認したら討伐報酬として授かったわ。そのおかげで臨時収入が得られたし、そのお礼と思ってもらえばいいんじゃないかしら」
「ラーニャさんが頼まなければ、ダークエルフの人たちを助けに行くこともなかったとも言えますか。俺もそれがいいと思います」
「あとは契約についても協力するわ。ヒイラギで知恵者の兵士がいて、カルンでお店を始める時は彼が手続きをしてくれたの。きっと今回も役に立つはずよ」
「ありがとうございます。ダークエルフの人たちはきっと喜ぶはずです」
会話を続けながら自分の店を始めた時のことを思い出した。
カルンほどではないにしろ、バラムの町もそこそこ発展しているので、自分の店の土地は所有者から買ったものだ。
「具体的なことはこれから考えるけれど、ダークエルフの人たちには手伝うって伝えておいて」
「はい、分かりました」
話がまとまったところで、モモカが小さく息を吐いた。
「それじゃあ、他に用がないのなら私は休むから」
「もう大丈夫です。休憩に入るところで失礼しました」
俺は小さく頭を下げてそそくさと部屋を出た後、戸を閉めてからその場を離れた。
廊下を歩いて玄関に向かう。
予想以上に実りある結果になり、ダークエルフの人たちの喜ぶ顔が浮かんでいる。
ヒイラギはエスタンブルクと上手くやっているようなので、カルンに店を出すとしても順調に進みそうな予感がした。
バラムを発ってからは商人の娘であるフレヤ、弟子のシリルに店を任せっぱなしになっているが、今回の件がまとまるまではもう少しここにとどまろうと思う。
玄関で靴を履いてから、再びダークエルフの人たちのところに戻る。
早く伝えたい気持ちになり、自然と足の運びが速まるのを感じた。
先ほどの場所にたどり着くと休憩を終えた人たちが作業に戻ろうとしているところだった。
「皆さん、聞いてください――朗報です!」
こちらが声を張ったため、散らばるようになっていたダークエルフの人たちが次々と視線を向けた。
それぞれの表情から期待と不安が入り混じったものが感じられた。
「モモカさんが協力してくれるそうなので、カルンの街に店が出せそうです」
「……よかった」
数メートル離れたところにいるフレイが安堵するようにため息を吐いた。
そんな彼女に寄り添うように他の人がそっと肩に手を乗せた。
感情を露わにして喜ぶわけではないが、彼らが喜びを感じていることは伝わってきた。
囚われの日々から解放されて、自分たちの手で何かを始めようとしている。
それに向けて前進できたのだから、間違いなくうれしいのだろう。
皆の顔がやわらいでいくのを見て、俺も自然と頬が緩んだ。
大げさな歓声や拍手がなくても、この静かな喜びの波は確かなものだ。
誰かが小さく「ありがとう」とつぶやいた。
それは誰かに向けてというよりも、この先の未来に向けた祈りのようなものだった。
自分自身がダークエルフではなくとも、この場に居合わせたことに感謝したい気持ちになっていた。
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