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ドキドキ? 学園生活♪ 【葉月 side】

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 ああ、もう。転校早々なんなのって、俺は正直うんざりとしていた。鈍痛の走る腹部を庇いながら、ぜぇぜぇと息を切らす。先に言っておくが、「ロワゾ」までマラソンをしていたとか、そんなんじゃない。

 下校した俺とツインズの片割れは、ただ「ロワゾ」へ向かっていただけだった。はしゃいでいたわけでもなく、誰かれ構わず喧嘩を売っていたわけでもなく。ただ、柳の待つ「ロワゾ」へチャリを引きつつ歩いていただけだった。

 それがだ。

「アンタら……実は暇なの?」

「うるせぇ。黙ってろ」

 なぜか今、この超絶不機嫌不良野郎どもに囲まれている。理由? そんなん知るかよ。しかしどうやら、待ち伏せはされていたらしい。俺は柳のことで頭がいっぱいだったってのもあり、つけられていることに気づかなかった。片割れも同じだったことだろう。

 そして、奴らの狙いは俺だったようだ。マジかよって心の中で舌打ちすると、それに気づいた片割れが……

「じゃ、悪いな。片岡!」

 そう言って俺のチャリを奪うように跨ると、奴はその場からピュッと去っていった。あの野郎……俺を置いて自分だけ逃げやがった。かといって嘆く暇などなく、同時に俺も奴らから逃げるようにその場を離れた。

 だが、まぁ、無理だわな。こいつ等、不良だし。有名だし。奴らは俺に一発かまして捕らえると人通りの少ない場所へと引きずり込んでいった。廃屋? 工場跡みたいなところ。誰もいねえ、絶好の場所ってやつ。数はひぃ、ふぅ……全部で五人か。

 そんで? 俺を捕らえろって命じたのは、ここで待ってたヘッドさん? はっ。こんな早々、顔なんて出していいのか? アンタ。

「なんでそう、俺に構うの……エセ風紀委員長。学校での顔はどうしたよ?」

「ここは学校じゃない。このホラ吹き野郎が」

 ペッと唾を吐き捨てると、奴はいきなり俺の腹部を蹴り上げた。

「ぐっ!?」

「お前が『ブレット』だと? ふざけるなよ」

 捕らえられたって言っても、奴らに一発喰らわされただけで、大した怪我はしてなかった分、いきなりこの風紀委員長こと「レッドドラゴン」のヘッドである草加部に、鳩尾を思い切り蹴りあげられたせいで、俺の内臓は悲鳴を上げた。

 やっぱ喧嘩慣れしてる分、威力あるわ……。骨がイってないだけマシだけど。

 ゲホゲホと咳き込みながら地に伏せる俺を、奴は忌々しそうに見下ろしてきた。

 「レッドドラゴン」。そのヘッドとなるこいつの今の姿は、今朝見たあの風紀委員の姿ではなかった。

 学生服の上は着ておらず、別の皮ジャンをその身に羽織り、髪型を崩してスプレーかなんかで赤く染めている。耳の周りには派手なピアスをグサグサと刺しており、両目には頭髪同様の赤いカラコンを入れている。どっからどう見ても素行のよろしい少年ではない。それに加えてこの険しいツラ。眉間にすげぇ皺を寄せていて、不機嫌なことこの上ない。このヘッドの機嫌の悪さにビビってんのか、周りの奴らの態度も強張っているように見えた。

 何? そんなにアンタを怒らせるようなことしたか? 今日。しかもホラ吹きだって?

「ゲホ……何の、ことだよ?」

「お前、『ブレット』だと抜かしたらしいな? あの『circus』の」

 は? と、聞き返しそうになる前に思い出した。まさか、今日の俺らの会話、どこかで聞いてたのか? かといって、言いふらしていたわけでもねぇし、柳と話したくらいだけど……。

 それが何だ? 俺、こいつをここまで怒らせる理由なんてねぇぞ? 俺は奴を見上げながら、とぼけた振りをして見せる。

「あのって、どの『circus』だよ。知らねぇよ、そんなもん」

「ふざけんな」

「がっ……!」

 再び、鳩尾を蹴られる。いってぇ……なんてもんじゃねぇ。ゲロ吐きそう。ゲホゲホと咽る気管支。そして、込み上げてくるあの酸っぱい嫌な味。


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