超空想~異世界召喚されたのでハッピーエンドを目指します~

有楽 森

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冬に咲く花

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「どう?感じる?」

 孝宏にはその言い方が意地悪く聞こえた。

 カダンにしてみれば、ちょっとしたお遊びなのかもしれない。

 揶揄っているだけのつもりかもしれないが、魔術が使えないことに対して真剣に悩んでいる孝宏としては面白くなかった。

 だがそれも自身に余裕があればこそ、腹を立てられるというものだ。


「すごく……熱い」


 孝宏は息も切れ切れで、その表情は苦悶に歪み涙が滲む。


「でも……こんな……どうして……」


 どうして、こんなにも息苦しいのか。


 震えていたかもしれない。

 孝宏は顔をうつむけて歯を食いしばり、呼吸を整えようとしたが、上手く息が吸えず浅く早くなっていく。

 苦しさが増し、大粒の涙がむき出しの地面に黒いシミを作っていく。


「俺の魔力をタカヒロの中に流してるんだよ。タカヒロからすれば異物、だからね」


「魔力……て、これ?……熱い……苦し……よ」


 カダンの飄々とした物言いは、苦しいだけの孝宏からすると、あまりにも違い過ぎてどこか遠く、例えばテレビの向こうでの出来事の様に聞こえる。

 彼は今、本当に自分と同じ時間を共有いているのか疑問になってくる。

 しかし、カダンは自分の為にしてくれていると思えば、孝宏も止めて欲しいと言い難く、結局自分がいかに辛いか強調しただけに留まった。

 孝宏の控えめな自己主張は、カダンには通じなかったのか、軽く的外れな答えが返って来た。


「そんなに熱いの?まあ、魔力によるかな。多分俺のは特殊だから……かな?でも解りやすいでしょ?」


 そう言ったカダンの口調は、やはりすこぶる軽い。だが彼の言う通り、確かに言うと通りに解りやすかった。

 それは生きて意思を持っているかのように、あっちへこっちへ動き回った。あげくには骨の髄までも焼かれているようだ。

 関節がじりじりと痛み、一瞬全身の皮膚の表面を熱が走った。


(アレ?なんだろう、この感じ……)


 孝宏の脳裏に何かがかすめた。

 はっきりと思い出せないが、最近よく似たことがあったような気がする。魔力の誘導などしてもらうのは初めてなのだから、おぼろげな記憶の相手はルイでもカウルでもない。

 考えている間も熱はますます孝宏を内側から焼いていった。


「普通はもっと穏やかなんだ。ほんのり暖かくてね、心地よい位なんだよ。逆に魔力がなくなると、すごく寒くなる。体が冷えて動けなくなるよ。限界まで使っちゃいけない」


「何か……似た……話を聞いたような……血、だ……かな」


「そう言えばそうだ。案外関係あるかもしれない。さてと、次はタカヒロの魔力を一気に引き出すよ」


 カダンが舌先で唇を湿らせた。握り合った掌を合わせたまま、一度広げて強く握り直す。

 じっと静かに、呼吸すらも抑え、瞬きもせず、焦点の合わない視線で何かを探っているようだ。足へ、頭へ、それから流れるように首から胸へ、視線が移動し腰の辺りで止まった。


「見つけた」


 カダンが聞こえないほど小さく、低い声で呟いた。

 孝宏はカダンが何と言ったのか聞き取れなかったが、しっかり一点に定まった視線に、ようやく終わるのかもしれないと、内心安堵していた。

 だがそれは孝宏の全くの早とちりで、実際はここからが本番だったのだ。


「な!?に……!?」


 熱いどころじゃない。お腹の奥から両手の先まで、骨から皮膚まで激しく痛み、裂けてしまいそうだ。

 ズルっと腹の中から這い出す何かが、警告のように心臓を打ち鳴らす。


「カ、カダン、嫌だ。……これ、気持ち……悪い……」


 痛みが腹の中で暴れ、内蔵を蹴り上げ握りつぶす。胃から逆流した苦いモノを堪えて前のめりに屈んだ。


(熱い熱い熱い熱い……これは……嫌だ!)


 今度こそ体を支えきれずに膝から崩れ落ちた。


 繋いだままの手に引かれ、カダンも前のめりに倒れそうになりながらも、孝宏を支えるため咄嗟に片手を解き孝宏を抱き留めた。


 一瞬にして全身が骨まで焼ける恐怖が蘇り、脳裏に張り付いた。忘れるなど出来そうもなく、孝宏にはもう抑えられなかった。


 掌で痛みが破烈した気がした。


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