17 / 60
「ゲーム1」1
「ははっ! 水も滴るいい男だぜ、兄貴。さいっこう!」
ずぶ濡れになった俺を見て、雅が腹を抱えてゲラゲラと笑う。いったい何がそんなに面白いのか……。これで答えが間違っていたら、俺は死んでいたというのに。
そうはいっても、結果的には助かったんだ。ものすごく不愉快なことだけれど、ゲームに乗じて殺されなかったことだけは感謝しよう。
「……んっ」
ブルッと身体が震えた。水に浸かっていたせいで身体が一気に冷えてしまった。寒い。このまま放っておくと、低体温症にもなりかねない。雅が着ている服を貸してくれないかな……いや、無理か。互いの両腕を擦りながら、俺はまず流されてしまった眼鏡を探した。
このゲーム、俺には無理だ。練習でこのザマなんだ。ここから先、精神よりも先に肉体の方が駄目になる。セル達には悪いけれど、交代させてもらおう。
そう思っていると、雅はなおも笑いながら、何か納得したように一人「うんうん」と頷いた。
「なるほど。こういう感じのゲームね。これなら、このまま本番に入っても問題ねえな」
「えっ……!?」
眼鏡を見つけてそれをかけた俺は壁面を見上げた。
そこには、
『プレイヤーを交代しますか?』
と、問われていた。即座に俺は頷いてみせるも、プレイヤー側の雅が左右に首を振り、声高らかに宣言する。
「プレイヤーはこのまま続投だ。本番のゲームとやらを受けて立つぜ。生贄も変更なしだ」
「み、雅っ!?」
なんで俺の許可なく答えるんだ、この弟は!? 俺は交代したいんだっての!
すぐさま抗議しようと口を開くも、残念なことにそれはできなかった。水槽の時と同様、突如として俺の手首に黒い何かがシュルシュルと巻きついたかと思えば、それは手錠のように硬化して両手を拘束し、天に向かって俺の身体を引き上げた。
「うわああっ!?」
つま先立ちになった俺は悲鳴を上げた。さっきとは違う形で、身体の自由を奪われてしまったんだ。
嘘だろ? さっきあんなに怖い思いをしたのに、このまま生贄続投? それも今からが本番で……またあの死の恐怖を味わえというのか?
たぶん、今度は水責めじゃない。ではいったい、どんなペナルティを食らうのだろうか。
怯えてガタガタと震える俺は、すがるような思いで雅を見た。
対して雅は俺を気にすることなく壁面を見上げていた。だが様子がおかしい。余裕綽々で笑みすら浮かべていたはずなのに、彼の身体は俺同様、震えていた。
「み、やび……? いったい、どうし……」
「何……何だよ、これ! ふざけんなよ!!」
「雅……?」
雅は壁面に向かって唾を飛ばした。どうしたんだ? なぜ、そんなに怒っている? こっちの意志など無視して、ノリノリでゲームを続行したくせに。
怪訝に思いながら、俺は同じく壁面を見上げた。
『ゲーム1』
ゲームは本番へと進んでいた。壁面には『ゲーム0』と同じくルールが表示されており、雅はそこに書かれていることをこなすことがクリア条件だった。
だが、『ゲーム0』がクイズだった為か、雅は勝手に本番のゲームも似たようなものだと思い込んでいたんだろう。自信家雅の欠点はそこだ。これまでの人生があまりにも上手く行き過ぎていたからか、物事を深く考えない。
「嘘だろ……こんなの……」
俺は愕然とした。このゲーム、雅には絶対にクリアできない。
『制限時間1分』
再び、「60」から死へのカウントダウンが始まる。
サアッと顔から血の気が引いていくのがわかる。俺は頭上でガチャガチャと金属音を騒がしく鳴らし立てた。
「雅っ、もう時間がないっ……!」
「うっせぇ! 誰がするか、馬鹿野郎! なんで俺がっ……」
「雅っ……!」
俺以上にパニックになっている雅は、蟀谷に筋を浮かせながら怒鳴り散らした。駄目だ。完全にキレている。それはこのゲームに対してなのか、生贄として選んだ俺に対してなのか。
「うるせえんだよ、クソゴミ! 死ぬなら勝手に死にやがれ!」
雅はゲームを放棄した。その瞬間、俺の中の何かが、音を立ててガラガラと崩れていった。
『ゲームオーバー』
ずぶ濡れになった俺を見て、雅が腹を抱えてゲラゲラと笑う。いったい何がそんなに面白いのか……。これで答えが間違っていたら、俺は死んでいたというのに。
そうはいっても、結果的には助かったんだ。ものすごく不愉快なことだけれど、ゲームに乗じて殺されなかったことだけは感謝しよう。
「……んっ」
ブルッと身体が震えた。水に浸かっていたせいで身体が一気に冷えてしまった。寒い。このまま放っておくと、低体温症にもなりかねない。雅が着ている服を貸してくれないかな……いや、無理か。互いの両腕を擦りながら、俺はまず流されてしまった眼鏡を探した。
このゲーム、俺には無理だ。練習でこのザマなんだ。ここから先、精神よりも先に肉体の方が駄目になる。セル達には悪いけれど、交代させてもらおう。
そう思っていると、雅はなおも笑いながら、何か納得したように一人「うんうん」と頷いた。
