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「ゲーム2」3

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 バイロンは悲痛そうに眉を寄せて、俺の前で頭を下げた。

「俺達がついていながら、ミヤビを守ってやることができなかった。すまない」

 責められるものだとばかり思っていた。だからバイロンのこの言動は予想外で、俺は狼狽えることしかできなかった。

「そんな……そんなの……謝るのはバイロンじゃなくてっ……」

「すまない」

「か、顔を上げて、バイロン。雅が罰を受けたのは、バイロン達のせいじゃ……」

 そこまで言ってハッとした。これはついさっき、セルの前で俺が言ったことと同じじゃないのか? と。そしてようやく気づいたんだ。

 そうだ。雅が罰を受けたのは、誰のせいでもない。この理不尽な状況を作った黒幕のせいなんだ、と。

 ゲームに参加しなければ脱出できないというルールから、すべてに従わなければならないとつい思い込んでしまっていた。だからといって、この中の誰かが罰を受けていいはずがない。それは俺自身にも言えることだったんだ。

 俺はバイロンに顔を上げてもらい、彼の首元に巻きつけられている首輪に視線をやった。

「今さらだけど、バイロンがここに来て、首にそれをつけてるってことは、次のプレイヤーはバイロンってことでいいんだよな?」

「ああ。戻ってきたセルから端的に説明は受けた。あの壁面に表示されるルールに従えばゲームクリアになり、ここから脱出できるんだろう?」

「うん。でも、そのゲーム数が残りいくつあるのかはわからないんだけどね。『チュートリアル』はただのクイズ……問答だったんだけど、本番からその…………き、キス……しろって……傾向がガラッと変わっちゃって……」

「それも見ていたから知っている。あの状況でセルと接吻を始めたものだから、ルイスと共に少々驚いてしまったが……」

「う……」

 そう言われて、俺は俯いた。ゲームの一部始終を見られていたことはわかっていたはずなのに、セルとのあの濃厚なベロチューまでバイロン達に見られていたのかと思うと、顔から火が出るようだ。

 ついでにセルの唇の感触まで思い出してしまった。うう……同じ男なのに滑らかで、柔らかかったなぁ。俺は自分の唇を隠すように、手の甲で押さえた。

「今後も……そ、そういったルールが表示されるのかもしれない。その時は……ごめん……」

 相手が俺で、という意味でバイロンに謝ると、彼は首を傾げた。

「何故、スグルが謝るんだ?」

「なぜって……相手がこんな俺、だからだよ……」

 これが絶世の美女相手なら、命懸けのゲームでもやりがいはあっただろう。しかし実際の生贄は、大して見た目もよくないただの陰キャ映画オタクだ。しかも男。キス以上のことが待っていたら、雅のように拒否されても仕方がないけれど、命が懸っているのはプレイヤー自身だからな……。嫌だろうが吐きそうだろうが、やるしかない。

 せめて魔法で顔くらい変えられればいいんだろうけれど、無能の俺にそんな芸当ができるはずもない。できるのは、こうやって事前に謝っておくことくらいだ。

「……スグル。一つ、質問をしてもいいか?」

「え? うん」

 何だろう? と、俺はバイロンを見上げた。

「セルとの接吻は嫌だったか?」

「へ?」

 いきなり何の質問だ? と呆気にとられてしまったけれど、バイロンは「どうなんだ?」と言わんばかりの顔で俺を見つめた。

 俺は「ええと……」と、考えるように視線だけを天井にやった。

「命が懸かっていたし……嫌とか、不快とか、嫌悪を感じている暇も、なかった……かな」

「つまり嫌ではない、と」

「う、うん」

 むしろあちらの方が嫌だったんじゃないだろうか。俺は頷きながらそう思った。

 するとバイロンは、自分の顎に拳を添えながらボソッと呟くように言った。

「なら……大丈夫か」

「え、何? よく聞こえなかっ……」

「それより、壁面の文字が変化したみたいだぞ」

「えっ?」

 俺が聞き返すよりも先に、バイロンが壁面を見上げながら指をさした。そこには……

『ゲーム2。

・プレイ人数2人。プレイヤー1、生贄1。

・クリア条件→プレイヤーが生贄の両手あるいは両足の爪をすべて剥ぐこと。もしくはプレイヤーが生贄の半身(上半身、下半身のどちらか)を余すことなく舌で舐めきること。どちらか一方を選び、実行しなさい。制限時間は30分。

・注意事項→魔法の使用は可。時間切れ、または生贄が気絶した場合、失格とする』

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