私の白雪姫

西園寺アリサ

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私の白雪姫

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「鏡よ鏡、この世で一番美しいのはだあれ」

「それは、お妃さまあなたです」

「ふふっ」
お妃さまは、嬉しそうに笑います。

この、喋る鏡は魔女から譲ってもらったものです。

このときのお妃さまは、まだ二十歳。

髪は、黒く艶やかで、天使の輪がある美しい髪をしていました。

瞳の色も黒く、どこかエキゾチックな感じに見えます。

身長も高く、スタイル抜群です。

お妃さまは、褒められるのが大好きで、パートナーの王さまや友人、知人、使用人まで、
「私って美しいかしら?」

「お前程の美貌を持った女に出会ったことがない」

「王さまを仕留めることができるくらいなんだから、一番綺麗よ」

「お妃さま程の美しい人に出会ったことがございませんよ」

皆口々にお妃さまを褒めていました。

鏡には、一日に何度も美しさの確認をしていました、

それから、二十年が過ぎて、お妃さまは、変わりなく鏡に問いかけます。

「鏡よ、鏡この世で一番美しいのはだあれ?」


「ー」

鏡は、答えません。

お妃さまは、もう一度聞きます。
「鏡よ、鏡この世で一番美しいのはだあれ?」


「ー」

「あら、壊れてしまったのかしら?そうよね、もうかなり古くなっているものね」

お妃さまは、使用人を呼びました。

「この鏡を処分して頂戴」

長く働いている使用人たちは、この鏡が魔女からもらったものだと知っているだけに、

「無理でございます。魔女本人に返した方が良いかと思います」

「もう昔の話になる、魔女も忘れているわ」
そう言うと、ボンッと音がして魔女がお妃さまの前に、姿を現した。

「わたしの鏡が壊れるなんてことあるわけないだろうね」

すると、魔女は鏡の前に立ち
「鏡よ鏡この世で一番美しいのはだれじゃ、名前を言え、姿を鏡に映せ」

すると、

「この世で一番美しいのは、白雪姫。白雪姫が一番美しい」

鏡には十六歳の誕生日を迎えたばかりの少女、白雪姫が映し出された。

お妃さまは、カッとなって燭台で鏡を割ってしまいます。

「鏡を割るほど、見たくないのじゃな」

「違います、そんなんではありませんわ」

お妃さまは、焦ります。
ただ、いつものように、自分の美しさを褒め称えて欲しかっただけでした。

お妃さまは、もう四十歳になります。
髪の毛は、白髪が混じり、口元のほうれい線は、濃くなっています。
オデコや目尻にシワがくっきりみえます。

「老化というものは、年を追う毎に進むものさ」

「いや、そんなのいやよ。第一白雪姫って女はどこの誰?」

「なんじゃ、そんなことも知らんのか、第三婦人の娘じゃよ」

「第三婦人と言えば、十数年前に亡くなった女の、、、、」

「その娘が育ち成長し、美しくなったという訳さ」

「そんな」

「お前さんは、私の鏡を壊した報いとして、この白雪姫を○れば鏡の件は、許してやろう」
そういうと、籠に入っているリンゴ数個を渡して来ました。

「これを白雪姫に食べさせてみるがいい」

「これは、まさか?」

「食べさせれば分かることさね」

緊張で眉間のシワが濃くなっています。

「分かりました、やりますわ」

白雪姫は、毎日森の中に入ります。森には小人族が住んでいて、いつも一緒に歌を歌ったり、ご飯を食べたり、お昼寝したり、家族のように過ごしていました。

お妃さまは、フードを被り、マントをはおって、白雪姫を着けました。

一軒の小さな家に入るのをみました、

窓から覗いてみると、小人は、七人いました。

「じゃ、ワシらは出かけてくるから、掃除たのむで」

「はい、行ってらっしゃいませ」

お妃さまは、今日は、見るだけにしようと思っていましたが
(これは、チャンス。今しかないわ)

