攻略よりも楽しみたい!~モフモフ守護獣の飼い方~

梛桜

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一年目。

入学式

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    カラカラと馬車の車輪が音を立てて道を走っていく。

 これから向かうのは、ゲームの舞台でもあるクラスター学園の入学式です。ゲーム本編開始は二年生になってからの一年間ですが、クラスター王国では十五歳になると平民・貴族関係なく、希望や行く気があれば学園へと通う事が出来のです。
 希望制なのは、貴族の場合は、早々に婚約と結婚が決まっている令嬢がいらっしゃるからです。親の決めた結婚なので、婚家の許可をとって学園へやってくる方もいらっしゃいますが、一年と持たずに辞めてしまうのが殆どですね。
 それに、一般の方を見掛ける事も殆どありません。裕福な商家の跡取りや、勉強をしたいお嬢様くらいでしょうか?王立とはいえ、入学金とか現実的な物が結構かかりますからね。あとは騎士を目指す二男以降の子息です。
 唯一の例外は、平民でも貴族でも、魔法の力を確認されると『魔法特進科』へと入学を余儀なくされます。魔法はしっかりと制御出来ないと大変なので、『魔法特進科』については、国からの補助として寄付金がだされる決まりとなっています。

(こういうのを実感してると、遊んでいたらお父様やお母様に申し訳ないと思ってしまうのは、前世の名残なんでしょうかねぇ…)

 学園への入学金、制服代、授業料。学園から家が遠いのなら入寮費と。執事にこっそりと総額を聞いてみましたが、目玉が飛び出るなんて生易しかったですからね。前世の公立や私立を思うと倒れるかと思いました。
 あ、侯爵家は補助は受け取らず、しっかりと自費です。しかも寄付金も出しているんですって、ビックリですよ。ある所が出さないと色々と回らないんですって、頑張ってお勉強させて頂きます。

「緊張しているの?アリア」
「へ?緊張、ですか?」
「ずっと難しい顔をしてるから。大丈夫だよ?私もラズ殿下もリィ殿下も一緒だからね」
「あ、はは…、え、ええ。アイクお兄様と御一緒できてとても心強いですわ。ギベオンも一緒ですし、楽しみにしております」

 いけない、入学金とかに頭をグルグルさせている場合では有りませんでした。
 いや、でも、気になるよ?こんなに支払ってるなら勉強しないと本当に申し訳ないというか、攻略がどうのとかあわよくばアズライト様に会いたいなーとか、ふわふわ思ってて本当にすんません!って一瞬思ってたよね。
 そもそも、どうしてそんな現実的な事をわざわざ聞いていたのかと言うと、学園入学は決定だったけど、卒業後は王宮魔導師にならないかとか、どこそこの公爵家令息の婚約者にとか、果てはラズーラ王子殿下やリモナイト王子殿下の妃候補の話まで出てきてしまって。
 学園に通ってきちんと制御の方法を学ぶのが先決だと、お父様が言ってくれなかったらと思うと、今でも背筋を嫌な汗が伝う。王族や貴族って『そんな事』で済ませてしまう人が居るってのが怖かった。

(前世とスケールが違うわ、うっかり聞く金額じゃなかったですよ。本当)

『アイドクレーズ様、アメーリア様。到着しました』
「ああ、行こうかアリア」
「はい、アイクお兄様」

 御者に開けて貰った扉から、アイクお兄様が一足先に下りて手を差し伸べてくれる。
 その手にそっと自分の手を差し出して、制服のスカートを気にしつつも令嬢らしく優雅に馬車を降りた。ギベオンも今日は狼の姿で付いてきている。
 白を基調にされた踝までのロングワンピースに、紺のセーラーカラーの襟にも白いレースがあしらわれている。スカートの裾には紺のレースがあしらわれていて、ふわりと風に揺れるのがとても可愛い。 ベルト代わりの背中で結ばれた大きなリボンが、動きと風に揺れるその姿は、画像で何度も見ていたアメーリア=アトランティそのものだった。

「殿下達がいらっしゃるのはこれからだから、向こうで待とうか」
「はい、そうですね」
「アリア、待て」
「え?ギベオン?」

 アイクお兄様に手を引かれて、ラズ殿下やリィ様の到着する馬車停めまで行こうとした時、背後から物凄い勢いで突進してきた女生徒が居ました。
    咄嗟に人型に変化したギベオンが私を抱き寄せて事なきを終えましたが、ここ学園ですよ、室内ですよ、人がいっぱいなんですよ?走るな危ない。
 貴族の令嬢ではやってはいけない程の爆走だったのですが、一般の方でしょうか?だけど、あのストロベリーブロンドの髪は、きっともう一人のヒロインさんですよねー。

(あー、早速めんどくさいのに出会ってしまったよ)

「なんだ、今のは」
「危なかったねアリア、大丈夫?」
「ええ、ギベオンありがとう」

(ただ、走り去って行く時に舌打ちされた気がしたんですけど…)

「一般科の生徒かな?新入生だとは思うけど、廊下は走らないように徹底しないと危ないね。後で教師を通しておくよ」
「もしかしたら入学式に遅れてしまうかと慌てていたのかもしれませんし、教室は同じにはならないと思いますから大丈夫ですわ」

 にっこり笑って、優雅で淑やかに令嬢らしく。
 十五年間で培った令嬢教育の賜物をしっかりと使って、まずは王族であるラズ殿下とリィ様のお出迎えです。猫を何十にも被って気合を入れるとしましょう。

(きっと、今後も会うことになりますからね。もう一人のヒロインさん)

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