攻略なんてしませんから!

梛桜

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OPは賑やかに。

癒しのモフモフタイム *




『アリア!起きた?』
『アリア、守れなくてごめん…。俺達弱かった』
「ハウライト、オブシディアン…?」

 目を覚ますと、私の首の周りに巻きつく白と黒の二本の尻尾。左右から見下ろしてくる、金と青のオッドアイの瞳。私の可愛くて愛しい守護聖獣が、傍に居た。頬に頭を摺り寄せて、私の名前を呼びながら甘えてくる。私も手を伸ばして二匹を優しく撫でたいのに、何故か腕が持ち上がらない。運動を思いっきりした後の疲労感に似ている疲れを感じる。

「アリア、良かった気がついたんだね」
「アイクお兄様……此処は?」
「学園の救護室だ、カフェテリアで倒れたのを覚えていないかい?アズラが下敷きになってくれたから、何処もぶつけてないと思うんだけど……」

(アイクお兄様、もしかしなくてもアズラを私のクッションにしましたわね?可哀想にアズラ、後でお礼としてお菓子を渡しますわ)

「身体は疲れていますが、怪我は無いようですわ」
「魔力を使った感じは無かったんだけど」

 突然倒れたのは、ギベオンが闇の世界に引き込んだ所為だもの。私が怪我をしそうな場所を選んでいない辺り、本当に目的はルチルレイの為だったのでしょうね。アイクお兄様に心配をさせたのは許せないけど。

「皆さんは?突然でしたもの、ご心配をおかけしましたわ…」
「それは大丈夫、リモナイト殿下と同じクラスの女生徒が駆けつけてくれてね。その女生徒の守護聖獣が、アリアと遊んで欲しくて誘ったんだと言いに来てくれたんだ。抑えられなくてごめんなさいって」
「そうでしたの、モフモフは夢だったのですね」
「ハウライトとオブシディアン以外の守護聖獣が存在しているのにも驚いたけど、確かにあの大きな狼は何度か目撃されていたからね。ラズ殿下も最近聞いたらしいんだ、今は代表室で話を聞いているらしい」

 どうやらギベオンは皆纏めて出逢えるように、私をギベオンの結界の世界へと引き込んだようです。ついでに私から魔力を吸い取ったのはやり過ぎですけどね。
 ラズーラ王子殿下とリモナイト王子殿下だけならまだしも、攻略対象者全員が揃うなんてそうそう有りませんから、一気に狙ったのだと思います。夢の中で話していた事をぼんやりと考えていると、アイクお兄様が眉尻を下げて私を見つめていた。かなり心配をさせてしまったようですね、アズラも下敷きにしてしまったなら怪我は大丈夫でしょうか?

「アイクお兄様、アズラは大丈夫でしたの?」
「怪我は大丈夫。ただ、アリアの傍についてるって久し振りに獣化しちゃってね。一緒に居たジャスパーが護衛にって連れて行ってしまったんだ」
「何ですって!?アズラの獣化でしたら、どうして私を叩き起こしてくださいませんの!?」
「アリア。言うと思ったけど、落ち着いて?」

 アイクお兄様の言葉に、文字通り飛び起きました。最近はコントロールも出来てきていたので、アズラが獣化するのは本当に稀だったのです。折角のモフモフ機会を逃すなんて、私とした事がまさかの失態ですわ……。

(ギベオンは人型でモフモフ出来なかったし、折角の獣化アズラもモフモフ出来ないなんて!モフ欲が上がるだけで解消されません)

 女生徒はきっとルチルレイの事ですが、この場所に戻ってくるかは解らない。ですが、戻ってきたその気はモフらせて頂きましてよ、ギベオン!!あの大きな身体を包むダークシルバーの毛並みを堪能して、しっかりとモフモフするのが、今の私の野望ですからね!

(ルチルレイが触れないというなら、其の分私が思いっきり堪能させて貰いましょう!)

「アリアが目覚めたと風魔法でリィ殿下に報告をしているから、直ぐにでもくるよ」
「にゃあ」
「にゃにゃ!」
「ん?ハウライトとオブシディアンの尻尾が太いね?」
「戻ってきたみたいですわ、警戒してますのよ。もしかしたら聖獣も一緒なのかも知れませんね」

 ギベオンには良い感情を抱いていない、ハウライトとオブシディアンをそっと抱き締めて、大丈夫ですわと囁く。心配している二匹の瞳はジッと私を見つめているけど、私だけをそうやって見つめてくれるように、ギベオンもルチルレイの為に動いてましたのよ。

(今は攻略対象は居ませんもの、アイクお兄様は違いますからね)

 廊下から聞こえて来るバタバタとした足音は、人の姿に戻ったアズラの音でしょう。折角久し振りに獣化したというのに、モフモフタイムの機会を失うなんて失態ですわ。ベッドに座り乱れていた髪を整え、アイクお兄様と少し会話をしつつ、扉が開くのを待っていた。
 ノックの音が無く、勢い良くバーン!!と開いた扉に、救護室付近にいた人達数人は全員、凄い音がした扉の心配をした事でしょう。例外は私とアイクお兄様くらいでしょうか?

「アズラ!獣人は力が強いんだから、加減しろっつってんだろ!」
「ご、ごめんジャスパー!でも、今は無理ー!」
「騒がしいですわよ、アズラ」
「あ、アリアー!!」

 遠くから聞こえて来るジャスパー様の声と、全然反省をしていないアズラ。苦笑を浮かべて出迎えた私に、冷ややかな微笑みを浮かべるアイクお兄様の周りには、ブリザードが吹き荒れそうな位に、寒いです!

