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第1章 本章
第28話 人々の笑顔が交差する。暗躍も交差する・前編
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ライチャスネス一行は、宿屋で休憩を取っていた。
「――スネス。おーい。ライチャスネス~?」
誰かの声で、私はベッドで目が覚めた。知っている天井だ。……宿屋のね。嗚呼、頭がぼーっとしている。私はベッドから上半身を起こし、薄暗い部屋の中を見渡す。今、何時だろうか……?
「ライチャスネスってば」
部屋の入り口に立っている人影に目をやる。リンだ。
「ああ……。リンか、スマン。寝ぼけていた。どうした?」
「町長さんがね。『町を救ってくれたお礼に』って、祝賀会開いてくれるそうなんだけど。行くよね?」
祝賀会。ふむ。行こうかな。
「ああ、行くよ。ところで……今、何時ごろ?」
「夜の9時くらい。まだ日は跨いじゃいないわよ。私もさっき目が覚めたばかり」
3時間ちょっと寝てたって事か。
「そうか……。準備したら行くよ。宿屋のロビー行けばいいか?」
「ええ。待っているわ。後で会場まで一緒に行きましょう」
私は最低限の準備をして、ロビーへ向かう。ロビーに赴くと、既に全員集合している。私が最後だったようだ。他愛ない雑談話をしながら会場へ向かう。
シティリアから聞いたが、私たちが寝ている間に、町の防衛隊の兵士の人たちと、応援で駆け付けた王都からの援軍の人たちで、町の外のゴブリンの骸の片づけは終わったそうな。人海戦術って素晴らしい。
骸は、ごみ処理場で燃やすんだろうか。あの量を処理するのは大変そうだ。それに、眠っていたとはいえ、手伝えなくて無念である。破壊された門は、しばらく掛かりそうとの事。
ああ、そうだ……。防衛隊長さんから頂いた武器と防具を返さないとな……。あげるとは言われたが、緊急時で使わせて頂いたものだしなぁ……。
考え事をしているうちに、会場に着く。町の中央広場だ。テーブルが設置され、光源も兼ねたライトが華やかに彩った立食会場となっている。防衛に参加していた人たちや、応援に駆け付けた兵士、冒険者の方々、町の人たちで溢れかえっていた。
奥まで進んで行くと、町長さんがいた。こちらに気づき、近づいてくる。
「おー! これはこれは、町の英雄! お待ちしておりました!」
会場で回りがざわつく。
私たちは照れくさそうに顔がにやける。リンがリーダーとして返答する。
「いや……、英雄だなんて、そんな……」
「いやいや、あのビッグ・ゴブリンを倒したのですぞ。凄いことです」
後ろから声を掛けられたと思ったら、町の防衛隊長さんだった。
「倒したのは、シッ……ゴホン。シティリアですが」
町長が顎に手を当てながら和やかに話す。
「何をおっしゃいますか。貴女たち、あってこそですよ」
周りから感謝の声が響き渡る。恥ずかしい。ああ、そうだ。
「隊長さん。あの時頂いた武器と防具をお返ししようと思うのですが」
防衛隊長さんは然も気にしないような顔で返答する。
「ふむ? いえ、そのままお使いください。普段は倉庫で眠っているだけなので、お役に立っていただけるのなら、武器も本望でしょう」
「で、ありますか。では、改めて、ありがたく頂戴いたします」
話し込んでいると、軍神様が登場した。お立ち台のような場所に立ち、周りが注目する。
「防衛隊の皆さん。それに私と共に駆け付けた冒険者や、兵士の皆さん。お疲れ様。今回は大変な事にならずに済みました。王都を代表してお礼を申し上げます」
周りの人たちも照れくさそうに下を向く。しかし軍神様、綺麗な格好をしているな。
普段はお菓子を食べてだらだらしているイメージが……。
「それから、早急に町の危機を知らせてくれた、リン冒険者一行。重ねてお礼を申し上げます」
リンはキリッとした表情で返答をする。
「フロウ様にそういって頂けると、こちらとしても頑張った甲斐があります」
さすが、お城の兵士でもあり、優秀な冒険者でもあるリンだ。こういう時も凛々しく見える。
「今日は、町の皆さんが感謝の意を込めて、お食事を用意してくれました。皆さん。残さず頂きましょう」
立食会が始まった。私たちは、食事をしながらそれぞれが、色々な人と話を交わす。お礼を言いに来る者や、戦闘時の戦果を称える者。また、命がある事に感謝する者もいた。私たちも例外ではなく、町の防衛隊に所属する兵士の人たちから声を掛けられたり、また、応援で駆け付けた冒険者から挨拶をされたりもした。
と、軍神様がこちらに近づいてくる。小声で耳打ちされた。
「今回は大変だったわね……。お疲れ様。王都に戻ったら、今回の件で話すことがあるんだけれども。それは後にして、今は楽しみましょう」
「ん? ああ。分かった」
村瀬さん…。軍神様は、「それじゃまたね」と言って去って行った。沢山の者から声を掛けられて、大変そうだ。
気になる事が一つできたが、立食会に参加したのは大成功かな。最初にこの町に来た時は、町の人たちは不安な表情だった。それが今は笑顔である。私の心が、満足感で満たされたのであった。
「――スネス。おーい。ライチャスネス~?」
誰かの声で、私はベッドで目が覚めた。知っている天井だ。……宿屋のね。嗚呼、頭がぼーっとしている。私はベッドから上半身を起こし、薄暗い部屋の中を見渡す。今、何時だろうか……?
