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追放と新パーティ編

7.森の泉でエルフ幼女とおはなししてなさい

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 光を抜けると、森と大きな泉の前に出た。
 泉には霧がかかっていて先は見えないが、とても大きそうだ。
 今は昼に近いはずだが、濃い霧のため薄暗い

 さっきまでいた森と似ている気がするが、生えている木や植物に見覚えが無い。

「どこだここ?」
「ここはね。エルフだけが住む森だよ」

 エルフ幼女が答える。
 ハティは青いワンピースのしわを伸ばすのに必死だ。

「森の外はどうなってるんだ?」
「森の外? 知らない。行ったことないもん。だからね。お外に行ってみたくてこっそり光の門を使ったの」

 エルフ幼女はえへへと笑う。
 ここがどこかあまりわからないが、すぐに戻ったらナックルベアーに会いそうだ。
 ここで時間潰すか。

「そうか。じゃあ、俺が外の世界がどんなところか教えてやるよ」
「えっ!? ほんと? やった。お兄ちゃんはいい人だね」
「おう。俺はいい人だぞ。じゃあ、まずは何から話そうかな……」
「あたし勇者様のこと知りたい。世界を救う勇者様!」

 俺は地面に手を当てたが、獣の気配を感じない。ここは安全な場所のようだ。
 話すのに邪魔だからリリアンを下ろし、俺はアレンパーティにいた時の話を少し盛りながら話し始めた。



 ――――



「そこで俺は言った。『そこまでだ!』ドラゴンの前に立った俺へ仲間たちは希望のまなざしを向けていたな」
「わー。お兄ちゃんすごい。勇者より強いの?」

 エルフ幼女からのキラキラした目が眩しいぜ。
 俺が魔法使いも強いってことを話していると、ハティからぐ~~って音が聞こえてきた。

「エルク。このままお話しするのもいいけど、ご飯を食べながらお話ししてもいいと思うの」

 さっきまで泉でバチャッバチャ水遊びしていたハティが、お腹を押さえて言ってきた。

「そうだな。飯にするか」

 と、俺が立ち上がってハティの荷物をあさり始めた時。
 何かが走ってくる音が聞こえた。

「ケケケ。エルフ見つけた~」

 黒い魔物がエルフ幼女へ迫る。
 俺は地面に手をつく。

「落ちろ。アースフォール」

 魔物の前に落とし穴生み出すが、飛び越えられ、速度をゆるめることもできない。
 魔物は両手にムチを持ち、片方のムチをエルフ幼女へ振るう。

「ケケー。エルフ捕まえたぁ」
「やめろ。アースウォール」

 エルフ幼女の前に土の壁を作り、エルフ幼女を守る。
 しかし、あっさり壊されてエルフ幼女を捕まえられた。
 エルフ幼女の悲鳴が響く。

「特にうまそうなエルフだな。ウケケ。俺はツイてる」

 魔物。よく見ると中級悪魔のバルログだ。
 残虐な性格で人を好んで食べ、特にエルフが大好物だったはず。
 銀級のパーティくらいの強さだ。当然俺1人じゃ倒せない。

「邪魔するなニンゲン」

 バルログはエルフ幼女を捕まえていないほうのムチで俺を打とうとする。
 俺は地面に手をついたまま。

「縛れ。アースバインド」

 バルログの足元から土をロープを伸ばし、動けないようにする。
 ムチは途中で振るえなくなり、俺へ届かない。
 バルログはイラついた声を出す。

「邪魔をするなと言った。ニンゲン」

 バルログが無理やり土の拘束を壊そうとし、ヒビが入って壊れそうになる。
 しかし、俺は魔力を込めてヒビを直す。

 倒せなくても、動きを押さえるくらいなら俺にもできる。

「おい。幼女。逃げれないか」
「うぇぇん。動けないよ! 助けてお兄ちゃん」
「逃がすかエルフ。こんな魔法ぶっ壊してすぐ食ってやるからな」

 俺が魔力を込めて押さえ続けるが、いつまで魔力が保つかわからない。
 すると、ハティが走ってバルログへ向かっていく。

「放しなさいよ悪魔!」

 ハティがバルログの頬を殴る。

 ドカッと音がしたが、あまり効いていないようだ。バルログの怒り声がうるさい。
 これじゃ、ただイラつかせただけだ。

「バカ! 何やってんだ。お前も逃げろ」
「大丈夫よ。エルクはもう少し頑張んなさいよね」

 ハティは自信満々にニカッと笑い、エルフ幼女に絡まったムチを外しだす。

「混ざりモノが俺をコケにしやがって! お前も食ってやる」

 バルログの抵抗が強まる。
 俺はさらに魔力を込めていると、後ろから大きな魔力を感じる。

 バルログは俺の後ろを見た後、なぜか抵抗が弱まる。
 そのスキにハティはエルフ幼女のムチを外して離れる。

「いでよ。我が黒きドラゴン」

 リリアンの声が聞こえ、バルログが呆然とする中、俺は振り返る。

 杖を上に向けて立っているリリアンの横に、家ほど大きさの黒く禍々しいドラゴンが立っている。2本の角と大きな翼、鋭い爪を持つ前脚、目だけを青色に光らせている。ドラゴンの周囲は黒いオーラがあふれ出ており、口からは毒々しい漆黒のケムリが漏れている。

 本能でわかる。こいつには誰も勝てない。
 ただ、よく見ると頭に赤色のリボンをつけている。
 ん? メスのドラゴン? お洒落さんしてんのか?

 黒いドラゴンが口を開けた瞬間。
 何か魔力の塊を打つと予想し、俺は横へ飛ぶ。

 ドラゴンの咆哮と共に、口から漆黒の光が放たれ、バルログへ突き刺さる。
 黒き光はバルログを貫通した後、森の奥へ消えていく。
 バルログがいた場所には何も残っていなかった。

 ドラゴンつえー。
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