帯刀医師 田村政次郎

神部洸

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第四話 北条忍術

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 堀田加賀守が手をポンと叩くと、先程まで人払いをしていたはずの廊下から、五人の侍がいきなり抜刀して二人に斬りかかった。
 政次郎は身体を転じて攻撃をかわすと、続く第二刀を抜刀した義光で弾き返した。そのとき善五郎はと言うと、持ち前の力強さのある剣で既に二人を気絶させていた。その二人の強さに、残りの侍は我先にと逃げ帰っていった。
「お主の命であろう」
もう一度政次郎は義光を加賀守の首にピタリと付けて聞いた。
「私の命による仕業に御座います。」
加賀守は自らの命であったと認め、今後を誓った。
 事は済み、堀田加賀守の屋敷を出ようとしたその時、政次郎の足元に一つの手裏剣が突き刺さった。もちろんそれに気付かない田村政次郎ではない。すぐに振り返り、手裏剣の持ち主を探した。すると屋敷の屋根に、黒い忍装束に身を包んだ一人の男がいた。
「田村政次郎。勝負!」
その男は忍刀を抜刀し、政次郎に斬りかかった。政次郎は身体を使って忍刀をよけると、左手に隠していた隠し刀で相手の首筋に狙いを定めて打ち込むが、忍は振り返り、刀を手裏剣で受け止めた。
 両者は間合いを空けた。政次郎は義光を上段に構えると、忍は連続して突きを繰り出してきた。しかしそれは見せ技で、本気の突きではない。忍が刀を突ききったところを目掛けて義光を振り下ろすが、なぜかその義光は空を切る。
「今日はここまでだ。田村政次郎。また追って連絡をする。」
忍はそう言うと、何処かへ去っていった。政次郎が善五を見ると、彼に刀を向けていた侍達を倒しきっていた。
 二人はそれからは何事もなく家へ帰った。


第四話  北条忍術  完
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