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ドキドキ? 学園生活♪ 【葉月 side】
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わけがわからない。けれど、野郎がすげぇ切れてるってことだけは、その殺気染みたオーラでわかる。こいつ、この事態を誰かに見られようが関係がねぇほど、相当頭にキているらしい。
「ブレット」。その単語を口にして、それがさも俺であるかのように言っただけのことで? はっ。もしもその「ブレット」が、違う「ブレット」だったら、こいつ、その責任が取れるってのか?
だがまぁ、そういう問題じゃないな。今はこの状況からどう逃げるかだ。さすがに、体格が良くて喧嘩慣れのしている奴ら五人を相手にすんのは無理だ。
だからといって、ただただやられるのは性に合わない。平和的な解決策は「逃げる」だった選択肢を俺から取り上げたんだ。せめて奴らのHPを半分は確実に落としてから逃げる……が、ボコられる理由くらいははっきり知っておきたいもんだ。
腹を抑えながら、奴に尋ねた。
「ゲホ……で、俺に……ゴホッ……何の恨みがあるんだよ」
素直に教えてくれるなんて期待はしていなかったけれど、意外にも草加部はその理由を吐き捨てるように口にした。
「てめぇが転校生だろうが、『circus』のメンバーだろうが、そうでなかろうが関係ねぇ。俺はな、『circus』のヘッドである『ブレット』の名を偽物なんかに軽々しく名乗られたのが気に入らねぇんだよ」
そう言ってしゃがみ込むと、俺の前髪を鷲掴んで顔だけを上げさせる。眼前の偽物の赤い目が、射抜くかのように鋭かった。
「てめぇは『ブレット』じゃねぇ」
「……」
よほど、「ブレット」を偽物に語られるってのが嫌らしい。まさか、とは思う。いや、けど。こいつ。
こいつ。まさか……
「『ブレット』は……女だ」
「……っ」
マジかよ……。
ヒュッと喉の奥が鳴る。それと同時に、草加部は俺の頭を乱暴に放り投げた。グラグラと回る目の前で、奴は勝手に語り出した。
「あの橘と一緒にいるくらいだからな。てめぇも何らかの……いや、『circus』の一人なのは間違いねぇんだろう。だからといって、そのヘッドである『ブレット』の名を語ることが許されると思うなよ」
「circus」のヘッド……「ブレット」。
その台詞を耳にしながら、俺の脳裏にはある人間の顔が浮かび上がった。
「あれは俺が認めた女だ。他のチームであろうが、んなのは関係ねぇ。だがな、俺はお前ら『circus』を認めたわけじゃねぇんだよ。あくまで俺が認めているのは『ブレット』だけだ」
「……」
『葉月』
屈託のない笑顔と共に、無邪気に呼んでくれる俺の名前。心地良いほど柔らかい、温もりのある優しい声音。
ずっと変わらない、あの真っ直ぐな、意思の強いバイオレットの瞳。
俺の頭の中の彼は、ずっと変わらない存在だった。ずっと変わらない……孤高の存在。
「『ブレット』を勝手に語るな。いや、俺の前で二度と! その名を勝手に口にするんじゃねぇよ」
それがなんだろう。なんなんだろうね。
……なんなんだろうね。本当に。本当に、参っちゃうよな。
そんな風に言われてさ。そんな風な印象を持たれてさ。そんな風に見られてさ。本当に。本当に……。
本当に……。
「最悪だよな……」
「あ?」
グッと地に手の平を当て、そのまま腕に力を込める。這い上がるように身体を起こすと、草加部は怪訝に思ったのか、片眉を上げてみせる。周りの奴らが動いたが、それを草加部が手で制した。
力が入れば立ち上がりたかったけれど、思ったよりもダメージはでかかったようだ。上体を起こすので精一杯だった。尻餅をついて、奴の顔を睨み上げる。
ぶっちゃけ、俺は切れていた。
「お前ら、『circus』の何を知ってんの? 何を見て、聞いて、俺らとお前らを一緒くたにしちゃってんの? なぁ?」
自分でもびっくりするくらい饒舌だった。けれど、切れてる時に冷静に話すことができるんだったら、俺はできた人間だと思う。冷静になれないことが、子供だから仕方がないだとか、甘えるつもりはない。だが、それがなんだ。それがどうした。
俺は今、目の前のこいつ等にぶち切れているんだ!
「知らねぇようだから言うけどさ。『circus』はお前らの様なチームでも、存在でもねぇんだよ。『circus』はなぁ、俺らの様な……ガキもいいとこガキの、どうしようもねぇガキどもで成り立っちゃいるけど、俺らの様な人間が一番求めているチームなんだよ」
「何、言ってやがる?」
草加部はたじろぐ様を見せた。それは俺が凄んでいる所為なのか、それとも事態が理解ができない所為なのか……。
だが、そんなもんは知るか。つーか、てめぇの事情なんぞ知るか。どうでもいい。ふざけんな。
別になりたくて有名になったわけじゃない。ところかまわず喧嘩したわけじゃない。確かに、強いことや強くなったことは認めるけど、俺らは悪名で通るようなことは一切していない。
俺らは…… 俺らは……!
