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ゲームオーバー 2
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気を失う前の記憶が、ありありと蘇る。そうだ。俺は……俺達は今、この謎の空間に閉じ込められている。それは本当に唐突だった。旅の途中、俺と仲間達は何者かによって「マウスボックス」という謎の空間へ閉じ込められた。転移魔法の一種だろう。四方が灰色のコンクリートのような壁で包まれただだっ広い室内に、底知れぬ恐怖を抱いた。
当初は魔族の仕業かと思っていたが、「神」の加護を受けている俺が悪意ある気配すら感じずに閉じ込められるはずがない。そう言い切るだけの危機察知能力が俺には備わっているんだ。こんな魔法を使った者は、俺の仲間以上の魔術師か、もしくは俺以上に「神」からの加護を受けているかだ。何にせよ、相当な手練れだ。
俺達は「マウスボックス」からの脱出を試みた。あらゆる力を使って四方の壁を壊そうとしたが、すべて効かなかった。ならばとそれぞれ頭を使って脱出の手立てを考えていると、灰色だった壁面に文字が出現したんだ。それも日本語で。
『マウスボックスへお集まりの皆さん、おはよう、こんにちは、こんばんは』
この軽快そうな挨拶の後に羅列されていたものは、命を懸けた「ゲーム」のルールだった。
その後、俺はノアと共に。そしてワイアットは獣人のレオンと共に、強制的に組分けをされて理不尽な「ゲーム」に挑む羽目となったんだ。
やりたくなかった。だが、やらざるを得なかった。勝てば生き、負ければ死ぬというデスゲームの存在は、元の世界で知っていた。鬱陶しいくらいの映画オタクがペラペラと語っていたから嫌でも知識が耳に入った。それをまさか、異世界で行うことになるとは……。
俺は暗い天井を仰ぎながらワイアットに答えた。
「ノアはたぶん、外に出たよ」
そう。「ゲーム」にはノアが勝った。そして俺は負けた。というより、負けを選んだと言った方が正しいのかもしれないが。
ワイアットも天井を見上げながら、
「じゃあ、ここは敗者が落ちる場所ってことか」
と呟くように言う。俺は彼へ視線を移した。
「敗者ってことは、お前も『ゲーム』に負けたのか? なら、レオンは……」
「ルール通りであれば、ノアと共に外にいるだろうな」
勝者はこの「マウスボックス」から脱出できる。壁面に表示されたルールにはそう記載されていた。俺達をこんな場所へ閉じ込めたやつが、ルールを守ればの話だが。
「しかし勇者のお前が太刀打ちできないとはな。お前達が挑んだ『ゲーム』はどんな内容だったんだ?」
「『ゲーム』自体はクイズに答えるだけの単純なものだった。だが、ノアを人質にされていた。俺が正解を口にすれば、ノアが敗者となり、ここへ落ちる……そういう卑劣なものだったよ」
「こちらと同じだな」
「同じということは、クイズか。よく言葉がわかったな」
「わかるも何も、母国語だ」
ワイアットが怪訝そうに眉を顰めた。どうやら、俺には日本語に見えている壁面の文字が、彼らには母国語に映っているらしい。ノアはそもそも、文字が読めなかった。
「しかし、敗者がお前でよかったよ。ここに落ちたのがノアだったら、怖い怖いと泣いていただろう」
「ワイアットはノアが苦手だもんな」
「なぜお前がアレを可愛がるのか、いまだに理解できないよ」
ワイアットは俺とノアの仲を知っている。付き合い始めた頃は、驚くとともに嫌悪にも近い表情を浮かべて俺達を交互に見ていた。異世界といえど、すべての者が同性愛を受け入れているわけではない。とはいえ、俺とノアの関係を否定することなく静かに見守ってくれているんだ。ワイアットは寛容な男だった。
「ところで」
ワイアットが床をノックするように叩いた。
「お前とならこの空間からの脱出も可能かもしれない。そう思っていたんだが……駄目だな。この部屋全体が俺達の身体から力を吸い取っているらしい。床もヒビすら入りそうにない」