「ライチャスネスってば」
部屋の入り口に立っている人影に目をやる。リンだ。
「ああ……。リンか、スマン。寝ぼけていた。どうした?」
「町長さんがね。『町を救ってくれたお礼に』って、祝賀会開いてくれるそうなんだけど。行くよね?」
祝賀会。ふむ。行こうかな。
「ああ、行くよ。ところで……今、何時ごろ?」
「夜の9時くらい。まだ日は跨いじゃいないわよ。私もさっき目が覚めたばかり」
3時間ちょっと寝てたって事か。
「そうか……。準備したら行くよ。宿屋のロビー行けばいいか?」
「ええ。待っているわ。後で会場まで一緒に行きましょう」
私は最低限の準備をして、ロビーへ向かう。ロビーに赴くと、既に全員集合している。私が最後だったようだ。他愛ない雑談話をしながら会場へ向かう。
シティリアから聞いたが、私たちが寝ている間に、町の防衛隊の兵士の人たちと、応援で駆け付けた王都からの援軍の人たちで、町の外のゴブリンの骸の片づけは終わったそうな。人海戦術って素晴らしい。
骸は、ごみ処理場で燃やすんだろうか。あの量を処理するのは大変そうだ。それに、眠っていたとはいえ、手伝えなくて無念である。破壊された門は、しばらく掛かりそうとの事。
ああ、そうだ……。防衛隊長さんから頂いた武器と防具を返さないとな……。あげるとは言われたが、緊急時で使わせて頂いたものだしなぁ……。
考え事をしているうちに、会場に着く。町の中央広場だ。テーブルが設置され、光源も兼ねたライトが華やかに彩った立食会場となっている。防衛に参加していた人たちや、応援に駆け付けた兵士、冒険者の方々、町の人たちで溢れかえっていた。
奥まで進んで行くと、町長さんがいた。こちらに気づき、近づいてくる。
「おー! これはこれは、町の英雄! お待ちしておりました!」
会場で回りがざわつく。
私たちは照れくさそうに顔がにやける。リンがリーダーとして返答する。
「いや……、英雄だなんて、そんな……」
「いやいや、あのビッグ・ゴブリンを倒したのですぞ。凄いことです」
後ろから声を掛けられたと思ったら、町の防衛隊長さんだった。
「倒したのは、シッ……ゴホン。シティリアですが」
町長が顎に手を当てながら和やかに話す。
「何をおっしゃいますか。貴女たち、あってこそですよ」
周りから感謝の声が響き渡る。恥ずかしい。ああ、そうだ。
「隊長さん。あの時頂いた武器と防具をお返ししようと思うのですが」
防衛隊長さんは然も気にしないような顔で返答する。
「ふむ? いえ、そのままお使いください。普段は倉庫で眠っているだけなので、お役に立っていただけるのなら、武器も本望でしょう」
「で、ありますか。では、改めて、ありがたく頂戴いたします」
話し込んでいると、軍神様が登場した。お立ち台のような場所に立ち、周りが注目する。
「防衛隊の皆さん。それに私と共に駆け付けた冒険者や、兵士の皆さん。お疲れ様。今回は大変な事にならずに済みました。王都を代表してお礼を申し上げます」
周りの人たちも照れくさそうに下を向く。しかし軍神様、綺麗な格好をしているな。
普段はお菓子を食べてだらだらしているイメージが……。
「それから、早急に町の危機を知らせてくれた、リン冒険者一行。重ねてお礼を申し上げます」
リンはキリッとした表情で返答をする。
「フロウ様にそういって頂けると、こちらとしても頑張った甲斐があります」
さすが、お城の兵士でもあり、優秀な冒険者でもあるリンだ。こういう時も凛々しく見える。
「今日は、町の皆さんが感謝の意を込めて、お食事を用意してくれました。皆さん。残さず頂きましょう」
立食会が始まった。私たちは、食事をしながらそれぞれが、色々な人と話を交わす。お礼を言いに来る者や、戦闘時の戦果を称える者。また、命がある事に感謝する者もいた。私たちも例外ではなく、町の防衛隊に所属する兵士の人たちから声を掛けられたり、また、応援で駆け付けた冒険者から挨拶をされたりもした。
と、軍神様がこちらに近づいてくる。小声で耳打ちされた。
「今回は大変だったわね……。お疲れ様。王都に戻ったら、今回の件で話すことがあるんだけれども。それは後にして、今は楽しみましょう」
「ん? ああ。分かった」
村瀬さん…。軍神様は、「それじゃまたね」と言って去って行った。沢山の者から声を掛けられて、大変そうだ。
気になる事が一つできたが、立食会に参加したのは大成功かな。最初にこの町に来た時は、町の人たちは不安な表情だった。それが今は笑顔である。私の心が、満足感で満たされたのであった。
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