転生少女は海賊の愛を得る

Ariasa(ありあーさ)

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 最初にお酌をしに行ったのは、近くで飲んでいたデュオだった。
「デュオさん、どうぞ」
「ありがとうございます。素敵なお嬢さんに注いでもらう酒は特別美味しいですからね。嬉しいですよ」
 流れるような動作で腰に手を添えて抱き寄せるデュオに、アリアナは体を硬直させて油の切れた機械のようにギギギッとデュオの顔を見た。その様子を見たデュオはクスクスと笑いながらアリアナの耳元に口を寄せて「初心ですね」とささやいた。
「でも、安心していいですよ。私もまた、ロゼを愛している一人ですので、私からあなたに手を出したりはしません。まあ、アリアナが上手に私を誘惑することが出来れば、乗りますけどね」
 たっぷりの吐息と色気をまとわせて挑発するデュオに、アリアナは耐えきれず「ひぃっ」と耳を手で押さえて顔を真っ赤に染め上げた。アリアナの様子にデュオは楽しそうにその顔に笑みを浮かべて腰に添えていた手を退けると何事もなかったかのように酒を口に含んで味わったのちに喉の奥に流し込む。
「まあ、身の安全は保障するので、困ったら私の部屋に来てもいいですよ。ネオの部屋でもいいのでしょうが、ロゼの機嫌が悪くなった時に八つ当たりされるのも嫌でしょう?」
「え、八つ当たり?」
「あの通り、二人は夫婦のごとく愛し合っていますからね。そして、ロゼはとても独占欲が強く嫉妬深い。ネオの許可があったとしても、ネオの部屋で寝れば少なからず反感は買うでしょうね。なので、あまりオススメしませんよ」
「そうなんですね……」
 デュオの言葉にアリアナは落胆の色を隠せずにシュンと肩を落とすものの、すぐにハッとデュオの顔を見た。
「だから部屋に来てもいいって言ってくれたんですね。ありがとうございます!」
「えぇ、まあ他にも泊めてくれる人はいるでしょう。気に入った人の所に行くと良いですよ」
「はい!」
 アリアナは笑顔で元気よく返事をすると、ぺこりと頭を下げて次の人の所へ行った。
 次に行ったのはジゼルの所だった。ジゼルはアリアナがこちらに来るのを確認するとあからさまに嫌そうな表情を浮かべたが、ロゼがアリアナの様子を観察している手前、邪険にすることも出来ず隣に来たアリアナを黙って受け入れた。
「あの…ジゼルさん、お酒をお注ぎしますね」
「ん」
 残っていた酒を一気にあおり、アリアナの方を見ることなく杯を差し出すジゼルに、アリアナは少し緊張しつつ酒を注いだ。
「…俺の部屋には来るなよ。女が俺の部屋に入るなんて、ロゼ以外ありえない」
「分かりました。では、失礼しますね」
 ここまではっきりと断られると清々しいもので、アリアナはぺこりと頭を下げて次はティタとティオンの所へ行った。
二人は食べ終わった皿を片付け始めており、大量の皿を隅の方に移動させていた。
「お疲れ様です。その、よければお酒を注がせてくれませんか?」
「え、良いの? じゃあちょっと貰おうかな」
「ありがとう、俺ももらっていいか」
「もちろんです」
 笑顔でアリアナは答え、適当な杯を取り出した二人に酒を注ぐと、二人はチンッと杯を合わせて一気にあおった。
「うん、綺麗な人から入れてもらったお酒はやっぱり美味しく感じるね」
「そうだな。特別な感じがする」
「そんな真面目な顔で言われると照れちゃいますよ」
 テレテレとはにかんだ笑顔を浮かべるアリアナに、二人はアリアナの両脇に立って同じ顔でニッと笑うと耳元で囁くように誘いの言葉をアリアナに贈った。
「俺たちの部屋は同じだからもし来てくれるなら、アリアナを挟んで温めてあげることが出来る」
「食器洗いの後になるからちょっと遅くなるけど、選んでくれたら温かい一晩を約束してあげる」
 そう言うと二人は再び片付け作業に戻ってしまい、デュオほどではないが色気のある声にアリアナはドキドキしながらソヴァンの所へ行った。
 ソヴァンは隅の方に座って一人で静かに飲み食いしていたが、アリアナが近づいてくると食べる手を止めて、穏やかな表情でアリアナを迎えた。
「来たか」
「ソヴァンさんは一人で食べているんですか?」
「あぁ、一人の方が落ち着くからな。だが、アリアナの事は待っていた」
 ほろ酔い気味なのだろう。頬を上気させて少しとろんとした目でアリアナを見つめると、不意にアリアナの手を引いて自分の懐に収めた。
「ソヴァンさん⁉」
「随分と冷えているな。俺が今温めてやる」
 そう言うとソヴァンはギュッとアリアナを抱きしめてアリアナを腕の中に閉じ込め、首筋に顔をうずめた。ソヴァンが呼吸をするたびに首筋に熱い吐息がかかるため、アリアナはそのくすぐったさにカッと体温が上がり、頬に朱が差した。
「そ、ソヴァンさん…! くすぐったいです」
「…すまない」
 ソヴァンは顔を上げて抱きしめる腕の力を少し緩め、手元に置いてあった杯をアリアナの前に出した。
「俺にもくれないか?」
「この体勢のまま、ですか?」
「あぁ」
 うなずくソヴァンに、アリアナは注ぎづらいと思いつつ、こぼさないように気を付けてソヴァンに酒を注いだ。
「ありがとう」
 ソヴァンはフッと笑って注がれた酒を一気に飲むと、一息ついてから再びアリアナを抱きしめてその熱を堪能するように縋り付いた。
「このまま、俺の腕の中にいてくれないか…今夜は一人で寝たい気分じゃない」
 アリアナは本能で察した。この誘いに乗れば自分の貞操が危ないと。そう思わせるほどソヴァンの声は熱っぽく、飢えた獣のような気配を放っていた。

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