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鍵をもらったアリアナはロゼと一緒に早速拷問部屋へ行き、アリアナが部屋の鍵を開けた。鍵を開けて中に入る瞬間、二日前に勝手に入って怒られた記憶が呼び起こされて足がすくみそうになったが、ロゼが隣にいることで、許されていると再確認して足を止めずに入ることが出来た。
しかし足を踏み入れて最初に呼吸をすると、濃厚な血の臭いがアリアナの鼻腔を突き刺して吐き気を誘発し、腹の底から不快感がせりあがってくるのを感じて思わず足を止めた。それでも吐くことは何とか阻止し、涙目になりながらロゼの背を追いかけた。
「ナティア、起きなさい」
そう言うやロゼは吊るされているナティアに無慈悲に水を頭からぶっかけ、その衝撃と冷たさにナティアは気だるげにゆっくりと目を開けると、ロゼを睨みつけた。
「…ったく……。ろくに、寝かせてくれねぇ奴だな……」
二日前に見た時よりもさらに弱っているナティアの姿は、それでも海賊に屈するものかと強い意志を感じる目をしており、その力強い眼差しにアリアナは尻込みしてしまうほどだった。
「当たり前じゃない。あんたは昔から寝たらすぐに回復する特殊能力を持ってるもの。そんなバケモノにゆっくりと睡眠をとらせると思う?」
「ロゼだって…似たようなもんだろ……。バケモノはお互い様だ」
「相変わらずの減らず口ね。また痛めつけてあげましょうか?」
「ロゼさん…!」
腰に差している剣に手をかけたロゼにアリアナが慌てて声をかけると、ロゼは思い出したように動きを止めて一つ深呼吸をした。
「……アリアナ、ごめんね。大丈夫よ。ナティア、喜びなさい。あなたに救いの手が差し伸べられたわ。私に殺されたくなければ、この子の下僕になりなさい」
「…あぁ? ……あぁ、あの娘か。また、気まぐれな事をする……」
皮肉交じりの声で笑うナティアにロゼも「そうね」と軽く笑った。
「でも、私は海賊の王よ。気まぐれは当然ね。それに、アリアナの初めてのおねだりですもの。全力で応えたくなるじゃない? ま、アリアナの下僕にならないなら予定通り海軍本拠地の前でナティアを処刑するし、それはそれで私的には何ら問題ないの。生きるか死ぬかは自分で決めなさい。じゃ、私は部屋に戻るわ。あとはアリアナと話しなさい」
言いたいことを一方的に言うと、ひらひらと手を振って拷問部屋から出ていき、部屋の中にはナティアとアリアナだけになった。
「……はぁ~。で? お前は何でこんなことをしようと思ったんだ? 俺に関わったせいでお仕置きを受けたんだろう?」
大きなため息を吐いたあと、可哀想な人を見るような目でアリアナを見るナティアに、アリアナはうつむいたままうなずいた。
「はい…。でも、人が死ぬのが…嫌だったんです」
「お仕置きまでされたのに、勇気のあるやつだな。でもな、せっかく勇気を出してロゼに掛け合ってくれて嬉しいが、俺は海軍で働くことに誇りを持っている。だから、海賊に成り下がるなんてことは死んでもごめんだ。そんな事をしたら俺は海賊に屈したことになり、弟妹や部下たちに示しがつかないだろう?」
苦笑をした後、死を受け入れた穏やかな顔と声でアリアナに語り掛けるナティアに、アリアナは首を横に振って「ダメです」と泣きそうな顔で返す。
「今だけは…誇りを捨ててください。……死んだら、二度と家族に会えなくなるんですよ? 生きていればいずれ会えるかもしれないのに、自ら死を選ぶんですか? 私は、そんなこと許しません。私はもう家族には会えないのに、会えるかもしれないその可能性を潰すなんて許さない!」
「誇りを捨てろ? 簡単に言ってくれるな。俺はな、命を懸けて海軍で働いている。簡単に捨てられる誇りなんて持ってないんだよ。そんなものがあるとしたら、それはただの強がりだ。譲れないもの、捨てられないものだから誇るものなんだ」
「だからって、死ぬのは間違っています!」
