現実世界のカルマ ~『行為としての結果』が私の能力となる。転生しなかった代わりに神様から貰ったこの力でお助けマンを頑張ります~

行進12番

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第1章 本章

第26話 隣町の静かな夜に・後編

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 私たち4人は、森の入り口に到着していた。森の中に入る前に、今回の目的の最終確認を行う。リンが主導となり、話し合いが行われる。

「さて、ライチャスネス。森に入る前に確認するわ。貴方の能力について、もう一度ね。何かこの場で説明しておきたい事はある?」

「私の能力は、1匹に対してしか使えないと思う。後はさっき言った通りだ。目視した対象に対して能力を発動し、能力を解除しないかぎり、対象の場所を補足できるはず。だから出来れば、に対して能力を使用したい」

 シティリアは質問をする。

「その力。魔物に対してしか使えないのね?」

「ああ。魔物に対してしか使えない」

 スタークも質問を投げかけてきた。

「でもよ、その能力。呼び名とか、ねぇのか? ただの能力じゃ、なんかしっくりこねえしよ?」

 スタークの不意の質問に、私は一言。言葉を発した。

「カルマ」

 スタークは上手く聞き取れなかったようで、私にもう一度聞き直してきた。

「ん? なんだって?」

「カルマって言うんだ。こういった不思議な力を得られる能力を総称して、私はカルマと呼んでいる。例えば、私は足が素早いのは皆も知っていると思うけど、あれは疾走のカルマって言う能力の一つなんだ」

 シティリアが私の顔を見て、悩んだ顔になる。

「ん-。それじゃあ、魔物の居場所を探す能力ってことよね。探索……。追尾……。追跡…? そうね。この場合だと、追跡のカルマかしら」

 スタークが笑いながら言葉を放つ。

「なんでシティリアが決めるんだよっ。ライチャスネスの特技だろ?」

 私はシティリアの意見に賛成する。 

「いや、そこまでこだわっているわけじゃないから…。追跡のカルマ。その言葉。使わせてもらうよ」

 リンが場を仕切る。

「それじゃ、時間も勿体ないし、そろそろ行くわよ」

 私たちは、森の中へ進み始めた。まだ最初の入り口の方は夜空の明かりが見えるので、その足取りは軽い。リンを先頭に、スターク、私、シティリアの順番に足を進めていく。時々、物音がした方に目を放つが、何という事はない小動物だったりする。
 進むに連れて夜空の明かりも段々と届かなくなり、闇の世界が広がっていく。周囲の暗さに比例して、みんなの集中も高まっていくのを感じる。まだ、お互いの距離感は失っておらず、奥の方へと進むのに問題はない。

 ――リンが無言で止まれの合図を出す。

 私たちは、静かにその場で上体を低くし、前方の様子をうかがう。

 歩いてくる音が反響して聴こえてくる。人影が、ひとつ。私たちの目前に、その姿を現した。

 ゴブリンである。

 リンが腰に手を当て、細剣を引き抜き、構える。

 まだ向こうはこちらに気づいていない……。
 リンは待機の命令をハンドサインで出す。私たちはその場で座して待つ。

 ゴブリンが後ろを見せた瞬間、リンは物音立てずに接近していく。

 リンの存在に気づいた瞬間――。背中から細剣がゴブリンの心臓を一突きしていた。

 ゴブリンが叫び声を上げようとする仕草も、リンの腕で口を覆われ、物音一つ立てずにゴブリンは徐々にその力を失っていく……。

 その体から力が抜け、首に手を当て、脈拍を確認する。

 ゴブリンは完全に絶命していた。

 周りを警戒しつつ、周囲の安全確認が取れ、リンから進めのサインが出る。

 私たちは、隊列を維持しつつ、ゴブリンが歩いて来た方角へと進んで行った。
 シティリアが、進む方角から「魔力を感じる」と言っている。それぞれに緊張が走る。

 遠くのほうから、明かりが視界に入ってきた。
 まだ弱い光だが、どうやらのようだ。
 慎重に、ゆっくりと、ゆっくりと……、背を低くし、音を立てないように光のある方へ近づいて行く。
 その光は次第に強さを増していき、闇に慣らされた目にとって、明確な情報となり私たちに訴えてきた。

 ゴブリンの群れだ。間違いない。ここだ……。

 ぽつりぽつりと、等間隔で、位置の感覚が理解できる程度に、松明が設置されている。ゴブリンの集団の、そのほとんどは、動かずその場で地面と合体している。寝ているのだろう。