「あ、アイドクレーズ様…っ」
「アズラ、学園の扉といえど壊したら無料じゃないからね?魔法特進科の生徒が、魔力を暴発させて壊したのなら、国から保障されているけど、君は騎士科なんだから…」
「あ、あう…っ、ごめんなさいっ!」

 微笑みのブリザードと異名を持つ魔王様ことアイクお兄様は、アズラの説教を始めてしまいました。あまりの怖さにアズラは尻尾を抱え込んでしまっています。こうなってしまっては説教が終わるまで離してはくれませんので、私はアズラを生贄にさせて頂きますわ。(合掌)
 怒られているアズラに追いついて、私の前にはモフモフに戻ったギベオンと可愛い少女が立っている。ギベオンがジッと見上げるその先の少女は、緊張しているのか小さく深呼吸すると、淑女の礼をとった。私のほうが位が上の家だからね、学園ではあまり地位については厳しくしてないんだけど。

「モルガ男爵が娘、ルチルレイ=モルガと申します。アメーリア様には、私の守護聖獣がご迷惑をおかけ致しました」

 ルチルレイに合わせて、ギベオンも頭を下げる。ギベオンの世界では失礼なくらい大笑いしてくれましたけど、守護する少女を恥ずかしい目に合わせない等の気遣いが出来るのは、流石守護聖獣と言ったところです。

「迷惑だなんて思っていませんわ、ルチルレイ様。私動物がとても大好きですの、同じ魔法特進科のクラスでお見掛けした時からお話したかったの」
「え?」

 微笑みを浮かべてそういった私に、ルチルレイが顔を上げてホッとした顔をした。かーわーいーいー!!何、本当に美少女ですよ皆さん!ギベオン貴方良い趣味してますわよ、ふわふわの薄いピンク色の髪に、空色の瞳は綺麗に澄んでいる。緊張していたからか、少し青白い顔色をしているけど、それを抜いても十分に観賞していたい美少女です。

(あああああ、ぎゅってしたい!小さい時にもちゃんと逢いたかったなー)

 動きが止まっている私を察知したのか、アズラを叱っていたアイクお兄様から、冷気が押し寄せてきます。ごめんなさいアイクお兄様自重します!!でもでも、可愛いのとモフモフだけは、本当に本当に大好きなんです!

(せめて、せめてギベオンだけは!生でモフモフさせてください!)

「ルチルレイ様、私、ギベオンをもう一度触りたいのですが、宜しくて?」
「え?……ぎ、ギベオンを、ですか?」
「はい!」
「え、っと……ど、どうぞ?」

 戸惑うルチルレイに、勿論、喰い気味で行かせて頂きます。今ちょっと引きましたわね、ギベオン。しっかりと見えてましてよ。私が目の前のモフモフを逃すはず無いでしょう。ハウライトとオブシディアンはギベオンを警戒して尻尾を膨らませたまま、ベッドの上で待機しています。猫の特性でしょうね、高いところから観察をしているようです。白黒と左右対称の金と青の瞳が警戒心いっぱいに、大きな狼さんを睨み付けてるんですよ、可愛いでしょう?

『本気で来るのか』
「ええ、勿論でしてよ。私は自分で言った事は実行しますの」

 きっと聖獣と守護対象以外からは、ガウッとかグルルとしか聞こえていないギベオンの声でしょうが、そんな事は今は関係ありません。しっかりとした首にぎゅうっと抱きついて、猫に比べると少し硬いですが、手どころか全身が毛皮に埋もれてしまいそうになるくらいのふっわふわを堪能します!

「モフモフ癒されるー!ふかふかですわー!」
『そ、そうか……それなら良かった』
「遠い目をしないで下さいません?貴方に抱きつきたくて結構我慢してましたのよ?」

(其れこそ、初めて逢った幼い子供の時からの野望ですわ)

 外側に比べて、中の毛皮はふわふわしていて、お腹の毛も極上の触り心地。上質な毛足の長い絨毯の様です。獣の匂いが一切しないのは、ハウライトやオブシディアンと一緒ですね。アズラは獣人ですが、お風呂に入ったりしてる伯爵家の人間でもあるので、獣の匂いはありません。

「ギベオンは花の匂いがしますのね、ルチルレイ様の匂いかしら?」
「花の……匂い? 私の……」
「私のハウライトとオブシディアンは甘い匂いがしますのよ、アイクお兄様がお菓子の匂いだと仰いますの」
「あの、アトランティ侯爵令嬢様はギベオンの声がわかるのですか?」
「え?ええ、私が一緒にいるオブシディアンとハウライトも守護聖獣ですの」

 モフモフ撫で撫でをこれでもか!と堪能し(幾らしても、もっとしたくなる魅惑のモフモフ恐るべし!)ギベオンを全く恐れない私に驚いているルチルレイに、にっこりと微笑みを向ける。攻略対象でもある王子殿下達や、騎士科の二人、アイクお兄様には、私は既に動物のモフモフ大好きっこの認識はされていますのでね。気になんてしませんよ。
 ギベオンの首元に顔を埋めて話をしていると、初めてギベオンをしっかりと見たとルチルレイの顔が物語って居ました。顔つきは狼犬やシベリアンハスキーみたいな精悍な顔つきで怖いかもしれませんが、ギベオンは狼姿だとすっごくカッコイイんですよ?

「アリア、本当にもう大丈夫なのか!?」
「あら、アズラ。アイクお兄様からのお説教は終わりましたの?」

 アイクお兄様に怒られて、半分涙目の可愛いアズラに視線を向けて、今はルチルレイとギベオンを二人?一人と一匹?で見詰め合えるようにしてあげました。守護聖獣と契約をしている者は、声を出さなくても会話出来ますし、話をしているのかもしれません。

(だけど、ちょっとルチルレイの表情が険しいような…?)

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