最恐の精霊姫様は婚活を希望します

梛桜

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プロローグ

生まれました、初めまして。

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 バタバタと忙しなく走り回る侍女達の足音が、ある一室へ消えていく。部屋の前では熊のように大柄の男性がウロウロと、それこそ熊が餌でも探しているような動作で落ち着かない。まぁ、熊ではなく僕の父上グリンディア・キャスト=フローライト辺境侯爵なのですが。
 そんな挙動不審の父上に、一番下の弟のルシアンは僕の服にしがみ付いてプルプル震えている。母上そっくりな弟がやってるから可愛いが、父上そっくりな上の弟だと似合わないなーと、少し笑ってしまいそうになった。

「父上、ルシアンが怖がっていますよ。もう少し落ち着いてください」
「椅子もありますよ! お座りになってください」
「ん? あ、ああ…。すまない、どうにも落ち着かなくてな」

 自分にそっくりな八歳になったばかりの長男と六歳の二男に窘められ、苦笑を浮かべつつも視線は閉じられた扉へと向けられている。何度目かの溜息を零したその時、固く閉じられた扉が開き、笑顔を浮かべた母上の侍女が顔を出した。

「御生まれになりました、とても可愛らしいお嬢様です!」
「ほ、本当か!?妻は、ティファーナは無事なのか?」
「はい、母子共にお元気です」

 掴み掛からん勢いで侍女を問い詰めていたが、長年屋敷に勤めている侍女は慣れたもので、屋敷の主人の行動には怯えたりしない。それよりも、今にも泣き出してしまいそうな情け無い顔に、笑いを堪えるだけでも精一杯だったようで口元が引きつっている。

「父上、母上にお逢いしたいです」
「父上、早く!僕も会いたいです!」
「ははうえー」

 左右後方から服を掴まれ、引っ張られして我に返った父上は、呼吸を整えどうしてもニヤついてしまう顔に気合を入れて部屋へと足を踏み出した。
 いつもなら天蓋が掛けられた柔らかなベッドには、まだ数人の侍女が片づけをしている。ふわりと消毒液の匂いが鼻を擽るが、直ぐに甘い香りに包まれる。

「母上!」
「ははうえー!」

 フォルスとルシアンは二人揃って母上に走りより、微笑みかけられて嬉しそうに笑っている。後ろにいる僕と父上に気付いたけど、穏やかな顔をしていたのに、我慢出来ないと笑い出した。

「なんて、顔をしていらっしゃるの?旦那様」
「ティ、ティファーナーぁ」
「部屋に入って直ぐだなんて、最短記録じゃないですか?」
「いいえ、一番はカーネリアン貴方が生まれた時よ。産声を聞いて泣きだしたそうだもの」

 クスクスと可愛らしく笑う母上は、これで四人の子供の母なのに、妖精の様にとても可愛らしい女性だ。今は男泣きしている父上だが、見ている方は結構怖いが、家族大好きな方なのでそんな姿も微笑ましいのだろう。メイド達は皆笑顔で見守っている。

「兄上、小さいですよ」
「あかちゃんー」

 弟二人に呼ばれて母上の隣を見ると、温かそうなおくるみに包まれた赤ん坊が眠っている。頼りなげな小さなその身体を見る度に、僕が守るんだという思いが沸き起こる。それは、妹をみている弟達も同じ様で、妹が産まれたのがよく分からないかも?と思っていたルシアンでさえ、頬を紅く染めて嬉しそうに妹を見つめている。

「お前たちの妹だ、名はセラフィナ。セラフィナ・コーディエ=フローライトだ」
「セラフィナ!」
「せらふぃ?」
「セラフィナだよ、ルシアン。僕達皆で、妹を大事に守っていこうね」
「はい!」
「勿論です!」

 つるりとして柔らかな頬を撫でていると、薄っすらと瞳が開きじっと見つめられる。ぎゅっと握りしめていた手が伸ばされ、小さな掌が開いたその瞬間、コロンっと床に何かが転がり落ちた。小さな白黒が混じった石と、綺麗な赤い石。

「何だ? もしかして…魔術石か?」
「あら…。どうして魔術石がセラフィナの手に?」
「いいえ、これは精霊石ですよ」
「母上…?」
「お義母様、精霊石とは?」
「このフローライト侯爵家に代々伝わる話でね、私の祖父もそうでした。そう、この子が精霊使いの血を受け継いだのね…」
 
 お産の手伝いをしていた祖母が其の石を見つめて、懐かしいような嬉しいような顔をしていた。まだ子供の僕には精霊使いと言うものが何なのかを教えては貰っていませんでしたが、成長すれば分かるようになるのでしょうか?


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