最恐の精霊姫様は婚活を希望します

梛桜

文字の大きさ
4 / 25
プロローグ

危険な精霊石

しおりを挟む



 皆様こんにちは。セラフィナ・コーディエ=フローライトです。私は現在クオンの案内によって、出口へと向かっています。一方通行かと思っていたら、ちゃんと出口はあるそうで話をしながらのんびりと向かっています。

(せいれいせきには、まだまだいしがつかえそう…)

『もうちょっとやさかいなー、このまままっすぐや』
「ねー、くーちゃん。こえってぇ、まらあうの?」
『ん?精霊石か?そやな、猫の精霊はあとわい入れてあと三つは欲しいなぁ』
「なんな…の?」

 クオンの言い方だと、後確実に三つは猫精霊の石があるように聞こえます。そして、この手の中にある精霊石は、猫の精霊のものでは無いという事も分かりました。
 御守りにしている小袋を軽く掴み、じっと見詰めているとクオンの向いている方角から漏れ出している光に気がついた。

『お、着いた見たいやな』
「ろーやってあくの?」
『押すんや、ぐいーってな』

 入り口のようにどんでん返しとは行かないようで、クオンの言葉を信じた私は、ふんすっと気合を入れて石の壁を力一杯押しました。ええ、ちゃんと力一杯押したんですよ。なのに扉は触れただけで、又くるんと軽々開いてしまったのです。勿論、そのまま転がり出たのは言うまでもない。

 幼児は頭が重いんですよ、これ大事なことですからね!?重心が頭なんですよー!転がると危険なんですからね!


 ―― 頭から転がり出てきた先は、屋敷の裏庭でした。


「くおんのうしょちゅき」
『なんでーなー、わい嘘吐いてへんでー』
「おもっきりおせ、いっちゃ!」
『あーもー、しゃあないなぁ。いたいのいたいのーとんでけー!』

 ぶつけた頭が痛くて押さえてぷるぷると半泣きになっていた私の頭を、クオンがよしよしと肉球で撫で撫でしてくれました。ぷにぷにの肉球さんは気持ちいいので、もっとして欲しい。いや、しろ。撫で撫でもっと!あえて言うならその手をスリスリさせてください!


 ところで。


 この裏庭という名前の森ですが、下手に奥へと入ってしまうと危険な獣が沢山います。もっと奥へと進むと今度は魔獣がいます。というか、フローライト家の屋敷の周りはこんな森ばかりです。視力検査の下に隙間がある形をしていて中心に屋敷があり、一部の森をぐるっと柵で囲って屋敷との境目にしています。
 何でこんな面倒な場所に屋敷を建ててんだって思うでしょうが、屋敷から正面を向くと領地の街や王都への道があり、屋敷の裏側は『黒の森』と呼ばれる、魔獣がてんこ盛りな危険な森。さらにその森を越えると隣国との境界線となってます。
 そう、フローライト家は国の国境の見張り兼街を守る領主さんでもあるのです。

(へきちにある、こっきょうをまもるこうしゃくけなんですよね。うちは)

 頭を撫で撫でというより、さりさりと舐めてあやしてくれていたクオンにお礼を言って立ち上がり、今いる場所をもう一度確認してから、御守り袋に入っている赤色の精霊石を取り出した。

「ここなら、だーじょぶ!」
『あー…まぁ、ええけどな?きぃつけや?』

 何故か不安げなクオンに首を傾げつつも、私は精霊石の窪みに赤い石をはめ込んだ。カチリと音が鳴って、強い光が輝きだす。

「ふお!?まぶちい!」
『嬢ちゃん、吹き飛ばされんなやー!』

 目がチカチカしていて動けなくて、全身に強い風を浴びる。どうやらクオンが押さえてくれているようで、その場にジッとしていると、バサバサと音が聞こえて来る。そっと瞳を開けると、目の前に居たのは綺麗な赤い竜。

「ちれい…」
『アレは炎の竜や、ほんまやったらごっつ気が荒い』
「こあいの!?」
『嬢ちゃんに着いてきたんやったら大丈夫やろ、名前付けたってみ?』
「なまえ…なまえ…」

 目の前で私を見詰めて空中待機している綺麗な竜の瞳は、とても綺麗な赤い宝石のようで。
 ポロリと口から零れたその宝石の名前が、気に入ったのです。

「『ルビィ』あなたのなまえは、ルビィ。わたちはせらふぃな」

 名前を付けるとルビィの身体が光り輝き、大きな竜の姿が縮んだのか光が小さく形を作り出した。光が収まると、その場にいたのは屋敷のメイド服を着た、鮮やかな腰までの赤い髪をした十二歳~十三歳位の少女だった。

「我が主の仰せのままに、我の名は『ルビィ』炎属性のドラゴンです。この姿は主のお世話をさせて頂く為のもの」
「く、くおんとはちがうの!」
「我はドラゴンですので、猫精霊と違い変化の呪文が使えます」
『我とか言うとる時点で、嬢ちゃんの事下に見とるやないかい。私とかあるやろ』
「偉そうな猫ですね、無属性ですか」
『わいはクオンや!』

 挑発には乗らなさそうな感じだったのに、ルビィは炎属性の所為か熱い女性のようです。今は初対面だから大人しくしてるのかもしれないですね?

「おうちにかえるの、おとーたまにあって」
『そやな、人型で嬢ちゃんの側におるんやったら挨拶せなな』
「何故、無属性の猫如きが偉そうなのか」
『わいは無能やないで!可愛らしい猫の姿はしとるけど、無限収納完備の高性能な猫精霊や!』
「むえんちゅーのー…」

 『無限収納』は、インベントリとも呼ばれていて、魔道具ならマジックバッグですね。魔道具は大きさや性能に限りがありますが、クオンの持つ高性能無限収納は、時間の経過が無く竜の姿のルビィでも軽く収納できるそうです。

 ただし、生物(いきもの)は除く。

 魔物の素材を入れたいのなら、討伐し終わったもの。お魚などの食材も、ちゃんと絞めたものでないと入れられないそうです。
 でも、初めて聞くクオンの能力に、私の心はウキウキしてます。だって無限収納ですよ!使い道を考えるだけでもわくわくしませんか?


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

「本当に僕の子供なのか検査して調べたい」子供と顔が似てないと責められ離婚と多額の慰謝料を請求された。

佐藤 美奈
恋愛
ソフィア伯爵令嬢は、公爵位を継いだ恋人で幼馴染のジャックと結婚して公爵夫人になった。何一つ不自由のない環境で誰もが羨むような生活をして、二人の子供に恵まれて幸福の絶頂期でもあった。 「長男は僕に似てるけど、次男の顔は全く似てないから病院で検査したい」 ある日、ジャックからそう言われてソフィアは、時間が止まったような気持ちで精神的な打撃を受けた。すぐに返す言葉が出てこなかった。この出来事がきっかけで仲睦まじい夫婦にひびが入り崩れ出していく。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

処理中です...