両者ともに譲れないと無言でにらみ合うが、すぐにナティアがアリアナから目をそらして疲れたというように目を閉じた。
「とにかく…俺はお前に助けてもらいたいと思わない。分かったら出て行け」
「……嫌です。ナティアさんが私の下僕になる事を了承するまでここに居ます。私は、生かすためにナティアさんの命が欲しいんです」
目を閉じてアリアナを拒絶するナティアに、アリアナはそれでも真っすぐにナティアを見つめ、生きて欲しいという願いをしっかりと込めて伝えた。
「……熱烈な言葉だが、今はお前の言葉に耳を傾ける気はない。とにかく寝かせてくれ」
「嫌です。寝たかったら私の下僕になると言ってください」
「お前なぁ……。ハァ…じゃあ、質問するぞ。俺を助けてお前に何の利がある? お前は俺に何を求める」
気だるげに再び開けられた目はとても面倒くさそうで、しかしアリアナの真意を汲み取ろうとしっかりアリアナの目を見ていた。
「利益…? そんなもの考えてません。ただ、生きていて欲しいんです。人が目の前で死ぬのが嫌なんです。生きていてくれさえいれば…あと、私がこの部屋に繋がれないためにナティアさんが私の側にいてくれればそれでいいんです」
「……変わった娘だな」
アリアナの熱烈な『生きて』という声に、ふと心が動いたナティアは無意識にそんな言葉を漏らすと、何度目か分からないため息を吐いて困ったように微笑んだ。
「分かったよ…。だが、一人で考える時間が欲しい。だから一日、時間をくれないか。それまでに答えを出す」
「……分かりました。では、また来ます」
アリアナは部屋を出るか一瞬悩んだが、答えを出してくれるならとすぐに退室をする選択をし、ぺこりと頭を下げてから拷問部屋を出た。
「アリアナ、やるじゃない」
拷問部屋を出た瞬間、真横から声がかかりビックリしたアリアナは「ひゃっ」と思わず声が出た。しかしその声の主がロゼだと分かると、照れたような笑顔に変わり「えへへ」と笑った。
「あのナティアをあそこまで追い詰めることが出来るなんて素晴らしいわ。その調子でナティアを落とせると良いわね」
「はい」
笑顔で返事をするアリアナに、ロゼは「可愛い」と抱きしめたあと一緒にその場を後にしたのだった。
しかし足を踏み入れて最初に呼吸をすると、濃厚な血の臭いがアリアナの鼻腔を突き刺して吐き気を誘発し、腹の底から不快感がせりあがってくるのを感じて思わず足を止めた。それでも吐くことは何とか阻止し、涙目になりながらロゼの背を追いかけた。
「ナティア、起きなさい」
そう言うやロゼは吊るされているナティアに無慈悲に水を頭からぶっかけ、その衝撃と冷たさにナティアは気だるげにゆっくりと目を開けると、ロゼを睨みつけた。
「…ったく……。ろくに、寝かせてくれねぇ奴だな……」
二日前に見た時よりもさらに弱っているナティアの姿は、それでも海賊に屈するものかと強い意志を感じる目をしており、その力強い眼差しにアリアナは尻込みしてしまうほどだった。
「当たり前じゃない。あんたは昔から寝たらすぐに回復する特殊能力を持ってるもの。そんなバケモノにゆっくりと睡眠をとらせると思う?」
「ロゼだって…似たようなもんだろ……。バケモノはお互い様だ」
「相変わらずの減らず口ね。また痛めつけてあげましょうか?」
「ロゼさん…!」
腰に差している剣に手をかけたロゼにアリアナが慌てて声をかけると、ロゼは思い出したように動きを止めて一つ深呼吸をした。
「……アリアナ、ごめんね。大丈夫よ。ナティア、喜びなさい。あなたに救いの手が差し伸べられたわ。私に殺されたくなければ、この子の下僕になりなさい」
「…あぁ? ……あぁ、あの娘か。また、気まぐれな事をする……」
皮肉交じりの声で笑うナティアにロゼも「そうね」と軽く笑った。
「でも、私は海賊の王よ。気まぐれは当然ね。それに、アリアナの初めてのおねだりですもの。全力で応えたくなるじゃない? ま、アリアナの下僕にならないなら予定通り海軍本拠地の前でナティアを処刑するし、それはそれで私的には何ら問題ないの。生きるか死ぬかは自分で決めなさい。じゃ、私は部屋に戻るわ。あとはアリアナと話しなさい」