「なるほど。こういう感じのゲームね。これなら、このまま本番に入っても問題ねえな」
「えっ……!?」
眼鏡を見つけてそれをかけた俺は壁面を見上げた。
そこには、
『プレイヤーを交代しますか?』
と、問われていた。即座に俺は頷いてみせるも、プレイヤー側の雅が左右に首を振り、声高らかに宣言する。
「プレイヤーはこのまま続投だ。本番のゲームとやらを受けて立つぜ。生贄も変更なしだ」
「み、雅っ!?」
なんで俺の許可なく答えるんだ、この弟は!? 俺は交代したいんだっての!
すぐさま抗議しようと口を開くも、残念なことにそれはできなかった。水槽の時と同様、突如として俺の手首に黒い何かがシュルシュルと巻きついたかと思えば、それは手錠のように硬化して両手を拘束し、天に向かって俺の身体を引き上げた。
「うわああっ!?」
つま先立ちになった俺は悲鳴を上げた。さっきとは違う形で、身体の自由を奪われてしまったんだ。
嘘だろ? さっきあんなに怖い思いをしたのに、このまま生贄続投? それも今からが本番で……またあの死の恐怖を味わえというのか?
たぶん、今度は水責めじゃない。ではいったい、どんなペナルティを食らうのだろうか。
怯えてガタガタと震える俺は、すがるような思いで雅を見た。
対して雅は俺を気にすることなく壁面を見上げていた。だが様子がおかしい。余裕綽々で笑みすら浮かべていたはずなのに、彼の身体は俺同様、震えていた。
「み、やび……? いったい、どうし……」
「何……何だよ、これ! ふざけんなよ!!」
「雅……?」
雅は壁面に向かって唾を飛ばした。どうしたんだ? なぜ、そんなに怒っている? こっちの意志など無視して、ノリノリでゲームを続行したくせに。
怪訝に思いながら、俺は同じく壁面を見上げた。
『ゲーム1』
ゲームは本番へと進んでいた。壁面には『ゲーム0』と同じくルールが表示されており、雅はそこに書かれていることをこなすことがクリア条件だった。
だが、『ゲーム0』がクイズだった為か、雅は勝手に本番のゲームも似たようなものだと思い込んでいたんだろう。自信家雅の欠点はそこだ。これまでの人生があまりにも上手く行き過ぎていたからか、物事を深く考えない。
「嘘だろ……こんなの……」
俺は愕然とした。このゲーム、雅には絶対にクリアできない。
『制限時間1分』
再び、「60」から死へのカウントダウンが始まる。
サアッと顔から血の気が引いていくのがわかる。俺は頭上でガチャガチャと金属音を騒がしく鳴らし立てた。
「雅っ、もう時間がないっ……!」
「うっせぇ! 誰がするか、馬鹿野郎! なんで俺がっ……」
「雅っ……!」
俺以上にパニックになっている雅は、蟀谷に筋を浮かせながら怒鳴り散らした。駄目だ。完全にキレている。それはこのゲームに対してなのか、生贄として選んだ俺に対してなのか。
「うるせえんだよ、クソゴミ! 死ぬなら勝手に死にやがれ!」
雅はゲームを放棄した。その瞬間、俺の中の何かが、音を立ててガラガラと崩れていった。
『ゲームオーバー』
あなたにおすすめの小説
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。
牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。
牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。
そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。
ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー
母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。
そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー
「え?僕のお乳が飲みたいの?」
「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」
「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」
そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー
昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」
*
総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。
いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><)
誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。