超空想~異世界召喚されたのでハッピーエンドを目指します~

有楽 森

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冬に咲く花

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 きっかけはたぶん竜人たちだと思う。

 カダンが家を出たすぐ後に、タカヒロが竜人たち襲われたんだ。

 小さい体なのに早いし、正直俺は相手できる自信ないな。

 タカヒロ探してたら襲われかけて……けっこう怖かったな。タカヒロなんて傷だらけで火だるまだし、やばいってかなり焦った。

 でもその時じゃないか? タカヒロが鳥の炎を操る術を覚えたのって。実はあの後練習しているの見たんだ。まあ、それは置いといてだ。

 結局あいつらの誤解は解けて、帰って行ったんだけど、帰り際に一つの水の玉を置いて行ったんだ。

 初めは何の変哲もない水晶玉かと思ったんだが、しばらく眺めていると、玉の中にいくつかの文字が浮かんできてな。でも俺にはさっぱり読めなかった。どうやら異世界の文字だったみたいだな。









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 確かに地球の文字だった。

 異世界に来てまで、まさか地球の物を見るとは思ってなかったから、まさに度肝を抜かれたって感じ。

 確かいろんな国の文字が混じってて、漢字もあったけど、それだけじゃ意味は分からなかった。

 そんで鈴木さんも、他には英語しか読めなくて、でもマリーが全部読めたんだ。

 すっげーよな。マリーってロシア語だけじゃなくて、英語とフランス語とドイツ語が喋れるんだって。

 中国語も読めるみたいだし、かろうじで英語が読める俺とは大違い。マジすげぇ。

 マリーになんて書いてあるのかって聞いたら、「読め、これは力が…いえ、違うわね。たぶん《読めた者に力を与えよう》ってとこかしら?」って言うんだ。

 そしたら水玉がユラユラって崩れてさ、フワーってマリーの中に吸い込まれて消えた……ように見えたんだけど。

 でもそれだけで、他は何もわからなかった。

 ルイが部屋に籠って色々調べてたみたいだけど、結局何もわからないままで、町を出発したんだ。







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 確かにびっくりしたよ。僕もあんな物初めて見たからさ。

 どの本を調べても、どちらの力の記述も見つからなかった。どうしてカダンは凶鳥の兆しなんて知ってたんだよ。

 どっちも力の片鱗が見えたのは、検問所で襲われた時だよ。

 襲ってきた獣は間違いなく魔法を使ってた。自分の周りに結界を張って、そうして魔法から身を守ってたんだよ。かなり強力な結界だった。

 僕の魔法どころか、宮廷魔術師の魔法もまったく効かなかったんだから。
 兵士たちだって、あんまり傷つけられてなかったしね。

 でもタカヒロが撃ち込んだ火の槍が、獣の結界を傷つけて弱めて、それからマリーの剣が、完全に破壊した。

 僕は自分が見た光景が信じられなかったよ。でもそれでようやくカダンが言っていたことの、本当の意味が分かった気がしたよ。





*************************



 
 あの水の玉にはいろんな地球の文字が浮かんでて、本当はもっと長かったの。

 皆に伝えたのは意訳。わざわざ違う言語を、一つの文章にして長々と書いてあったんだけど、要約すると大体そんな意味。

 あと関係ないけど、私はあんな気取った喋り方をしないから。

 私の中に水の玉が吸い込まれて、初めて剣を握ったのは検問所で襲われた時ね。

 自分が普通じゃないのはすぐにわかった。だって妙な感じがしたもの。

 私武器屋で安い剣を買ったのよ?もちろん自分で手入れはしたし、研ぎ直してもらったけど、あそこまで切れ味が良くなるはずないじゃない。

 その剣を握った瞬間、手元から鈍い艶が刃先まで覆ったの。

 きっとどんな鋭い刃物よりも切れる剣ね。獣を切り裂くのも、思っていたよりずっと楽だったもの。これほど簡単なものかって、正直怖いくらい。

 他には特に変なことはないかな。

 でも水の玉に地球の文字が浮かんだってことは、やっぱりこの世界、地球と繋がってるのね。私は会ってないけど竜人っての、聞けば帰れる方法が見つかるかも。






****************************


「今の話を聞くとますますこのままではいられない。どうして隠したものか」


 牛車の中、ランタンの明りの下でカダンが言った。

 運んできた荷物はすべて軍に渡し、車の隅に自分たちの旅の道具が、詰まれるだけになった。

 広くなったはずが、五人も集まるとそうでもない。

 カダンが聞きたがったことはすべて話した。隠さなければならないというカダンに対し、マリーは今一ピンと来ない様子だった。

 マリーが何がいけないのかと尋ねると、カダンは孝宏の時と同じく答えた。


「孝宏は呪文を唱えてるふりでもすれば良いけど、私の剣は隠しようがないじゃない。開き直るしかないと思う。これはただのすごい剣ですって。後は私の腕が良いからだってね」


 マリーが立てかけた自分の剣を、指先でつついた。


 カチャカチャ音を立てて揺れるのだが、古ぼけた剣はとても切れ味が良くは見えない。たとえ信じてもらえたとしても、奇妙な人物には変わりない。

 難しいのではないか、孝宏がそう言いかけた。


「それ案外良いかもしれないよ?」


 孝宏と反対に、ルイがマリーの案に乗った。


「まあ、とりあえず何か別の武器を持ってみて?」


 ルイは自分の術式がいくつも彫り込まれた短剣ではなく、孝宏の短剣をマリーに持たせた。

 すると古ぼけた剣を持った時と同じく、短剣の刃は艶やかな光沢を放ち、刃を鋭く尖らせた。

 それは切先がかすめただで、車の木枠に深さ5・6ミリはあろうかという、傷痕をくっきり残すほどだ。


「やっぱり思った通りだ。マリーの力は武器を選ばないんだよ。これならごまかしようがある」


 ルイの考えはこうだ。

 まずマリーの持つ剣の鞘や鍔、刃そのものに、術式を掘り込み、魔剣に仕立て上げる。

 出来ればいくつかのパターンを試して、一番具合のよさげな剣を持ち歩く。

 そうすれば、異様に切れ味のよい古ぼけた剣も、魔剣であれば多少の違和感も見過ごせるだろうというものだ。


「大事なのは、マリー自身から目を反らすこと。だから、剣の方を飾っちゃえばいいんだよ」


 剣を細工するルイの負担が大きいが、本人の言い出したことだ。

 ルイはカダンにも手伝ってもらうつもりだったらしいが、結局はうやむやに流れ、ルイはすべて一人で細工するはめになった。


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