青と虚と憂い事

鳴沢 梓

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序章

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僕が彼女のことを知ったのは、ふと見かけたネットの動画だった。
なんてことない、暇つぶしに動画サイトを漁っていただけだ。
それはたった3分程の、バンドのライブ映像だった。

まず目を惹かれたのは、ステージの真ん中に立つ少女。
吸い込まれそうな青色の髪がふわふわと宙を舞う。
今にも崩れ落ちそうな細い身体から、掠れた歌声がライブハウス中に響く。
決して力強いとは言えないのに、芯は通っている、何かを訴えかけてくるような、まるで歌う事で自傷しているかのように激しく、辛そうな表情でその少女は精一杯歌っていた。

『うわ…』

若干僕は引き気味だったかもしれない。無意識に声が漏れた。
でも僕は間違いなく、そのわずか3分たらずの歌声でその子に魅了されていた。

彼女がボーカルを務めるバンドはRecollection、という。
僕が初めて見つけた日には、既にデビューしてから1年ほど経っていた。
世の中を掻き回す程ではないが、バンド好きの中ではかなり有名で、ファンも多いバンドとなっていた。
音楽やアーティストにハマってライブに行ったことなど一度も無かったが、気づけばライブのチケットを手に入れてしまっていた。


なんてことはない、暇つぶしから見つけた動画から入っただけだ。
そう思っていたのに。
生で見た彼女は、あまりにも綺麗だった。
そして誰よりも、苦しそうで消えそうだった。


彼女はRecollectionのボーカル、Aoi。
Aoiさんはわずか18歳でそのステージに立っている。
彼女には音楽をやり続ける特別な理由がある。

Aoiさんは記憶喪失だった。
彼女は、自分の記憶を取り戻す為に、今日も歌い続けている。
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