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ドキドキ? 学園生活♪ 【葉月 side】
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「終わった~……テスト~……」
「お疲れ。がんばったね」
「葉月も、お疲れさま。はあぁ~……」
放課後。テストから解放されるなり、盛大なため息をつきながら机の上に突っ伏した柳。でも次の瞬間にはぱっと顔を上げて「はとりさんのココア~♪」と、今から向かう「ロワゾ」へと思いを馳せていた。あ~そっか。柳は「ロワゾ」へ行くの、久々だもんな。浮かれる気持ちもわかるし、何より幸せそうな柳の顔、超可愛い。
そして下校時刻丁度に、柳と俺の携帯へツインズから連絡が来た。今はテスト週間だからってことで、部活動は強制的に休みだし、生徒会活動としても書記と会計の出る幕はないらしい。そんな理由で、奴らもこのまますぐに「ロワゾ」へ向かうことが出来るとのこと。
ふ~ん。なるほどね。
メールより電話派の俺は、チャチャッと着信をかける。コールは一回。相手はすぐに出た。
「もしもし~? 片岡君~。真だよ~
うげっ。超絶に気持ち悪い猫撫で声。真実の片割れ、真だとかほざくがおそらく実だろう相手は、俺に対して媚を売るかのようななよなよしい口調で応対する。奴らの周りが信者だらけにしたってこれはないわ。
ドン引きしつつも、俺は短く用件のみを伝えた。
「楠木さんとこ行く前に、例のパイプ役に会いたい。お前ら、柳と一緒に先に行っててくれ」
「おっけ~」
猫を被っているが、やや上機嫌のツインズ。そりゃそうだ。柳と一緒に、ってことで嬉しくないわけがないんだから。どうせ奴らのことだ。信者どもに後をつけられないよう独自ルートを設けてやがるだろう。OKを出したってことはそれが可能だってことだ。昼食の時みたいに、柳とどこかで合流した後に、「ロワゾ」へ行ければそれでいい。
そしてすぐに柳の携帯へメールが届く。真実からだった。ホントこういうことだけは仕事が早いな。
俺はメールを読んでいる柳に、「ロワゾ」で会おうねと伝えると、すぐに保健室へと向かった。
なにも今日じゃなくとも、と思う自分がいたのも確かだけど。転校早々、しかも俺らの様な連中のパイプ役にわざわざなってくれた人がいるんだ。挨拶ぐらいきちんとしなければ、これから先、社会人として生きていく上でも駄目だろう。
ってのは、後付けの理由で。ホントはもっと単純だった。どんな人物なのかこの目で確かめたい。ホントに俺達に協力してくれる人物なのか。何より、柳のことを受け入れてくれる人間なのか。どれだけの器の者なのか。それを確かめたい。それだけだ。
保健室は本校舎の少し外れた所にある。一階の北側。馬鹿広いグラウンドの傍。挨拶が表向きの目的だから、他に関係のない人間がいたとしても問題はない。そもそも、やましい理由なんかないんだし。どんな人物なのか、この目で確かめられればそれでいい。
保健室の前に立つと、俺がノックするよりも前に「どうぞ」と、中性的な落ちついた声が聞こえてきた。足音はなるべく立てないよう配慮していたつもりだったけど、これを感じ取れたということは中には養護教諭以外、誰もいないのか?
「失礼します」
「うおっ!? お、おう。なんだ。片岡か……」
「加藤先生?」
ドアを開けると、視線の先には二人の大人がいた。一方は白衣を着ていたけど、もう一方はなぜか俺の知ってる担任だった。ん? この人、確か数学教諭だろ? なんでこんなとこに用があるんだ? 体調が悪そうにも見えなかったけど。
しかもなんだか慌てた様子。よく見ると、白衣を着ている方の大人に、え? そこまで? ってなくらいに密着していた。しかもこう、机の上に押し倒さんばかりの。
……。
マジかよ。
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