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ゲームオーバー 3
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「何者だっ」
ワイアットが俺を庇うようにして彼らに問いかけた。一方、身体を床に叩きつけられたドワーフ達は、それぞれ背や腕を擦りながら辺りを見渡した後、俺達に向かって「助けてくれ」と縋りついてきた。
「げ、『ゲーム』に負けたっ……! 殺される……!」
「俺達は魔力石を採掘していただけなんだ……! なのに、いきなりこんな……へんてこな部屋に閉じ込められて……仲間と殺し合うような真似をさせられて……くそう。何なんだよ、ここは!」
「ワイアット……」
「ああ」
話を詳しく聞かずともわかった。見ず知らずの彼らは、俺達と同じだった。
次第に落ち着きを取り戻したドワーフ達は、
「俺はガッポ」
「俺はドズンだ」
ガッポは口元の長い髭を梳くように撫でながら、そしてドズンは大きな団子鼻をポリポリと掻きながら、名前を教えてくれた。
「俺はマサル。異世界から来た。今は魔王を倒すために勇者をやっている。隣りにいるのは戦士だ」
「ワイアットだ。よろしく」
全員がそれぞれ自己紹介を終える。すると、待ってましたとばかりに壁面が光り、文字が表示された。
『マウスボックスからヘルボックスへと移られた皆さん、おはよう、こんにちは、こんばんは。敗者のあなた方には今から罰ゲームを受けてもらいます。死よりは恐ろしくない、けれども天国まで吹っ飛んじゃうゲームです。ヘル(地獄)から天国にいけちゃうなんて最高ですね~。ただし、天国にいけるのはお一人様のみです。気をつけてね』
やはり日本語にしか見えないそれを、俺は声に出して読みあげる。最後まで読むと、ドワーフ二人の顔からサッと血の気が引いていった。
「俺達は……これから、拷問でも受けるってのか?」
「嫌だ……こんなところで、死にたくない……!」
俺の背丈の半分しかない筋肉だるまの男達が、ベソを掻いて蹲る。無理もない。俺やワイアットでまったく歯が立たないのだ。ただ魔力石を採掘するだけの彼らに、この状況で泣くなというのはあまりにも酷だった。
それでも容赦なく、壁面の文字は続きを並べ、
『それではカードをそれぞれ1枚引き、皆さんの中からプレイヤーを3人、生贄を1人、選んでください。この罰ゲームが終わった暁には、この部屋から出る選択権を与えます』
トランプのようなカードが四枚、宙に浮いて俺達の前に現れた。
「選択権……? それに、生贄って……?」
いったい何が始まるのか。そして何をやらされるのか。未知の恐怖が俺を支配しようとして、ゴクリと喉が鳴った。足も自然と壁面から離れようと後退し、怖気づいているのだと自覚した。授かったチート能力を使えないことが、今はこんなにも怖かった。
ガッポが俺のマントを掴み、必死の様子で唾を飛ばした。
「おい、アンタ勇者なんだろ! なんとかしてくれ!」
「マサルに触れるなっ」
眉を上げたワイアットが、俺からガッポを引き剥がした。なんとかできるものなら、なんとかしたい。そんなこと、百も承知だ。だが、魔法を封じられている俺は、元の世界にいた頃の俺と変わらなかった。
俺はもう一度、壁面を見上げた。おそらく、この「ゲーム」を仕組んだやつはあくまで俺達に「ゲーム」をさせたがっている。餌としてぶら下げているのはこの部屋から出るという選択権だが、これが嘘であれ、魔法が使えない今はルールに従うしかない。
「カードを引こう」
俺は震えそうになる声を抑えながら、努めて冷静にワイアットへ言った。彼は当然のように首を横に振った。
「プレイヤーはともかく、この生贄という役割が何を意味するのかわからない以上、安易にカードを引くことは……」
「だが、引かないことには進まない。もしもの時は、俺が引き受けるよ。なに、俺は天命を受けて勇者になったんだ。この世界の『神』様から加護を受けている。呪いには耐性があるし、ワイアット達が生贄になるよりは幾分マシかもしれない」
「マサル……」
とは言ったものの、正直に言えば生贄にはなりたくない。俺が勇者として活躍できていたのは授かった魔法のお陰だ。拳一つでも戦えるワイアットのように強くもない。しかし、人前でまだ格好がつけられるのは、このワイアットがいるからだ。付き合い自体は短いものの、心から信頼できる仲間だ。
「じゃあ、引くぞ。お前達も、腹を括れ」
ドワーフ二人を促し、俺達はカードを引いた。そこには……
「なんだ、これ。プレイヤー……スライム?」
「こっちもプレイヤーだ。あと、テンタクルと書いてある」
「プレイヤー……トランスフォーム?」
ガッポ、ドズン、そしてワイアットの順に、引いたカードに書かれている内容を読み上げた。三人ともプレイヤー。つまり、俺が引いたものは……
「生、贄……」
もしもの時は俺がなる。そうは言ったものの、引きたくはなかったカードだった。
途端、鼓動がドクドクと早くなる。何でこんな……急に不安になるんだ? まだ何も始まっていない。なのにまるで、死刑宣告を受けたかのようだ。