お妃さまは、フードを深くかぶり、窓を数回叩きました。

「あらっ?誰かいらっしゃるのかしら?」

お妃さまは、声色を変えて
「私は、リンゴ売りでございます。どうかひとつで良いので買ってください」

「まあ、美味しそうなリンゴね」

魔女には、白雪姫にリンゴを選ばせるように言われていました。

「味が微妙に違うので、美味しそうなリンゴを選んでください」

お妃さまは、知らなかったのですが、ここにある六個のリンゴは、ロシアンルーレットではないですが、食べると、それぞれ違う味と効果がありました。

魔女も白雪姫がどれを選ぶか、割れた鏡から見ていました。

①のリンゴは、食べると老化が早くなるリンゴで、食感は、パサパサしていました。

②のリンゴは、食べると不老不死になるリンゴで、青リンゴで、少し酸味が強いです。

③のリンゴは、食べると体が小さくなり、小人のような体型になるリンゴです。甘さが強いリンゴです。

④のリンゴは、食べると性別が、変わってしまうリンゴです。蜜がありとても美味しいリンゴです。

⑤のリンゴは、○んでしまうリンゴです。一口食べると、痺れが全身に回って味はわからないまま○んでしまいます。

⑥のリンゴは、同性しか愛せないようになってしまうリンゴです。シャリシャリといい音を立てて食べれます。

「リンゴ売りさん、これ全部買うわ」

お妃さまは、少し動揺しましたが、籠ごと白雪姫に渡すと、全力疾走で帰りました。

白雪姫は
「お代も受け取らないなんて、ちょっと変な人ね」

白雪姫は、小人たちにもリンゴを食べてもらおうと思って、六個も買いましたが、少し心配だったので、

「そうだわ、味見してみましょう」

そう言うと、リンゴ二個えらぶと、果物ナイフで切って一口食べます。

「ん~蜜が多くて、美味しいわ」

もうひとつのリンゴも、果物ナイフで切って、一口食べました。

「あら、こちらも美味しいわ、シャリシャリと歯ごたえが良いわね」

白雪姫は、ふたつ味見したところで体に違和感を覚えて、立っていられなくなり、ベッドに横になると、気絶したように深い眠りに入りました。

白雪姫は、夢を見ていました。深い海の底に、立っている自分がいました。

深くて、暗くて、ぬるっとした何かが、時折ぶつかって来ます。

(あっ、私夢を見ているんだわ)

そこへ、人間がやって来ました。

ジェスチャーで、上に上がろうと言っているようです。

ゆっくり、引き上げてもらいました。

海の底は、暗かったけど、何故か優しい気持ちになれて不思議な感覚でした。

(まあ、夢だしね)

先ほどの男性は、ウェットスーツを脱ぎはじめました。

「君も着替えた方がいいよ。海底で冷えただろう」

「何をするおつもりですか?」
白雪姫は、服を脱がそうとする男性の手を叩きました。

すると、男性は、爆笑しています。
「きみは、何処かの貴婦人かい」
また、笑っています。

白雪姫は、自分の体を見てビックリです。
「えっ、まさか、そんな」
白雪姫は、驚きのあまり気を失ってしまいました。
(あっ、これ夢だった。)
白雪姫は、安心しました。

そして、また眠りに入って行きました。

白雪姫が眠り始めて二日たちました。
小人たちは、心配で交代しながらお世話をしています。

更に三日たった日の夕方に、狩りをしていて道に迷った三人の男性が、小人の家にやって来ました。

男性たちは、一晩泊めて欲しいと頼んで来ましたが、小人たちは、白雪姫が目を覚まさないので、断っていました。

「隣の部屋に秘密がありそうだな」
そう言うと、小人たちが止めるのも聞かず、ズカズカと部屋に入りました。

(誰かが寝ている)

なんとなく、寝顔を覗いてみると、その寝顔から視線を外すことが出来なくなりました。

(男♂だよな、こんなに綺麗な姿をして、間違って男に産まれ来たんだろうな)

更に良くみてみると

(この前、海で潜ったときに、現れた男の子に似ているな)

でも、その男の子は、目を離した瞬間に消えてしまい、何かに化かされた感じでした。

そんなことを考えていると、小人の制止を振り切って、二人もこちらの部屋にやって来ました。

「バカ、こっちは病人が寝ているだけだ。来るなよ」

余計に興味がわいたようで、
「どれどれ」
二人も顔を覗き込みました。

「男だよな?」

「スゲー美人」

こうなったからには、小人たちも三人の男性に数日前から目が覚めないこと、実は女性であったことを話しました。

「なあ、こんなときは、王子さまのキスで目覚めるって決まりがあるじゃないか」

三人とも、貴族でした。

あとから来たうちの一人が、
「はい、カミングアウトします。オレゲイだから」

もうひとりも、
「オレも、カミングアウトする。オレはバイなんだよ」

「それがどう関係あるんだ?」

「女性としても、男性としても愛せる自信があるということさ」

「いや、オレがする」

二人が揃って
「なんでだよ、お前が一番ないわ、ノンケだろう」

そりゃ今までは女性しか愛せないと思っていたが、
「この子は、特別なんだよ。海に行った話をしたろ、出会ったのはこの子だ」

七人の小人と三人の貴族が話し合った結果、ノンケの男性が試してみることになりました。

「白雪姫、オレがこの先何年も幸せにするから、目を覚ましておくれ」

ノンケの男性が白雪姫にキスをしました。

瞼がピクリと動くと、深く息を吸い込みました。目があくと、白雪姫はノンケの男性を見つめます。

「ずっと、眠りについていましたが、皆さんの声は聞こえていました」

「目覚めることができて本当に良かった」

「あなたは、女性に戻れない私と生涯を共にしてくださる覚悟は出来ていますのね?」

「神に誓う」

そこから、数日宴会が始まりました。

ことの顛末を魔女は、面白そうに見ていました。

「お妃よ、美しい女性は、これからも産まれて来る。そして自分は、年を取り老婆になる。これが普通の当たり前のことじゃよ」

「そんな、では、私魔法で若くしてください」

「栄枯盛衰、わからんか、もう会うことはなかろう。さらばじゃ」

そう言うと、魔女は、姿を消しました。

そして、白雪姫は、結婚しました。もちろんノンケの男性とです。

その後、白雪姫は幸せにくらしました。





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