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5歳
家族1
しおりを挟むコンコン
「はーい」
「失礼いたします。」
部屋に入り俺にお辞儀すると、黒いボブの髪を揺らしながら歩いてくる彼女はメイドの長谷川 美紅さん。俺付きで身の回りの世話をしてくれている。多分20過ぎ位で凄く美人だ。
「優様、もう少しで夕食のお時間ですのでお着替えいたしましょう」
女の人に着替えさせられるのが未だに慣れない。
1度自分でしたいって言ってみた事がある。言ってみたものの、服が複雑で1人で着るのが難しく途中で断念した。
「みくさん、今日はだれがいるの??」
「…今日は奥様、そして御兄弟様全員がいらっしゃいます。旦那様は仕事でまだお帰りになっておりません。」
この家の夕飯は家族みんなでが決まりだ。誰かが欠けていてもダイニングルームへ集まりご飯を食べるのだ。
俺がこの部屋を出られるのはこの夕食時のみ。トイレやお風呂、洗面所もこの部屋にあるから全てこの部屋で済ませられる。だから唯一の気分転換が夕食時なのだ。
…もうここまで来ると軟禁じゃないか?
いや、考えるのはやめておこう。
ふと思った。こんな豪邸に住んでいるのだから父は相当稼いでるのだろう。今更だけど父がなんの会社で働いているのかを全く知らない。
「ねえねえみくさん。父さまってどんなおしごとしてるの??」
少し驚いたような顔をして俺を見ている美紅さん
「旦那様がお帰りになられた際に優様が直接旦那様にお聞きになる方がお喜びになると思いますよ」
と嬉しそうに微笑んで俺を抱き上げて食堂へと向かった。
…とりあえず下ろしてくれないかな…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
やっぱりこの部屋には慣れないな
前世で知っている物より倍大きい細長いテーブルがこの大きい部屋にすっぽり収まっている。少し小さく思えてしまう程に。
そんなテーブルの奥の方に座っているのは先に着いていた母様だ。
「あら優ちゃん!今日は早いわね!待っていたわ私の可愛い可愛い優ちゃん」
俺に駆け寄るとチュッと頬にキスをし、抱きしめてスリスリしてくるのは俺の母親で有栖川 サクラ。
少し日本人離れした容姿は、流暢な日本語を聞くと日本と外国のハーフなのかもしれない。
顔立ちがハッキリしていて二重で鼻が高く、胸まである少し明るい茶髪をふんわり巻いている。痛みを知らなそうな髪の毛は天使の輪っかが光っていた。
いくら若くても兄弟の年齢からすれば30歳は超えているはずなのに全く見えない。正直20と言われても信じるかもしれない。
「か、かあさま」
「あらあらごめんなさい。つい可愛くて」
愛しそうに俺を見る母様。
やっぱりめちゃくちゃ美人だ…
……これは男のロマン男のロマンみんなしたいと思ってる……神様ごめんなさい!!!
心で神に土下座しながら俺は母の大きな胸にダイブした。
「母さまだいすきです!」
色んな意味で!!!!
すぐに離れて上を向き上目遣いでにっこり笑う。
「きゃぁぁぁ優ちゃん可愛すぎ!」
凄い力で抱きしめられ、また天国へとダイブする。
あぁ。幸せだ……前世では経験出来なかった夢が叶った…もう未練はないっ!!!!
「お母様。優が苦しそうなのでそろそろ離してあげてください。」
そんな天国に水を差したのは次男の、有栖川 月都だった。
優しい茶色の髪の毛に二重の切れ長の目、そして高い綺麗な鼻…まぁあただのドのつくイケメンだ。確か年齢は俺の9歳上で14歳。中学校に通っているらしい。
「あらほんとだわ!優ちゃんごめんね」
名残惜しく母様から離れると後ろから脇に手を入れられ途端宙に浮く。
「ねぇ優。…そんなにお母様がいいのかい?」
耳元で甘い声が囁かれる。
少し冷たい声にビクッと震えた。
クスッ
「冗談だよ。さ、席に座って他を待とうか」
俺を席まで抱きかかえて下ろし、頭を撫でて自席へ戻って行った。
いやいやいやいやいやあれ絶対冗談じゃないでしょ声がまじだった。あれはまじだった。
1年位前の夕飯で嫌いな茄子が出てきた時、いつものように目を盗んでポケットに入れて自室のゴミ箱に捨てたのだが、それを月都に見られてしまっていたのだ。4歳の俺には大誤算だった。
「ねぇ優。いつもそんなことしての?」
と問いかけてくる兄の目は笑ってなかった。
その後散々家族に怒られたのだが、
今考えると、良く何回も成功したなと思う。子供の悪知恵というものは凄い。
そうその時と声が同じだったのだ。
まじで怖い。この兄が1番怒らせてはダメな人なのかもしれない。
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