最恐の精霊姫様は婚活を希望します

梛桜

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自称勇者様

魔術師(兄)のお仕置き  ルシアン視点

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「さてと」

 妹のセラフィナを先に向かわせて、護衛と鑑定に出ていたパーティをじっくりと見回す。フローライト辺境侯爵家の武力は有名で、学園に通っている間は、王都のギルドで要請があれば手助けをするという約束がある。

(フォル兄さんは好き好んで、A~Sランクの依頼を受けてたって聞いてたけどね~)

 目の前に居るのは、最近王都のギルドで噂になっていた件の関係者かな?と思っている。『勇者を名乗る男が依頼を引っ掻き回している』だったかな。受け付け嬢のお姉さんも、王都のギルドマスターも溜息を零していた。
 それに、本当なら五人のパーティなのに、一人足りないよね?

「…君たちのパーティって、五人って登録してるよね?あと一人はどこ~?」

 僕の言葉に反応したのは、堕落した回復術士と鑑定で言われていた回復術師の女の子。受け付け嬢のお姉さんが心配するには『前衛特化の可愛い女の子なのに、傷だらけすぎる』との事。回復は出来るはずなんだけどなー?

「王都のギルドは僕も登録しててね?たまーに、約束で手の足りない依頼を受けてるんだよね~。主に、失敗したのとかだけど」
「王都の冒険者ギルド?」
「今んなこと関係ねーだろ!」

 自称勇者と脳筋戦士はそれだけじゃ分からないのか、僕に剣を向けたまま。意味が分かったのは初級魔術師と、回復術師の子。ビクって肩が揺れたからね。
 ぱちりと目が合った座り込んだままの魔術師に、にこっと笑顔を向けてやると、『ひぃっ』と引きつった声を上げて後退り、分かりやすいくらいに顔色を青くした。

「だ、駄目ですぅ!ディフェット、グルダン剣を、剣を下ろして!」
「どうしたんだよ、ルールー」
「急に何を言い出すんだ、どう見てもヒョロッちぃ後衛の魔術師じゃねーか」

 必死になって自称勇者の足に縋りつく魔術師だけど、二人はきょとーんとして全然分かっていない。あわあわと涙目でこっちを見てくるけど、セラが其れをやってたら何が何でも聞いてあげるけど、他の子がやっても何とも思わないよねー。

「話し合い終わったかなー?」
「はぁ?」
「あ、先に一個聞いておこうかな。これってさ、王都の冒険者ギルドからの依頼なのかな?」
「ちげーよ、俺が聞いたのはどっかの貴族からの直接指名依頼だってだけだ」

 うん、脳筋戦士は素直な馬鹿か。

「確かスウェアの家からの斡旋で、上級貴族の依頼だったよな。だからギルドは関係ないし、依頼金だって斡旋料渡す義務もねーからな!」
「聞いてるの、そういう事じゃないわよ!何ペラペラと!」

 焦る回復術師と泣き出す魔術師、自称勇者も只の馬鹿なのか怪しいかな。でも、情報を聞きだせるのは回復術師なので、アレを捕獲したらいいのか。
 目の前の獲物が決まったなと、思った瞬間。僕の口にはゆっくりと笑みが浮かぶ。

「きーまったぁ」

 ニタリと笑うと、魔術師の女の子が堪えられなかったのか、『いやああああ!!』と叫びだした。もう壊れちゃったのかな?早すぎるよね、これから楽しまなくちゃ。
 屋敷から適当に羽織ってきたローブのポケットに手を入れて、中に入っていた指揮棒を取り出す。愛用の杖は部屋に置いてきたから、今はこれでやり過ぎないようにヤらなきゃね。

「まずはー『捕縛(プレヘンデレ)』それから、君煩いから『睡眠(ヒュプノス)』。あとは、試してみたかったコレ!セラお手製の『魔獣ホイホイ』!」

 回復術師の着ていたローブが体に巻きついて動きを止め、一人泣き叫んでいた魔術師を強制的に眠らせる。あー静かになったぁってとこで、取り出したのはセラが調薬した粉末状の薬。これを撒くと匂いに引寄せられて、魔獣がやってくるんだって。討伐の時に試して見てくださいって渡されてた取って置き。

(あ、でも…。何か気をつけないといけない事があったような?ま、いいか)

 風下にいた自称勇者目掛けて放り投げたら、流れるような展開に呆けていたらしく、直撃した。隣にいた脳筋戦士も一緒に被ったらしくて、二人で咽てるのが可笑しくって笑っちゃった。

「な、なにすんだ!テメェ!」
「スウェアとルールーに何をした!この外道!大事な仲間に危害を加えるなんて、許さないからな!」

 あ、何だろう。イラッとした。

「僕が外道なら、君たちは何なのかな?失敗ばかりの役立たず?ギルドの穀潰し?あ、そうか!自分で勇者だなんて名乗っちゃう痛い子だね!」
「なっ!?」
「テメェ!!」
「あははっ、振り回しても当たらないよ~?」

 カッとなって切りかかってきた二人を軽く交わして、クスクス笑っていると感じる魔獣の気配。鬼ごっこは此処までにして、そろそろ周りを見て貰おうかな。
 森の入り口だから、危険ランクの高い魔獣は出てきてないけど、危険ランクBくらいならこの二人でも十分だろう。

「最初だけは手助けしてあげるよ『爆発(エールプティオー)』」

 魔獣を始末しない程度に刺激してしまえば、あとは勝手に『魔獣ほいほい』の粉末を被ったふたりへと向かっていく。

「ふふふ、フォルス兄さんが来るまで頑張ってね。杖もなく簡易呪文で済ませてあげたんだから、出来るよね」

 捕獲した情報源と、眠っている荷物を横へと移動させて、僕はゆっくりと見物に回ることにした。王都のギルドで出された依頼『パーティ:世界の運命の見極め』は、コレで依頼達成かな?Cランクに上がる為の品行方正の見極めを、僕に依頼されてるなんて思っても見なかったようだけどね。 

「王都ギルドにも、行方不明の子の捜索してもらわないとね」

 転がっている二人へと冷たい視線を向けて、僕は一度だけ見かけた一人に意識を向けるのだった。

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