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プロローグ
三歳になりました。
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肩まで伸びたふわふわの藍色の髪と、ぱっつんな前髪から覗くお母様譲りの紫の瞳をキョロキョロと動かす。覚束ない足取りでヨチヨチと屋敷を歩き回っているけれど、既に自分が何処にいるのかは分からない。小さな子供の視線というのは、何もかもが大きくて、迷子のアリスになったかのよう。
三歳児の思考ではないと言われてしまいそうですが、その通りです。
詳しくは分からないのですが、私セラフィナ・コーディエ=フローライトには、異世界の大人の女性であった記憶が残っているようなのです。といっても、私が生まれたこの世界では、所謂転生者や異世界からの迷い子というのが稀にあるそうです。確立で言えば一万人に一人といったところです。
私は多分記憶を保持している転生者というのに当て嵌まるのでしょうが、前の自分も今の自分もどこかぼんやりとしています。まるで視力が悪いのに眼鏡をしていないといった感覚でしょうか?『転生』を知っているのは、勉強をしている兄達にくっ付いて家庭教師の授業を聞いていたからです。
(まぁ、かぞくのだれも、てんせいにはきづいていませんが)
転生者や迷い子だからといっても、人狩りに遭うとか攫われるという訳でもありません。理由としては、異世界の知識を然程持っていない所為だと思います。成長するに従って忘れてしまったり、迷い子だとしても、年齢的に若い子供が多いのかも知れませんね。
「ふぅ…。ちかえた」
小さく溜息を零して、床にぺたんと座り込みました。今の私には三歳児の体力しか有りませんので、屋敷の探索だけでも大冒険なのです。お菓子を取りに行ってくれている侍女の後ろをこっそりと付けてみたら、うっかり自分の部屋へと帰れなくなったのです。
うっかり迷子さんです。
こんな時、兄達が勉強している魔術石の帰還の術があれば一瞬で帰れるのですが。屋敷で帰還の術とか、下手したら無意味ですし勿体無いですね。やっぱり、自力で侍女さんか使用人さんを探しましょう。
「うーん…」
キョロキョロと周りを見渡して、誰も居ないのを再確認。このまま此処にいるべきか、歩き出して人の気配を探すべきか。悩んでしまいます。本当の幼児なら、大泣きでもしているんでしょうけど、無駄に大人の思考があるのでそれも出来ないようです。
― チリンッ
「…あえ、なぁに?」
何かに呼ばれた気がして視線を一画へと向けると、ぼんやりと温かな光に包まれた壁が見えました。歩くのは疲れたので、はいはいで壁に近付きそっと手を添えると、どんでん返しの壁みたいにクルンと壁の中へと引き込まれてしまいました。
「ふおっ! しゃ、しゃんしゃーのおもしゃなのに!」
壁の中は真っ暗闇かと思ったのに、ぼんやりと温かな光はそのままです。細い道が続いているので、このまま歩いて行けという事でしょうか?よいしょっと立ち上がって私はそのまま誘いに乗ることにします。
「ちょっと、たのししょうねー」
ふんふん~♪と鼻歌を歌いながらヨチヨチと歩みを進め、たどり着いた先にあったのは、年季の入った宝箱が一つ。大きさは新書サイズの小箱ですが、冒険には付き物ですね!でも、幾ら自分の家の隠し部屋にあったとはいえ、お約束の罠を心配したほうがいいのでしょうか?
宝箱をじっくりと見ても、彩られる煌びやかさは全く無く、今の私でも簡単に開けられそうな木の箱です。コンコンとノックして、耳を箱に寄せてみた所で何も分かる訳も無い。さて、どうしようかと考えますが、ここは潔く『宝箱を開ける』一択ですね!
「えいしっ」
勢いをつけて宝箱を開いてみると、中に入っていたのは細工も見事な銀色の腕輪でした。
手にとって見てみると、細やかな花と草の模様が綺麗に入れられ、一定間隔で何かを入れられる窪みがあります。
「ふむ、こにょおおきしゃ…」
くるっと腕輪を眺めて、今度は首に付けられている御守りの袋を取り出した。この中には私が生まれる時に握っていた精霊石が入っている。短い指先で苦労しながら袋の口を開いて、小さな掌にコロンと転がる精霊石を取り出して、窪みへとあわせてみる。
― カチリッ
綺麗に合わさったと言わんばかりの音が聞こえ、腕輪には白黒の精霊石が納まった。
「おおー!おもったとーい…いぃ!?」
目の前に翳して喜んでいたのに、いきなり輝きだす腕輪。眩しさに目を閉じてジッとしていると、足元にふわりと柔らかな感触がして目を開いた。
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