最恐の精霊姫様は婚活を希望します

梛桜

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プロローグ

過保護なお兄様達

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「さっきの音は何事だ!?」
「あれ?セラフィナ姫が、どうして此処に?」
「何!? セラフィナ?」
「ふぉるにーたま!」

 クオンとルビィが言い合う中、バタバタと足音を立ててやってきたのは、次兄のフォルス兄様とフローライト辺境侯爵家の母方の従兄弟である、ヴォルテクス伯爵家の二男クレイオ・ユーリウス=ヴォルテクス様でした。二人は私を見つけた途端目を丸くしてますが、まぁそれは当然ですよね。

 流石にルビィの登場の突風やら羽ばたきの音は大きくて、屋敷をかなり騒がせたようです。しかも、本来なら屋敷の子供部屋で、子守の侍女と遊んでいるはずの私が庭とはいえ外にいる。
 妹を可愛がってくれているお兄様にとっては一大事なのです。お父様に何もかもそっくりなフォル兄様は、大きな声で叫んだかと思えば、私に駆け寄り軽々と抱き上げました。

(ふおおおっ、だっこのときちゅうにとんだよ!)

「フォル、力のまま抱きあげたら危ないから!優しくといつも言ってるだろ」
「大丈夫だってクレイオ、セラは喜んでるし。なー?セラ」
「泣きそうなのに気付こうな?」

 若干あのふわっと内臓が浮く感覚に涙目ですけどね?フォル兄様手加減ください。引きつった笑顔の涙目でクレイオ様を見詰めると、優しい微笑みを浮かべフォル兄様から抱っこを代わってくれました。クレイオ様とフォル兄様は幼馴染みでとても仲良しさんなのです。
 クレイオ様は黒髪で緑の瞳という、前世からでも馴染み深い色合いを持つ所為なのか、一緒にいるととても安心する方なのです。三人のお兄様達も妹には十分甘いのですが、クレイオ様も妹のように可愛がってくださいます。

『にゃーん』
「あれ?猫…と、誰?」
「お初にお目にかかります、セラフィナ様に御仕えさせて頂く事になりましたルビィと申します」

 白黒の猫と共に現れた赤い髪と赤い瞳の美少女に、フォル兄様の目は釘付けです。クレイオ様は訝しげに視線を向け、私を守るように強く抱き締めています。

「フローライト辺境侯からは、そんな話聞いた事もない」
「なんな、るびぃ、せらふぃなのせいえいしゃーなの!くーえにーたまめっしないえ」
「は?何て言ってんだ?」
「その猫も、その赤い髪のメイドも、セラフィナ姫の精霊だそうだ。僕セラフィナ姫を守りたいだけであって、叱ったりはしませんよ」

 にっこりと優しく微笑みを浮かべ、クレイオ様は私の髪を撫でてくれました。ですが、フォル兄様は私の言葉を理解しているクレイオ様を、悔しそうに睨みつけています。いつもの事ですが。

「精霊!?ってか、いつも思うけど何でお前セラの言葉わかるんだよ」
「どうしてお前には分からないんだ?」

 私の言葉を信用してくださるのか、クレイオ様はクオンとルビィから私を隠す事はしなくなりました。手を伸ばしてクオンとルビィを呼び寄せると、素直にやってくる一匹と一人に警戒はしつつも露骨な表情は消えました。

「精霊様だとしても、どうしてセラフィナ姫がお外に出ていたのですか?」
「あにょね、おへやわかんなくなちぇ、くーちゃんとおいれーって、どーんってしちゃらころーんって」
「全然わかんねー…」
「どうやら猫の精霊様に誘われたか案内されたようだな、とはいえ、屋敷で子守メイドが探しているんじゃないか?」

 三歳児の説明で理解してくださってありがとうございます。
 フォル兄様は半信半疑ですが、クレイオ様はざっくりですが言葉を信じてくれるようです。クオンに案内された道だというのは正解ですので、それで裏庭に出てしまったと思ってください。

