現実世界のカルマ ~『行為としての結果』が私の能力となる。転生しなかった代わりに神様から貰ったこの力でお助けマンを頑張ります~

行進12番

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第1章 本章

第28話 人々の笑顔が交差する。暗躍も交差する・後編

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 中島義行なかじまよしゆきことアイランド・ライチャスネスは、城の自室で朝を迎えようとしていた。

 窓から入る朝日が、目に染みる――。

 朝か……。起きよう。今日は色々やる事がある。
 
 朝食には……、まだ早いか。完全とは言えないが、体の疲れもそこそこ取れている。
 私は背伸びがてら、柔軟体操をする。傍に置いてあったコップで水分補給をし、頭を働かせていく。

 今日やる事は、午前中に村瀬さんの話を聞くため、会議に参加する。
 次に、お昼過ぎに冒険者ギルドへ行き、依頼の報酬を受け取る。
 その後、シティリアと語学勉強の打ち合わせ。シティリアの本宅へ行くことになるかもしれない。
 お城には帰ってこない可能性もあるな……。

 今日の話ではないが、どこかのタイミングで一度日本に戻り、向こうの現状も確認しておきたい。マリが家の管理をしてくれているとはいえ、任せっきりは申し訳ないしな……。村瀬さんなら、私よりかは日本に戻る回数が多いだろうから、完全にマリ一人というわけではなさそうだが。

 こっちの世界に来てからは自分の事で頭がいっぱいだったが、日本の異物関連については大丈夫なんだろうか。恐らく、何かあったとしたらお師匠様から通達が来るだろうから、とりあえずは何もないという事はそういう事なんだろう……。

 村瀬さんの話も気になるし、まさか……な。

 そんな事を考えつつも、時間は自分とは関係なく進んでいく。朝食を済ませ、チャップさんに事前に予定を確認する。少し時間が空いていたので、お城の訓練場で軽く体を動かす。

 実は訓練場に来たのにも、もう一つ理由がある。先日覚えた新しいカルマを試すためだ。前回の反省を込めて、やはり新しい能力を得た時は時間がある時に試しておかないとな……。

 そんなこんなで事前に、お城の庭とかに落ちている今にも折れそうな少し太めの棒きれを拾ってきてある。

 先ずははじっこを試しに普通に折ってみる。ポキッと軽い音と共に折れた。

 次にカルマを発動し、目の前にある打撃練習用のカカシに攻撃を加えてみる。

 強めに振ったせいで、その勢いと同時にパーンという打撃音が訓練場に響き渡る。

 ……。

 だが、棒きれは折れていない。思った通り。
 新しく得たカルマは、物体の耐久度を高める能力だった。

 恐らく、『町を壊されたくない』という町長の思いから、カルマが繋がったのだろう。
 非破壊……。耐久……。いや、堅牢けんろうかな……。

 堅牢けんろうのカルマと名付ける事にしよう。

 ん、そろそろ時間か。体の汗を流し、会議室へ向かう。

 時間通りに会議室に到着し、着席をする。部屋にいる人は私を含めて5人か。師匠、村瀬さん、チャップさんとリン……は執事と兵士だから椅子に座らないのかな?

 ん? テーブルの上に袋が置いてある。何だろう。

 おっと、村瀬さんが話し始める。

「さて、始めますね。今日皆に聞いて欲しいことは……。についてね」

 そう言うと、村瀬さんは袋の中から、焼け焦げた物体……? を、取り出した。

 村瀬さんの話に耳を傾ける。

「これは、隣町のビッグ・ゴブリンの胸元に埋め込まれていたものです」

 ああ。そういやシティリアが炎系の魔法で倒したんだった。それで焦げている……。

 横で黙って話を聞いていた師匠が第一声を放つ。

「これは恐らく、アーティファクトと呼ばれる類の異物と思われます」

「えっ」

 思わず声が出てしまった。リンも驚いている。チャップさんはポーカーフェイス……かな。
 折角だから質問しよう。

「あの、つまり……。裏で糸を引いていた人物がいると?」

 師匠が無言で頷く。

 私は色々な思考が交差し、考えが纏まらない。

 村瀬さんが話を再開する。

「調べてみて分かった事は少ないですが……。ゴーレムの異物と非常に近い構造をしていました。ビッグ・ゴブリンの思考は操作されていたか、操られていたかは判明していませんが、いずれにせよということです」