 スタークが、方向を指示するように指をさす。

 私たちはその方へ眼をやると、普通のゴブリンとは違う、明らかに異質な存在がそこに

 その存在は、通常の個体の数倍の大きさをしており。明らかに、

 リンが小声で「ビッグ・ゴブリン……」とだけ呟く。

 それに合わせてシティリアも私たちに聴こえる程度に言葉を放つ。

のすぐ傍……。ゴブリン・ソーサラーよ」

 ビッグ・ゴブリンに目を奪われていた私たちだが、シティリアの言葉に従い、のすぐ傍に鎮座していたのに気づく。

「さっきの魔力をあれから感じる」

 シティリアの発言を聞き、リンが小声で提案してくる。

「どっちに追跡のカルマを使うのかは……。ライチャスネスに任せるわ」

 全ての決断が私に……。よし……。決めた。

 私は目標を視界に捉え、能力を発動する。

 <<追跡のカルマ>>

 能力を発動した後、私の脳内に【目標物を中心とした映像】が映し出された。成功だ。

「目標は達成した。皆、戻ろう」

 私たちは気づかれないように、足早にその場を去っていく。
 その場を離れるに連れて、足取りは早くなる。

 リンが私に質問をする。

「で……、どっちにしたの?」

 私は答える。

「ビッグ・ゴブリンにしたよ。今も能力のおかげで、集中するとその姿と場所が鮮明に分かる。シティリアが言ってた、ゴブリン・ソーサラーとか言うのは、ある程度近距離なら、シティリアが感知できると思ったんだ」

 スタークが感心する。

「なるほどな……。おめぇにしてはやるじゃねえか」

 ――刹那。リンが止まれの合図を出す。

「前方。影」

 私たちは武器を構え。円形状に周囲を警戒する。

 スタークが愚痴をこぼす。

「チッ……。そう簡単に返しちゃくれねぇか……」

 前方から、武装したゴブリンの集団が現れたのである。

 シティリアが背中越しに語る。

「後ろもよ。囲まれたわね」

 リンが号令を掛ける。

「前方のみに集中。スタークを先頭に一点突破。町まで駆け抜けるわよ」

「「「了解」」」

 私たちは一斉に駆け出す。

 盾を構えたスタークが、前方のゴブリンを物ともせず、弾き飛ばす。

 それでも邪魔をするゴブリンに対し、すかさずリンが細剣で足を貫く。

 後方からもゴブリンの集団が追って来ていた。私はシティリアを前へ追いやり殿しんがりを務める。

「先に行け! 俺なら一人でも逃げ切れる!」

 リンたちの目からは、私に対する信頼が伝わってくる。

「任せた!」

 リンの声を聴き、自身を勇気づけた私は体を反転させ、武器を構える。

 後方から攻めてくるゴブリンたちは一斉に攻撃を仕掛けてくる。

「邪魔をするな――!」

 <<膂力のカルマ>>

 私は能力によって底上げされたその膂力を、

 追っ手のゴブリンたちに、目いっぱいの力を込めて解き放つ。

 六尺棒の一振りに触れたその体は、有無を言わさず吹き飛んでいく。

 私の体に抱き着き、拘束をしてこようとするゴブリン。

 私は左手でゴブリンの首をじる。

 右手で六尺棒を振り回し、ゴブリンを近づけさせまいと気持ちを昂らせる。

 それでも殺意をむき出しにしたゴブリンの攻勢に対し、私は武器を振るう。

 距離を置いたゴブリンは、飛び上がり、こん棒を私の体めがけて振り下ろして来る。

 私は武器を構え、その攻撃を受け――きる事が出来なかった。

 六尺棒は、かわいた音と共に、真ん中から二つに折れる。

 自身のその膂力に、敵の攻撃に、ついに耐え切れなくなったのである。

 ゴブリンの打撃は、私の足に命中し、私の動きを止める。

 左右から、剣や槍などを構えたゴブリンの攻撃が、体に突き刺さる……。


 ――森の入り口付近――


 リンたちは無事に森の入り口まで戻って来ていた。
 の帰りを待ち、森の奥の方を見つめている。

「遅いわね……」

 シティリアが小言を漏らした。

「クソッ俺も残れば良かった」

 スタークは己の不甲斐無さを責めていた。
 あの時、ライチャスネス1人だけじゃなかったら、
 一緒に状況を打開できたかもしれないと。

 リンが足早に森の中へ入ろうとする。スタークがリンの腕を掴む。

「ダメだ。リン」

「でも!!!」

 リンは平静を装いながら、言葉だけは激しかった。

「戻る事は許されない。分かるわよね?」

 シティリアの言葉に、唇を嚙みしめる。只々ただただ、森の暗がりを見つめるしかなかった。
 
 ……。

 ………。

 …………。

 最初に言葉を発したのは、スタークだった。

「おい。
 
 リンは真っ先に駆け出す。

 誰も止めなかった。

 リンの、その腕の中に、私はいた。

「ははっ。無事だったろ?」

 私の目の前で、泣きじゃくる彼女の涙は、まるで子供のようだった。
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