 とりあえず屋敷に戻ろうかとフォル兄様達が話しているのですが、先程から視界の端に入っている小さな妖精?精霊?がいるのです。もしかしてルビィの羽ばたきで飛ばされてしまったのでしょうか?花壇に上半身を突っ込んでもがいています。

(たすけたほうが、いいですよね)

 うごうごともがいてクレイオ様の腕からすり抜け、花壇へとよちよちと歩き出す私に首を傾げつつも、クレイオ様がついてきます。クオンもルビィも一緒についてくるので、フォル兄様もなんだ?と言いながら着いて来ました。
 バタバタしていた小さな足を掴み、よいしょ!と引っ張るとスポンっと音がして抜けました。土で汚れて真っ黒なお顔になってますが、妖精さんでしょうか?子供の掌に乗りそうな小さい人の形をしていて、茶色の髪に飴色の瞳が綺麗です。

「よーせーしゃん?」
『嬢ちゃん、こいつも精霊やわ』
「せーえーしゃん!」
「え?何かいるのか?」
「んー?セラフィナ姫には見えているのか?」

 じっと見詰めている私に気がついた精霊さんは、どこかおどおどしていますが、精霊の腕輪を目にした途端嬉しそうな雰囲気を醸し出したのです。ぴょんぴょんと跳ねて何かを訴えていますが、言葉が通じないのが困りました。

(もしかしたら、なまえをつけるというけいやくをしないとだめなのかな?)

「あなたはのーむ、わたちはせらふぃなよ」

 ノームと名前をつけると、今度は温かな柔らかい光がノームを包み込みました。姿が見えるとノームの背中には蝶々のような羽がついています。

「かーいいのー!」
「僕、ここまで飛ばされて困ってたんです。ありがとうセラフィナ、これを貰って?僕の石」
「のーむのせいえいしぇき?」

 コロンと小さな掌に乗せられた小さな石は、琥珀色をしていてとても綺麗でした。そのまま精霊石を腕輪に付けると、ノームのほかにも小さな気配を感じました。花壇をじーっと目を凝らしてみてみると、大きな葉っぱに隠れている小さな女の子の姿。
 ノームのようにおどおどした感じで、緑色の瞳が此方をみているのです。緑色のその瞳に、私は後ろで転げない様に支えてくれているクレイオ様を思い出し、笑みを浮かべました。

「おいえ?あなたのなまえは、どりゅー。わたちはせらふぃな」

 温かな光が女の子を包んで、姿を現したときにはノームと同じ羽が背中についていた。おどおどとしていた瞳がにっこりと綺麗に微笑みを浮かべ、差し出された小さな手には、綺麗なエメラルドのような石が乗せられている。

「くれるの?ありあとー!」
「はい、精霊に愛されし姫君。私達は貴女様の助けとなりましょう」

 ノームと並んで笑顔でそういってくれる二人に、私はもう一度お礼を言って精霊の腕輪に二人の精霊石をはめ込みました。四つ揃った腕輪に一人達成感を抱いていたのに、私の背後にいたクレイオ様とフォル兄様は、呆然とした顔をしています。
 どうしたのかと首を傾げてお二人を見上げると、正気に返ったフォル兄様が『精霊が現れたー!』と大声で叫び、屋敷へと走り去って行きました。

「ふぉるにーたま、うしゃい」
「いや、驚きますからね?精霊の姿を見るなんて…、百年以上ぶりではないでしょうか」

 感動した声がクレイオ様から聞こえて来ましたが、その時の私は、自分のした事の大事さを分かっていませんでした。

*******************

【名前】セラフィナ・コーディエ=フローライト

【種族】人族

【年齢】三歳

【職種/レベル】
・辺境侯爵令嬢 Lv3
・精霊使い Lv1

【スキル】
・精霊魔法 Lv1

【称号】
・精霊に愛されし者


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