言いたいことを一方的に言うと、ひらひらと手を振って拷問部屋から出ていき、部屋の中にはナティアとアリアナだけになった。
「……はぁ~。で? お前は何でこんなことをしようと思ったんだ? 俺に関わったせいでお仕置きを受けたんだろう?」
大きなため息を吐いたあと、可哀想な人を見るような目でアリアナを見るナティアに、アリアナはうつむいたままうなずいた。
「はい…。でも、人が死ぬのが…嫌だったんです」
「お仕置きまでされたのに、勇気のあるやつだな。でもな、せっかく勇気を出してロゼに掛け合ってくれて嬉しいが、俺は海軍で働くことに誇りを持っている。だから、海賊に成り下がるなんてことは死んでもごめんだ。そんな事をしたら俺は海賊に屈したことになり、弟妹や部下たちに示しがつかないだろう?」
苦笑をした後、死を受け入れた穏やかな顔と声でアリアナに語り掛けるナティアに、アリアナは首を横に振って「ダメです」と泣きそうな顔で返す。
「今だけは…誇りを捨ててください。……死んだら、二度と家族に会えなくなるんですよ? 生きていればいずれ会えるかもしれないのに、自ら死を選ぶんですか? 私は、そんなこと許しません。私はもう家族には会えないのに、会えるかもしれないその可能性を潰すなんて許さない!」
「誇りを捨てろ? 簡単に言ってくれるな。俺はな、命を懸けて海軍で働いている。簡単に捨てられる誇りなんて持ってないんだよ。そんなものがあるとしたら、それはただの強がりだ。譲れないもの、捨てられないものだから誇るものなんだ」
「だからって、死ぬのは間違っています!」
両者ともに譲れないと無言でにらみ合うが、すぐにナティアがアリアナから目をそらして疲れたというように目を閉じた。
「とにかく…俺はお前に助けてもらいたいと思わない。分かったら出て行け」
「……嫌です。ナティアさんが私の下僕になる事を了承するまでここに居ます。私は、生かすためにナティアさんの命が欲しいんです」
目を閉じてアリアナを拒絶するナティアに、アリアナはそれでも真っすぐにナティアを見つめ、生きて欲しいという願いをしっかりと込めて伝えた。
「……熱烈な言葉だが、今はお前の言葉に耳を傾ける気はない。とにかく寝かせてくれ」
「嫌です。寝たかったら私の下僕になると言ってください」
「お前なぁ……。ハァ…じゃあ、質問するぞ。俺を助けてお前に何の利がある? お前は俺に何を求める」
気だるげに再び開けられた目はとても面倒くさそうで、しかしアリアナの真意を汲み取ろうとしっかりアリアナの目を見ていた。
「利益…? そんなもの考えてません。ただ、生きていて欲しいんです。人が目の前で死ぬのが嫌なんです。生きていてくれさえいれば…あと、私がこの部屋に繋がれないためにナティアさんが私の側にいてくれればそれでいいんです」
「……変わった娘だな」
アリアナの熱烈な『生きて』という声に、ふと心が動いたナティアは無意識にそんな言葉を漏らすと、何度目か分からないため息を吐いて困ったように微笑んだ。
「分かったよ…。だが、一人で考える時間が欲しい。だから一日、時間をくれないか。それまでに答えを出す」
「……分かりました。では、また来ます」
アリアナは部屋を出るか一瞬悩んだが、答えを出してくれるならとすぐに退室をする選択をし、ぺこりと頭を下げてから拷問部屋を出た。
「アリアナ、やるじゃない」
拷問部屋を出た瞬間、真横から声がかかりビックリしたアリアナは「ひゃっ」と思わず声が出た。しかしその声の主がロゼだと分かると、照れたような笑顔に変わり「えへへ」と笑った。
「あのナティアをあそこまで追い詰めることが出来るなんて素晴らしいわ。その調子でナティアを落とせると良いわね」
「はい」
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