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OPは賑やかに。
他人の魔力は蜜の味?
身体は疲れていましたが、ラーヴァとお友達になった風の精霊さんリピドの為のケーキやクッキーを作り、今日のお詫びを籠めたカップケーキを人数分ラッピングしていく。これは侍女のセシルにも手伝って貰ったので、可愛いのが沢山出来ました。
「リィ殿下に、いつものお菓子?」
「いえ、今日ご心配をおかけしましたから皆さんに…と」
「アリアのお菓子はラズ殿下もお好きだから、きっと皆喜んでくれるよ。明日はマーカサイトにも挨拶できそうだね」
「ええ、楽しみですわ。マーカサイト様の制服姿」
ラーヴァと仲良しなため、第二の弟のように思っているホーランダイト家のマーカサイト様は、公式で発表されてる五人の攻略対象者の最後の一人です。後輩枠ってやつです。お父様のホーランダイト伯爵様と同じで、ほわんとした癒し系の可愛らしい男の子です。一番穏やかで、幸せなエンドを目指せるのはマーカサイト様です。伯爵夫人エンドか宮廷魔術師エンドですからね。
(確かに安定しているし、マーカサイト様は可愛い雰囲気のとても優しい男の子なんですが、何が大変って、ゲームではラーヴァが邪魔をしにくるっていう驚きの展開ですよね。お陰で出会いイベントを起こすのが大変で張り付いてないと攻略できないっていう)
優しいマーカサイト様が、姉に騙されているんじゃないかって、ラーヴァに邪魔されるんですよ。騙すなんてとんでもないし、ラーヴァに睨まれるとか堪えられない…。幼い頃から弟の様にラーヴァとひっくるめて可愛がってきましたので、今ではアメーリア姉様と呼ばれるまでになりました!頑張った私!
「アイドクレーズ様、アメーリアお嬢様、此方の片付けは私が致しますので、お早めにお休みくださいませ」
「ええ、そうするわ。ごめんなさいねセシル」
「部屋まで送ろう、しっかり眠って魔力を回復させないとね。モルガ嬢にはもう、いきなり守護聖獣の世界に引っ張らないようにお願いしないとね」
王子様よりも王子様らしいと私が独断で思っている、アイクお兄様に微笑みを向けられたら、どんな人でもコロッと行く事間違いなしですわ!本当に、この人の妹で良かった、神様有難うございます。だって、妹じゃないとこんなに沢山の表情が見れないわけですし、何と言ってもアイクお兄様のショタ時代を知ってるどころか間近で見てたんですよ!何度ヨダレの心配をした事か……!
(アズラには可愛いの鼻血の心配で、アイクお兄様にはヨダレって、本当令嬢としてどうかと思いますわ自分でも。いや、でも。美少女なアイクお兄様とジャスパー様が並ぶと本当に絵になってね?何で此処に友達がいないの!?と叫びたくなったよ?)
「でも、流石に疲れましたわね…」
疲労感を感じつつ、ふかふかのベッドへ飛び込んだ。
いつもなら飛び込むなんて、はしたないと怒られるのでやりませんが、今日はそれどころじゃないくらいに疲れてましたのでね。美味しいご飯もお腹一杯食べたので、睡魔も早くこっちに来いと手招いてます。いざ、夢の国です。
ハウライトとオブシディアンは、私の足元で丸まって眠っています。寒い季節は私の布団の中へと入り込んでくるので、モフモフ温かな寒い時期の幸せです。
(朝方は冷える時は首元で寝ているから、それも幸せよね)
眠りに引き込まれる感覚は、ギベオンに呼ばれる時と似ているかもしれない。そんな事を考えていたからなのか、それとも、一度引き込まれた事で道が出来てしまったのか。眠っているのに、寝返りを打てない重みに零れる呻き声。
「…お、もい……」
「失礼な、そんな事はない」
「ん…ぁっ、ちょ、なに!?」
ぺろりと頬を舐める感触に、慌てて瞳を抉じ開けると、私の上に乗っかっていたのはまさかのギベオンだった。モフモフバージョンだったので、よっしゃ!ウェルカム!と言いたい所だけど、残念ながら、私の両腕は動かない様にギベオンの体重で押さえつけられている。
「は!?まさか、聖獣様が夜這い!?」
「……似たようなものか」
「冗談で言ったのに、肯定しないで下さいません事?」
「的確に言い当てたのは、アリアだろう?」
「夜這いしてくる命知らずなんて、お目にかかった事ありませんわよ」
自分でもおいおいと思いますが、私、混乱していましてよ。アズラが夜這いなんてしてきたら、其れこそ飛んで火に居るモフモフ。すかさずモフモフの刑にしますが、それよりもアイクお兄様のブリザードが怖いわよ。次の日の朝にはホワイトタイガーの氷漬けが、お屋敷の門の前に飾られているでしょう。って自分で想像してて怖いわ!!