不吉の予兆。そしてそれは、すぐに明かされた。
ワイアットが俺を庇うようにして彼らに問いかけた。一方、身体を床に叩きつけられたドワーフ達は、それぞれ背や腕を擦りながら辺りを見渡した後、俺達に向かって「助けてくれ」と縋りついてきた。
「げ、『ゲーム』に負けたっ……! 殺される……!」
「俺達は魔力石を採掘していただけなんだ……! なのに、いきなりこんな……へんてこな部屋に閉じ込められて……仲間と殺し合うような真似をさせられて……くそう。何なんだよ、ここは!」
「ワイアット……」
「ああ」
話を詳しく聞かずともわかった。見ず知らずの彼らは、俺達と同じだった。
次第に落ち着きを取り戻したドワーフ達は、
「俺はガッポ」
「俺はドズンだ」
ガッポは口元の長い髭を梳くように撫でながら、そしてドズンは大きな団子鼻をポリポリと掻きながら、名前を教えてくれた。
「俺はマサル。異世界から来た。今は魔王を倒すために勇者をやっている。隣りにいるのは戦士だ」
「ワイアットだ。よろしく」
全員がそれぞれ自己紹介を終える。すると、待ってましたとばかりに壁面が光り、文字が表示された。
『マウスボックスからヘルボックスへと移られた皆さん、おはよう、こんにちは、こんばんは。敗者のあなた方には今から罰ゲームを受けてもらいます。死よりは恐ろしくない、けれども天国まで吹っ飛んじゃうゲームです。ヘル(地獄)から天国にいけちゃうなんて最高ですね~。ただし、天国にいけるのはお一人様のみです。気をつけてね』
やはり日本語にしか見えないそれを、俺は声に出して読みあげる。最後まで読むと、ドワーフ二人の顔からサッと血の気が引いていった。
「俺達は……これから、拷問でも受けるってのか?」
「嫌だ……こんなところで、死にたくない……!」
俺の背丈の半分しかない筋肉だるまの男達が、ベソを掻いて蹲る。無理もない。俺やワイアットでまったく歯が立たないのだ。ただ魔力石を採掘するだけの彼らに、この状況で泣くなというのはあまりにも酷だった。
それでも容赦なく、壁面の文字は続きを並べ、
『それではカードをそれぞれ1枚引き、皆さんの中からプレイヤーを3人、生贄を1人、選んでください。この罰ゲームが終わった暁には、この部屋から出る選択権を与えます』
トランプのようなカードが四枚、宙に浮いて俺達の前に現れた。
「選択権……? それに、生贄って……?」
いったい何が始まるのか。そして何をやらされるのか。未知の恐怖が俺を支配しようとして、ゴクリと喉が鳴った。足も自然と壁面から離れようと後退し、怖気づいているのだと自覚した。授かったチート能力を使えないことが、今はこんなにも怖かった。
ガッポが俺のマントを掴み、必死の様子で唾を飛ばした。
「おい、アンタ勇者なんだろ! なんとかしてくれ!」
「マサルに触れるなっ」
眉を上げたワイアットが、俺からガッポを引き剥がした。なんとかできるものなら、なんとかしたい。そんなこと、百も承知だ。だが、魔法を封じられている俺は、元の世界にいた頃の俺と変わらなかった。
俺はもう一度、壁面を見上げた。おそらく、この「ゲーム」を仕組んだやつはあくまで俺達に「ゲーム」をさせたがっている。餌としてぶら下げているのはこの部屋から出るという選択権だが、これが嘘であれ、魔法が使えない今はルールに従うしかない。
「カードを引こう」
俺は震えそうになる声を抑えながら、努めて冷静にワイアットへ言った。彼は当然のように首を横に振った。
「プレイヤーはともかく、この生贄という役割が何を意味するのかわからない以上、安易にカードを引くことは……」
「だが、引かないことには進まない。もしもの時は、俺が引き受けるよ。なに、俺は天命を受けて勇者になったんだ。この世界の『神』様から加護を受けている。呪いには耐性があるし、ワイアット達が生贄になるよりは幾分マシかもしれない」
「マサル……」
とは言ったものの、正直に言えば生贄にはなりたくない。俺が勇者として活躍できていたのは授かった魔法のお陰だ。拳一つでも戦えるワイアットのように強くもない。しかし、人前でまだ格好がつけられるのは、このワイアットがいるからだ。付き合い自体は短いものの、心から信頼できる仲間だ。
「じゃあ、引くぞ。お前達も、腹を括れ」
ドワーフ二人を促し、俺達はカードを引いた。そこには……
「なんだ、これ。プレイヤー……スライム?」
「こっちもプレイヤーだ。あと、テンタクルと書いてある」
「プレイヤー……トランスフォーム?」
ガッポ、ドズン、そしてワイアットの順に、引いたカードに書かれている内容を読み上げた。三人ともプレイヤー。つまり、俺が引いたものは……
「生、贄……」
もしもの時は俺がなる。そうは言ったものの、引きたくはなかったカードだった。
途端、鼓動がドクドクと早くなる。何でこんな……急に不安になるんだ? まだ何も始まっていない。なのにまるで、死刑宣告を受けたかのようだ。
不吉の予兆。そしてそれは、すぐに明かされた。
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