転生少女は海賊の愛を得る

Ariasa(ありあーさ)

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 食堂に着くとすでにみんなは食べ始めており、にぎやかだった。
「あ、ようやく来たわね。アリアナ、私の隣にいらっしゃい」
 ロゼは二人が食堂に入ってくるやすぐに笑顔でアリアナを呼び、ソヴァンはいつもの定位置に座るとアリアナにロゼの所に行くように促した。アリアナはソヴァンにぺこりと頭を下げるとすぐにロゼの隣に行き、空いている椅子に腰を下ろした。
「遅くなりました。あと、洋服を貸してくれてありがとうございます」
「えぇ、よく似合っているわ。さ、今日の料理も美味しいわよ。たくさん食べてね」
「はい、ありがとうございます」
 ロゼの言葉に、空腹を訴えていたアリアナの腹の虫が待ってましたと言わんばかりに鳴り、アリアナは照れ臭そうに笑ったあと、料理を取り分けて食べ始めた。しばらくは何も言葉を交わすことなく黙々と食べていたが、不意に視線を感じてその方向に顔を向けると、ロゼが穏やかな表情でアリアナの食べる姿を眺めていた。
「あの…ロゼさん、どうしました? 私の顔に何かついてますか」
「いいえ、可愛いなって眺めていただけよ。ところで、昨夜は楽しめた?」
「はい、宴はとても楽しかったです」
 笑顔でそう答えるアリアナだが、ロゼはゆるゆると首を横に振ってアリアナの耳元で「ソヴァンと一緒に寝てどうだった? って意味よ」とささやいた。その瞬間、アリアナはポッと頬を赤らめて両手で自分の頬を包んだ。
「そ、そっちですか。えっと…とても良かった…です。うぅ…恥ずかしい」
 アリアナの言葉と反応から、ロゼは言葉通りとてもいい夜を過ごしたのだと感じ取り、恥ずかしがるアリアナの頭をよしよしと撫でた。
「そう、よかったわ」
「なあ、アリアナ。今日は俺の部屋に来ていいぞ! どうせまだ部屋無いだろう?」
 ずいっと会話に割り込んでいい笑顔でそう言ってきたのはジャンだった。そんなジャンに、ロゼはアリアナを抱きしめながらジトッとした視線を送った。
「ジャン、あなた絶対に女を優しく扱う事なんてできないでしょ」
「信頼ねぇな~」
「信用させる実績がないもの。仕方ないわね。まだジャンにアリアナを預けられないわ。まあ、アリアナが望めば私も考えるけど、どう? 今夜はジャンの所に行く?」
「え、えっと…遠慮しておきます」
 突然話を振られたアリアナはビックリしつつも、ロゼがここまで言う人の所に行こうという気にはならず苦笑をしながら断った。するとジャンはムッとしたような表情になり舌打ちをして「いい気になりやがって」と悪態をついた。
「あらジャン、そんな風に言っていいのかしら? せっかくあなたにチャンスをあげようと思ったのに」
「あ? チャンスだ?」
 すっかり不機嫌になってしまったジャンにロゼは「えぇ」と笑顔でうなずくと、パンッと一つ手を叩いて皆を静かにさせる。
「さあ、今日も一日が始まったわね。今日の仕事を各々に言いつけるわ。まず、食糧調達及び加工はいつも通りティタとティオンに任せるわ」
「はい」
「りょーかい」
「甲板、マストの点検と掃除はネオとデュオに今日はお願いするわ。ソヴァンは全ての武器の点検をした後、洗濯をしておいて」
「任せろ!」
「分かりました」
「了解」
「ジゼルは船の舵取りをお願いね」
「あぁ」
「そして、ジャン、テト、アリアナの三人はテトの隣の部屋の物置部屋の片づけをしなさい。そこをアリアナの部屋にするわ」
「どこがチャンスなんだよ!」
「はーい」
「ロゼさんありがとうございます」
 それぞれに役割分担をしたロゼに、ジャンだけが不満げな表情でバンッとテーブルを叩いた。それを見たロゼは呆れたように腕を組むと、さらにため息も吐いた。
「ジャン、よく考えなさい。今、アリアナの貴方の印象はおそらく怖い人よ。初対面の時も貴方酔っぱらってテトに絡んでたし、今だってすぐに苛立ってテーブルに当たる始末。そんな人の所に行きたいと思うわけがないわ。そうでしょう? アリアナ」
 ロゼの問いかけにアリアナは苛立つジャンの様子をうかがいつつ、コクリと首を縦に振った。
「なっ…!」
「だから、これは挽回のチャンスよ。ジャンは確かに短気でキレっぽいけど、話せば楽しいし何より力持ちだからこういう力仕事では誰よりも頼りになる。それを思う存分発揮すれば、印象はきっと変わるはずよ。テトは、ジャンがアリアナに乱暴なことをしないように見張っててね」
「分かりました。船長、もちろん僕もアリアナちゃんにアピールしていいんですよね?」
 従順な犬のように笑うテトだが、アリアナに興味津々でかじってみたいという欲が目の奥に見え隠れしていた。
「えぇ、もちろん。さ、食べ終わったら早速仕事に取り掛かりなさい」
 ロゼの号令に、クルーたちは慌ただしく食堂を後にしたのだった。

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