転生少女は海賊の愛を得る

Ariasa(ありあーさ)

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 朝食を食べ終わったクルー達は、ロゼから仕事を言いつけられてそれぞれ仕事をし始める。そんな中アリアナは、晴れない表情で甲板の掃除をしており、一緒に掃除をしていたジゼルが眉間にしわを寄せながらモップの柄でアリアナの頭を小突いた。
「痛っ」
「おい、手が止まってるぞ。掃除をする気が無いなら部屋に戻れ。目障りだ」
「……すみません」
 さらにシュンと落ち込むアリアナに、ジゼルは大きなため息を吐きつつも甲板の階段に腰を下ろして「おい」と隣に座るようにポンポンと隣を叩いて促した。その行動にアリアナは驚きつつも少し距離を取って隣に座った。
「……最初に言っておくが、俺はお前が心配なわけじゃない。お前が落ち込んでいるとロゼがお前にばかり構うから、構ってもらえない他の奴らのストレスが溜まるんだ。勘違いするなよ」
「はぁ……」
 なぜそのような前置きをするのか理解が追い付かないまま、気の抜けた返事をするアリアナにジゼルは「なんて顔してるんだ」と呆れながら言葉を続ける。
「で? なんで落ち込んでる」
「…落ち込んでいるように見えますか?」
「見えなかったらわざわざお前に時間を取らない」
 困ったように笑うアリアナに対し、にべもなく言い返すジゼルにアリアナは「そうですよね」と呟くと、少し迷うように何度か口を開閉した後ようやく言葉を発した。
「……私、やっぱり戦いは嫌だし、誰も…海兵のあの人だって死んで欲しくないんです。も、もちろん私はロゼさんのものですし、この居場所を失いたくないのでこの船を降りたいと思いませんが、やっぱり人が死ぬのは嫌なんです」
 俯いたままギュッとスカートを握りしめ、思い切って思いのたけを話すアリアナに、ジゼルはさほど興味もなさそうに空を見上げながら言葉を返す。
「なるほどな。それで? ロゼにその事は言ったのか?」
「いえ……」
「じゃあ、言ってみればいいだろう? まあ、あの男は海軍の将校だからな。ただ殺さないで欲しいと言ってもロゼは聞かないだろう。だから言い方は考える必要があるな」
「言い方?」
 ジゼルの言葉にアリアナは興味を持った様子で、顔を上げてジゼルを見た。ジゼルは相変わらず興味がなさそうな表情で空を見上げたまま「あぁ」と言葉を続ける。
「海軍を理由もなくロゼは助けたりはしない。これは覆すことは出来ない事実だし、たとえアリアナが殺さないで欲しい、戦ってほしくないと訴えたところで聞かない。だったら、あの将校を欲しがればいい」
「欲しがる…?」
「今、あれはロゼの捕虜だ。だからお前がどんなに訴えても聞く耳を持つ必要が無い。だから、殺されるのが嫌ならお前があいつの命を握ればいい。……まあ、ロゼが了承するかは分からないが、おねだりしてみる価値はあるんじゃないか?」
 そう言うとジゼルは立ち上がり、立て掛けていたモップを手に取って「さっさと掃除を終わらせるぞ」とアリアナの方を向かずに言い、そのまま掃除を再開させた。それを見てアリアナも立ち上がり、先程よりは軽くなった心に表情が和らぎながら「はい」と返事をし、ジゼルと一緒に掃除に取り組んだ。
 掃除を終わらせると、アリアナはドキドキと緊張して高鳴る鼓動を深呼吸で落ち着かせると、ロゼの部屋をノックした。
「はーい、どうぞ」
 中から気だるげな声が返ってきて、アリアナは大丈夫だろうかと心配になりながらも「失礼します」とロゼの部屋のドアを開けた。
「あら、アリアナから私の部屋に来るなんて珍しいわね。どうしたの? 誰かにいじめられた?」
 珍しい客にロゼはその顔に笑顔を浮かべて自分が座っていたソファーに座るようにポンポンと叩いて促した。その誘いにアリアナは素直に応じて隣に腰かけると、ロゼはアリアナの腰を抱いてよしよしとアリアナの頭を撫で始めた。
「だいぶ緊張してるみたいだけど……何かあったの?」
 体に力が入っていることにすぐに気付き、ロゼが気遣うように優しく語り掛けると、アリアナはようやく意を決してロゼの目を見た。
「あの、ロゼさんにお願いがあって来たんです」
「まあ、私にお願い? アリアナからのお願いなら、何でも聞いちゃうわよ。あ、でも戦いをやめて欲しいという願いには答えられないけどね」
「はい。それは朝聞いたので……。だから…あの…代わりに捕まっているあの海軍の人を、私にくれませんか? わ、私の…その…げ、下僕に…したいんです。だから、殺すなら私にください」
 緊張で震えながら言葉を紡ぐアリアナに、ロゼは驚いた表情で「ナティアを?」とアリアナを見た後、少し考えるようにアリアナから視線を外して唸った。しかしすぐに視線をアリアナに戻し、真剣な目でアリアナを見据えた。
「ナティアは危険な男よ。それに、簡単に下僕にするって言ったけど、彼は腐っても海軍の将校。簡単にアリアナの下僕になるとは思えないわ。そもそも、なんでナティアを下僕にしたいの?」
「えっと……何となく?」
 上手い理由が思いつかず、目を泳がせながらひきつった笑顔で言うアリアナに、ロゼはため息を吐いたあとに苦笑をした。
「まったく……。あいつを助けたいならもう少し上手に私を説得しなさいよ。バレバレよ」
「うっ」
「もぅ、アリアナは優しい子ね。そうねぇ…下手くそだったけど初めてのおねだりだし、いいわよ。でも、あと一週間であいつを下僕にしなさい。そうしたら殺さずにアリアナにあげるわ。当然だけど、アイツを逃がすような真似はしないでね? もし逃がしたり、アイツが逃げたりするような事があったら、今度はアリアナがあの部屋に繋がれることになるわ。分かった?」
 ニッコリと笑って快諾したロゼに、アリアナはホッとしてへなへなと力が抜け「よかったぁ」と長い息を吐いた。
「ありがとうございます、ロゼさん」
「そんなとろけた様な顔で笑って。可愛い可愛い私の宝物」
 嬉しそうに笑うアリアナに、ロゼも愛しさがあふれる優しい表情でアリアナの額に触れるだけのキスをして拷問部屋のカギをアリアナに渡した。


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