 師匠が付け加えるように一言を放つ。

「国としても、極秘裏に調査を行います。それと、勿論の事ですが、騒ぎにならないようにこの件は内密にお願いします」

 会議は簡素な形で終わってしまったが、凄く濃い内容だった。現状では特に何かできることは無い。だが、頭の片隅に置いておこう。とりあえず次の予定が待っている。

 私はチャップさんに今日の予定を伝え、リンと街へ出かける。

 ~街中・冒険者ギルド前【昼間】~

 冒険者ギルドに到着し、リンと私は受付へ行く。依頼完了の金銭を受け取るためだ。

 あいも変わらず冒険者で溢れかえっており、活気に満ち溢れている。

 列に並び、自分たちの番が来る。受付嬢にギルドカードを掲示し、身分を証明する。

「こんにちは。リンさんと、ライチャスネスさんですね。えーと、支払いの用意は……出来ております。準備致しますのでこのままお待ちください」

 そう言うと受付嬢はカウンターの奥へ引っ込んでいき、書類の用意をしている。

「お待たせ致しました。こちらを、お向かいの銀行までお持ちください」

 ん? 直接金銭を受け取るわけじゃないのか。

 私たちは受付をあとにし、冒険者ギルドの外へ出て、向かい側の銀行へ赴く。

 歩きながらリンが補足してくれる。

「金銭のやりとりで金額が大きい場合は、ギルドから受け取った手続き完了の支払い書を銀行に持っていくの。そうすると、銀行側でお金を管理してくれるっていう仕組みよ」

 ほう。なるほど。確かに、いきなり大金を渡されても持って帰るのに困るしな……。
 それでギルドの目の前に銀行があるわけか。

 今度は銀行の中へ入り、受付を探す。

「あっちね」

 リンが教えてくれて助かる。銀行は、ギルドとは違ってそんなに混雑していない。まばらにチラホラだ。

 受付の人にギルドカードと支払い書を渡し、手続きを行う。ギルドカードって便利。身分の照会が驚くほどスムーズ。

「えーと、一人ずつお伺いいたしますね。先ずはリン様から……。はい、後はこちらでお受け致します。そのままへ振り込みでよろしいですか?」

「ええ。結構よ」

 ん? 今……。口座って言わなかったか? ハッ! そうか!

「えーと、次にライチャスネス様……ですね。ん。ん-? 冒険者になられてからまだそんなに日も経っていないようですが、ライチャスネス様は……。口座をお持ちでないようですね」

 ぐぬ。しまった。か。

「はい。事情がありまして口座を持っていないんですが、作れますか?」

「可能ですよ。国民証明書はお持ちでいらっしゃいますか?」

 ヌオーー! これはアレだ。手続きがめんどくさくなるヤツだぁ~……。

「えーとですね。それが……」

 困っている所にリンが助け船を出す。

「銀行員さん。この方は、国に来てまだ間もないの。彼のために銀行口座を作っていただけないかしら?」

 銀行員が困り顔で返答してくる。

「はぁ。しかしですね。そうなると……」

 カウンターにズイっと肘を乗せ。小声で銀行員に話す。

「私はミオ王女殿下より、この国において、彼に対して便ように申し付けられています。大事おおごとにはできないので、内密にお願い致します」

 銀行員さんは何かを理解したようだ。

「あ、あ~、そうですね。分かりました。手続きはこちらでやっておきますので、ライチャスネス様は後日、また銀行へいらしてください」

「分かりました」

 師匠とリンに感謝。めんどくさい事にならずに済みました。本当にありがとうございます。

 銀行の外へ出て、リンにお礼を述べる。

「助かったよ。リン」

「大したことはないわ。こうなるだろうと思っていたし」

 ドヤ顔もまた可愛らしい所がある。それはさておき……。

「そうだ、リン。私はシティリアとの約束があるから、また冒険者ギルドへ行かないといけないんだ。リンはどうする?」

「ん-、そうね。私は支払いを受け取りに来ただけだし……。お城へ戻る事にするわ。っていうことで、シッチーに会ったらよろしく~」

 そう言ってリンは去って行ってしまった。

 私は再び冒険者ギルドへ行き、待合室の方へ向かう。シティリアは……まだ来ていないようだ。

 座って待っていると、見た事のある人影がこちらへ近づいてくる。

 筋骨隆々で大柄なマッチョマンな男。スタークだ。

「おっ! ライチャスネスじゃねーか! おめーもしはらぁいを受け取りにきたんか~?」

 酒クサッ。

「あ、ああ……。それよりスターク。酒臭いぞ」

「ん~? アァ。すまねぇな! 朝から一杯やっちまってよ! ついつい飲みすぎちまった! ガハハ!」

 相変わらず声がデカい。というか、酔っ払っているせいで抑制が効かんのだろうコレ。

「スターク。飲みすぎには注意しろよ。俺が言うのもなんだが……」

「ガハハッ! 分かってるってー! ほんじゃ! 俺ぁ~かえって寝るわ! んじゃなー!」

 そう言ってスタークは去って行った。ヤレヤレ。普段は頼もしい男なんだが……。

「ほんとにねぇ。酒癖悪いのよねぇ」

「うお! ビックリした! シティリア。いつからそこに……」

 いつのまにか後ろにシティリアが立っていた。忍者か。
 というか、今、心の声を読まなかったか……? ま、まぁいいか。

「ん。スタークが現れたあたりからよ。めんどくさい事になりそうだったから陰から見てたわ」

 お、おう……。

「そ、そうか。それより、シティリアも支払いの受け取りを済ませたのか?」

「ええ。私は一度ちょい前に来てたから。もう終わっているわ。ま、ここで話すのも何だし、それじゃ。お勉強に行きましょうか? ライチャスネス君♪」

「お手柔らかにお願いしますよ。シティリア先生」

 にこやかに返事をした後、語学の勉強のため、シティリアの本宅へ向かう事になった。
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