「ただのボランティア団体なんだからさ……」
「はぁ?」
法人格はないから、任意ボランティアだけどな……学生の。
「ブレット」。その単語を口にして、それがさも俺であるかのように言っただけのことで? はっ。もしもその「ブレット」が、違う「ブレット」だったら、こいつ、その責任が取れるってのか?
だがまぁ、そういう問題じゃないな。今はこの状況からどう逃げるかだ。さすがに、体格が良くて喧嘩慣れのしている奴ら五人を相手にすんのは無理だ。
だからといって、ただただやられるのは性に合わない。平和的な解決策は「逃げる」だった選択肢を俺から取り上げたんだ。せめて奴らのHPを半分は確実に落としてから逃げる……が、ボコられる理由くらいははっきり知っておきたいもんだ。
腹を抑えながら、奴に尋ねた。
「ゲホ……で、俺に……ゴホッ……何の恨みがあるんだよ」
素直に教えてくれるなんて期待はしていなかったけれど、意外にも草加部はその理由を吐き捨てるように口にした。
「てめぇが転校生だろうが、『circus』のメンバーだろうが、そうでなかろうが関係ねぇ。俺はな、『circus』のヘッドである『ブレット』の名を偽物なんかに軽々しく名乗られたのが気に入らねぇんだよ」
そう言ってしゃがみ込むと、俺の前髪を鷲掴んで顔だけを上げさせる。眼前の偽物の赤い目が、射抜くかのように鋭かった。
「てめぇは『ブレット』じゃねぇ」
「……」
よほど、「ブレット」を偽物に語られるってのが嫌らしい。まさか、とは思う。いや、けど。こいつ。
こいつ。まさか……
「『ブレット』は……女だ」
「……っ」
マジかよ……。
ヒュッと喉の奥が鳴る。それと同時に、草加部は俺の頭を乱暴に放り投げた。グラグラと回る目の前で、奴は勝手に語り出した。
「あの橘と一緒にいるくらいだからな。てめぇも何らかの……いや、『circus』の一人なのは間違いねぇんだろう。だからといって、そのヘッドである『ブレット』の名を語ることが許されると思うなよ」
「circus」のヘッド……「ブレット」。
その台詞を耳にしながら、俺の脳裏にはある人間の顔が浮かび上がった。
「あれは俺が認めた女だ。他のチームであろうが、んなのは関係ねぇ。だがな、俺はお前ら『circus』を認めたわけじゃねぇんだよ。あくまで俺が認めているのは『ブレット』だけだ」
「……」
『葉月』
屈託のない笑顔と共に、無邪気に呼んでくれる俺の名前。心地良いほど柔らかい、温もりのある優しい声音。
ずっと変わらない、あの真っ直ぐな、意思の強いバイオレットの瞳。
俺の頭の中の彼は、ずっと変わらない存在だった。ずっと変わらない……孤高の存在。
「『ブレット』を勝手に語るな。いや、俺の前で二度と! その名を勝手に口にするんじゃねぇよ」
それがなんだろう。なんなんだろうね。
……なんなんだろうね。本当に。本当に、参っちゃうよな。
そんな風に言われてさ。そんな風な印象を持たれてさ。そんな風に見られてさ。本当に。本当に……。
本当に……。
「最悪だよな……」
「あ?」
グッと地に手の平を当て、そのまま腕に力を込める。這い上がるように身体を起こすと、草加部は怪訝に思ったのか、片眉を上げてみせる。周りの奴らが動いたが、それを草加部が手で制した。
力が入れば立ち上がりたかったけれど、思ったよりもダメージはでかかったようだ。上体を起こすので精一杯だった。尻餅をついて、奴の顔を睨み上げる。
ぶっちゃけ、俺は切れていた。
「お前ら、『circus』の何を知ってんの? 何を見て、聞いて、俺らとお前らを一緒くたにしちゃってんの? なぁ?」
自分でもびっくりするくらい饒舌だった。けれど、切れてる時に冷静に話すことができるんだったら、俺はできた人間だと思う。冷静になれないことが、子供だから仕方がないだとか、甘えるつもりはない。だが、それがなんだ。それがどうした。
俺は今、目の前のこいつ等にぶち切れているんだ!
「知らねぇようだから言うけどさ。『circus』はお前らの様なチームでも、存在でもねぇんだよ。『circus』はなぁ、俺らの様な……ガキもいいとこガキの、どうしようもねぇガキどもで成り立っちゃいるけど、俺らの様な人間が一番求めているチームなんだよ」
「何、言ってやがる?」
草加部はたじろぐ様を見せた。それは俺が凄んでいる所為なのか、それとも事態が理解ができない所為なのか……。
だが、そんなもんは知るか。つーか、てめぇの事情なんぞ知るか。どうでもいい。ふざけんな。
別になりたくて有名になったわけじゃない。ところかまわず喧嘩したわけじゃない。確かに、強いことや強くなったことは認めるけど、俺らは悪名で通るようなことは一切していない。
俺らは…… 俺らは……!
「ただのボランティア団体なんだからさ……」
「はぁ?」
法人格はないから、任意ボランティアだけどな……学生の。
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