最恐の精霊姫様は婚活を希望します

梛桜

文字の大きさ
19 / 25
乙女ゲームの王子様

本題をききましょう

しおりを挟む


 第一王子様が目覚めたのは、それから七日後でした。流石に王宮へと返すわけにもいきませんので、フローライト家で看病する事になりましたよ。ええ、突然やってきて本題もまだです。
 やっと目覚めた『アレクシス=ガーデンクォーツ第一王子殿下』に、もう一度丁寧に名前を告げると、顔を青褪めさせていたので、この人はゲーム経験者、もしくは知っている人なのだと確信もしました。

「それで、第一王子殿下。我がフローライト領には何の用件で?」
「…私の婚約者筆頭候補である、セラフィナ・コーディエ=フローライト嬢に会いに」
「婚約者筆頭候補?うちの末の娘が?」

 熊さんのように厳ついお父様を前に、ガッチガチに固くなっている王子様ですが、どうにか用件を口に出来たようです。
 それにしても、筆頭婚約者候補ですか。全く持ってそんな話は聞いていないのですけど、どうしてでしょう?そんな話があったら……。兄様達が総出で潰してるはずです。

「その話は、陛下に即行でお断りしたはずですが?」
「え?で、でも宰相が、フローライト辺境侯爵家のセラフィナ嬢を婚約者として決定すると…」
「そもそも、その話を陛下がした瞬間にぶった切って断りましたが?側にいた宰相がその話を持ち出すなど、可笑しな話ですな」

 うわぁ、反論は許さんって滅茶苦茶良い笑顔ですよ。お父様。
 第一王子様を連れてきたのは、パーティランクではDレベルと言う下から数えるほうが早いパーティでした。他の側近や侍従も無し。完全に、フローライト領に責任を被せるか暗殺待ったなしの、扱い酷いな!?って立場ですよ。

「幾ら同じ年でも、アレクシス第一王子殿下には婚約者候補として、ジークフリード侯爵家のイオフィエル嬢がいらしたはずです」
「イーフィは、シャムシエルの婚約者に…」
「何分辺境の地ですのでな、連絡や情報が遅い土地です。第一王子殿下がお越しになったと、此方は突然聞かされたのです」
「そんな!宰相は、既に連絡も返事も着ていると!」

 スイの補助能力『気配隠蔽』を使ってお父様の執務室に潜り込みましたが、何度かリアン兄様の視線が此方へと向けられます。あれは気付かれてますわね…。お父様は武力重視の戦士型ですので、魔力察知の能力は低いのですが、リアン兄様は魔力察知も優れていますからね。
 ジッとリアン兄様を見ていると、ポンポンと小さくお膝を叩いています。これは、ここにおいでという合図。やっぱり気付かれてるー!

(あとで、大人しく叱られますわ。今はリアン兄様の膝に座ります)

『アカン、あのにーちゃん絶対わかっとるわぁ。此処の兄弟察知力凄いねん』
『気配ば消すてらだげで、魔力は消すてねはんでね』
『両方消した方が良かったんかー?せやけどやりすぎたら嬢ちゃんの気配あらへんって大騒ぎやしなぁ』

 クオンとスイが話をしていますが、本当に猫妖精の言葉って不思議。言葉を話してしまうとお父様にも王子様にも気付かれてしまいますので、リアン兄様の手をそっと握り締める事にしました。ニコニコと良い笑顔の兄様ですが、目の前の王子様は真っ青で今にも倒れてしまいそうですわね。
 私と同じ年齢なら十歳です。そんな子供に大人二人が詰め寄れば、話をまともになんて怖くて出来ません。特に、今の前世の意識に引っ張られている王子様なら尚更です。其れまでの横柄な態度の馬鹿王子ならふんぞり返っていたでしょうけど。

(この様子ですと、前世は成人後に亡くなったのかもしれませんね)

「父上第一王子殿下となると、王太子となる可能性も有りますよね?そうなると、セラフィナにはお妃教育が義務付けられますが…」
「ふむ…」

(それはイヤですわ!!)

 リアン兄様の言葉に、私は首を横に振って答えましたが膝をポンポンと宥めるように叩かれました。話を大人しく聞いていなさいという事でしょうけど、王妃とか王子妃なんて堅苦しいのは絶対嫌です。政略結婚反対!
 第二王子殿下の婚約者に決定している、イオフィエル様には悪いですけど、幾ら政略結婚でも王族なんて面倒で家族とも中々会えないような地位は絶対嫌です。
 ぎゅーっとリアン兄様の手を握り締めていると、笑いを堪えているのか肩を震わせるリアン兄様が感じられます。

「フローライト家は、セラフィナに政略結婚は望んでいない」
「ですが、この件は父上…、国王陛下からの王命です。」
「それは、妃殿下の背後に寄るものでしょう。側妃様は我が国の公爵家の姫君でしたからな、妃殿下は隣国の王女といえど親交の為に差し出された政略結婚」

(妃殿下は人質、側妃様は本来は王妃となる人だった。と、いう事ですね)

 のらりくらりとお父様は交わしていますけど、子供相手に本気にはなっていません。今の宰相は王家に貸しがあるとはいえ、国王陛下よりも権力が強そうなのは如何なものでしょう。しかも第二王子殿下の母親である側妃様のご実家ですか。
 そりゃあのゲームで、兄である第一王子が死んでもあっさり王位継承して王太子となりますわね。寧ろ第二王子が王太子になるように働きかけますわね。

『なぁ嬢ちゃん、あの王子さん何で顔色悪いん?』
(コレが乙女ゲームに関係された世界なら、自分の寿命があと五年だからでしょうね。それと、ゲーム経験者なら分かるヒロインの設定性格でしょうか。私はやりませんでしたが、ハーレムエンドもありましたので)
『それって一人で沢山の男ば相手にするってやづ?悪女だね』
(事実は小説より奇なり、とも申しますので、どうなるかは分かりませんけどね。ですが、悪役令嬢と呼ばれているイーフィは良い子ですよ?)
『知っとるん?』
(ええ、お友達ですので)

 攻略がどうのとか王子様の命運は興味ありませんが、お友達のイーフィが悪役令嬢というのは首を傾げたくなります。死刑も追放も宰相の掌で転がされるのは、如何なものでしょう?しかも、私を引き出すという事は、フローライト領にも何か言い掛かりをつけたいと見ました。

「父上、お話を受けてみてはいかがでしょう?」
「宰相の腹を探るのに、セラフィナを哀しませるのはなぁ…」
「大丈夫です、セラフィナなら分かってくれますよ」

 膝にいる私の頭をそっと撫で、口元に微笑みを浮かべるリアン兄様にゾクリと寒気を感じつつも、私はきゅっと手を握りコクンと頷きました。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

「本当に僕の子供なのか検査して調べたい」子供と顔が似てないと責められ離婚と多額の慰謝料を請求された。

佐藤 美奈
恋愛
ソフィア伯爵令嬢は、公爵位を継いだ恋人で幼馴染のジャックと結婚して公爵夫人になった。何一つ不自由のない環境で誰もが羨むような生活をして、二人の子供に恵まれて幸福の絶頂期でもあった。 「長男は僕に似てるけど、次男の顔は全く似てないから病院で検査したい」 ある日、ジャックからそう言われてソフィアは、時間が止まったような気持ちで精神的な打撃を受けた。すぐに返す言葉が出てこなかった。この出来事がきっかけで仲睦まじい夫婦にひびが入り崩れ出していく。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

処理中です...