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ドラゴンハンターの街タラスケスでお買い物がてら街を救う
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しおりを挟む翌日、ギルド本部前では、巨大ドラゴンの襲撃及び爆発事件に関し、説明を求めて多くの住民たちが集まっていた。住民らの呼び声に応じて現れたギルド長は、この度の防衛部隊の不在は自身の不徳の致すところであり、住民の皆様に対して深くお詫び申し上げますと頭を下げた。
また、ドラゴンが爆発した件に関しては、現在調査中だと説明した。
「しかし何も心配することはありません」
ギルド長カークランド・オーウェルは声を張り上げて断言する。
ここタラスケスは聖女タラの御霊が眠る場所。
ゆえに月の女神コヤ・トリカの加護を受けていると。
カークの演説を遠くで聞いていたアネーシャは、果たしてこれで皆が納得してくれたか不安だったが、
「そうか、それでドラゴンはこの街に入れなかったんだな」
「聖女は女神の娘みたいなもんだから」
「女神の怒りに触れて、爆発しちまったに違いねぇ」
「コヤ・トリカは気性の激しい女神だから」
「美人でおっかない」
「言えてらっ」
あははと笑い出す住民らを見、
――これなら大丈夫そう?
のほほんと考えるアネーシャだったが、当の女神様はなぜかご立腹の様子で、
『なんですってっ。あたしの目を見て、もう一度言ってみなっ』
「コヤ様、無茶言わないで。見えないし、聞こえないから」
『あたしのどこがおっかなっていうのよっ』
「そういうとこだと思う」
『アネーシャっ』
「ドラゴンを爆発させたりなんかするから」
次からは自重してもらいたいと小言を挟みつつ、よしよしと小熊姿のコヤを慰める。
「コヤ様はおっかなくなんかないよ。優しい女神様だよ」
『ううっ……もっと言って』
「よっ、絶世の美女。慈悲深き女神様っ」
『ありがとう、アネーシャ……もっと言って』
「口は悪いけど、情にもろいところもあるんだよ?」
『持ち上げて落とすのやめてくれる?』
…………
……
それからひと月ほど経って、仕事からシアが戻ってきた。
「おかえり~」
食堂でのんびりお茶しながら手を振ると、「お前見たらなんか力抜けた」と褒めてるのか貶しているのかよく分からないことを言いつつ、ぶすっとした表情で近づいてくる。
「……お前、太った?」
「シアは痩せたね」
『言っても無駄よ。この子にイヤミは通じないから』
「部屋に戻る前に何か食べていきなよ」
彼は頷き、当然のように向かい側の席に座る。
注文を取りに来た店員にがっつり肉料理を頼むと、料理が来るまでアネーシャのおやつを摘み食いしていた。いつもなら文句を言うところだが、今回は彼を労おうと皿ごと差し出す。
「意外と早かったね」
「ウルスさんが凄すぎて出る幕なかった」
口調は悔しげだが、以前に比べたら驚くほど明るい表情を浮かべている。
影のある暗殺者の顔は消えて、今や完全に新米ハンターの顔つきだ。
「もう全部片付けちゃったの?」
「とりあえず目に付くとこだけ……主にウルスさんが」
『ウルス、ウルスって、お前は恋してる乙女かっ』
「コヤ様、さすがにそれは言い過ぎ」
『だってアネーシャ……』
運ばれてきた料理を眺めながら、シアが不思議そうに口を開く。
「女神は何て言ってるんだ?」
「シアがいなくて、コヤ様も寂しかったみたい」
『ちょっ……やめてよっ。あんたの代わりなんて、いくらでもいるんだからねっ』
「戻ってきてくれて良かったって喜んでる」
そうか、と照れくさそうに笑うシアを見、罪悪感で胸が痛んだ。
「そうだ、シア。アミュレットができたから渡しとくね」
『ありがたく受け取りな』
デザインのことで文句を言われるかと思いきや、シアは何も言わなかった。
お揃いだよと言っても嫌な顔せず、黙って身につけている。
少しだけ嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか。
『ツンデレなんだから』
「そーゆうこと言わない」
もしかしたら彼にも仲間意識というものが芽生え始めたのかもしれない。
『でもまあ、坊やも戻ってきたことだし。ようやくこの街ともおさらばできるわね』
「コヤ様、気が早すぎ。少しくらいシアを休ませてあげてよ」
「俺なら平気だ。行くんだろ? メテオロス」
そういえばそうだったと、アネーシャは手を叩く。
のんびりしすぎて、次の目的地を忘れるところだった。
「何なら明日にでもこの街を出るか?」
「それは無理。荷物の整理があるからすぐには出発できない。部屋も片付けないと」
二人の呆れたような視線が突き刺さる。
『買い物のしすぎなのよアネーシャは』
「だって、こんなに長く滞在するなんて思わなかったし」
『言い訳しないの。ったく、無欲の聖女が聞いて呆れるわ』
「色欲の女神に言われたくない」
『なんですってっ』
結局、メテオロス目指して出立したのは、それから三日後のことだった。
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