「くそっ。自力での脱出は許さないってことか」
舌打ちをすると突如、重さのある何かが天井から落ちてきた。ドサドサと音を立てて目の前に現れたのは、ドワーフらしき男二人だった。
当初は魔族の仕業かと思っていたが、「神」の加護を受けている俺が悪意ある気配すら感じずに閉じ込められるはずがない。そう言い切るだけの危機察知能力が俺には備わっているんだ。こんな魔法を使った者は、俺の仲間以上の魔術師か、もしくは俺以上に「神」からの加護を受けているかだ。何にせよ、相当な手練れだ。
俺達は「マウスボックス」からの脱出を試みた。あらゆる力を使って四方の壁を壊そうとしたが、すべて効かなかった。ならばとそれぞれ頭を使って脱出の手立てを考えていると、灰色だった壁面に文字が出現したんだ。それも日本語で。
『マウスボックスへお集まりの皆さん、おはよう、こんにちは、こんばんは』
この軽快そうな挨拶の後に羅列されていたものは、命を懸けた「ゲーム」のルールだった。
その後、俺はノアと共に。そしてワイアットは獣人のレオンと共に、強制的に組分けをされて理不尽な「ゲーム」に挑む羽目となったんだ。
やりたくなかった。だが、やらざるを得なかった。勝てば生き、負ければ死ぬというデスゲームの存在は、元の世界で知っていた。鬱陶しいくらいの映画オタクがペラペラと語っていたから嫌でも知識が耳に入った。それをまさか、異世界で行うことになるとは……。
俺は暗い天井を仰ぎながらワイアットに答えた。
「ノアはたぶん、外に出たよ」
そう。「ゲーム」にはノアが勝った。そして俺は負けた。というより、負けを選んだと言った方が正しいのかもしれないが。
ワイアットも天井を見上げながら、
「じゃあ、ここは敗者が落ちる場所ってことか」
と呟くように言う。俺は彼へ視線を移した。
「敗者ってことは、お前も『ゲーム』に負けたのか? なら、レオンは……」
「ルール通りであれば、ノアと共に外にいるだろうな」
勝者はこの「マウスボックス」から脱出できる。壁面に表示されたルールにはそう記載されていた。俺達をこんな場所へ閉じ込めたやつが、ルールを守ればの話だが。
「しかし勇者のお前が太刀打ちできないとはな。お前達が挑んだ『ゲーム』はどんな内容だったんだ?」
「『ゲーム』自体はクイズに答えるだけの単純なものだった。だが、ノアを人質にされていた。俺が正解を口にすれば、ノアが敗者となり、ここへ落ちる……そういう卑劣なものだったよ」
「こちらと同じだな」
「同じということは、クイズか。よく言葉がわかったな」
「わかるも何も、母国語だ」
ワイアットが怪訝そうに眉を顰めた。どうやら、俺には日本語に見えている壁面の文字が、彼らには母国語に映っているらしい。ノアはそもそも、文字が読めなかった。
「しかし、敗者がお前でよかったよ。ここに落ちたのがノアだったら、怖い怖いと泣いていただろう」
「ワイアットはノアが苦手だもんな」
「なぜお前がアレを可愛がるのか、いまだに理解できないよ」
ワイアットは俺とノアの仲を知っている。付き合い始めた頃は、驚くとともに嫌悪にも近い表情を浮かべて俺達を交互に見ていた。異世界といえど、すべての者が同性愛を受け入れているわけではない。とはいえ、俺とノアの関係を否定することなく静かに見守ってくれているんだ。ワイアットは寛容な男だった。
「ところで」
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「お前とならこの空間からの脱出も可能かもしれない。そう思っていたんだが……駄目だな。この部屋全体が俺達の身体から力を吸い取っているらしい。床もヒビすら入りそうにない」
「くそっ。自力での脱出は許さないってことか」
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