「……ぶふっ!」
「ギベオン、笑いたいなら我慢せずに笑っても宜しくてよ」
「すまない、アリアは可笑しな方に混乱するのだな」
「ルチルレイ様は違いましたの?」
「どうだったかな、初めの頃は怯えていた様に思うが」
そうですよね、普通の貴族の令嬢様でしたらその反応の方が正解ですわよね。私ときたら『モフれないだと!?』ってそっちの衝撃の方が大きくてよ。それにしても、ギベオンも吹き出した後は、私の頬にモフモフとけしからん毛並みを擦り付けてきますのよ。どいてください、私に直にモフらせろ。
「アリアの魔力は、良く練られていて美味そうだ」
「まさかの餌判定を頂きましたわ」
「アリアの子猫達が、こうやって魔力を喰いに来ないのは、お前の作る菓子に魔力が籠められているからだな」
「……私の作る、お菓子にですか?」
「ああ、王子達や騎士の二人、あとはお前の兄からもアリアの魔力を感じた」
相変わらず頬に擦り寄って話を続けていますけど、餌判定を頂いた今となっては、その口が少し怖いですわよ。赤頭巾ちゃんになった気がするのは、私だけでしょうか?時折ぺろりと私の頬や唇を舐める紅い舌先が温かくて、怖がっていいのか安心していいのか戸惑いますわ。
「この姿では、魔力も取りにくいか」
「そもそも、魔力を取ってますの?じゃれているようにしか思えませんのですが」
「それもそうだ」
(あれ?これ、不味った!?)
何を思ったのか、私の身体から重みが無くなった瞬間、目の前には端正な顔をした人型ギベオンが現れてしまいました。これでいいだろうと、自分だけで満足なギベオンに腹パンしてもいいですか?膝蹴りしてもいいですか!?それとも回し蹴りいっとく!?
「何を物騒な事を考えている」
「何で、わざわざ人型になりますの!?」
「黙っていろ」
「んんっ!?」
文句を言う私の唇に、柔らかなギベオンの唇が重ねられ、そのまま開いていた咥内へと薄い舌先が差し込まれる。舌先を絡めて吸い上げられる熱さは、魔力を吸い取られる熱さなのか、それともこれは、背を伝っていく快感の所為?
不思議な銀色の瞳が、熱く甘く私を見つめ、ドキドキと胸の鼓動が煩くなっていく。息苦しさに零れる吐息まで甘くなっていて、自分が自分ではない感覚に、このまま沈み込んでしまいたくなる。
(だ、め…、このままは、駄目)
「……ふ、ぁ…っ、はな、してっ」
「極上だ」
「…っ、こ、の…変態狼!お前の躾はどうなってますの!?」
「ぐはっ!?」
全力でギベオンのお腹に膝蹴りをお見舞いした私、悪くない。
自分とは思えない甘い声を出してしまった事にも、顔が真っ赤になるくらい恥ずかしかったですが、アメーリアは侯爵令嬢ですよ!?いや、軽いちゅってくらいならアイクお兄様やラーヴァやハウライトとオブシディアンともやるけど!家族だしノーカンですよ!しかもギベオンは二度も舌を入れてきやがりましたわ!
「言葉が乱れているぞ、侯爵令嬢」
「あ、貴方に令嬢の言葉なんて、必要ありませんわよ!」
「この方が魔力を吸い取れるんだ、慣れろ」
「無理でしてよ!其の前に、魔力でしたらルチルレイから貰って下さいませ!」
「アリアの方が美味い。それに、ルチルレイは最近自分の望みを叶える気が無い。魔力が濁っていて不味い」
「おいこら、このエロ狼」
ぺろりと満足気に自分の唇を舐めるその仕草は、普通の令嬢ならば落ちたでしょう。真っ直ぐに見つめてくる温度を感じさせない銀色の瞳は、何処となく熱を帯び、ダークシルバーの毛並みの所為かやや浅黒い肌は魔力を取り込んだからか、上気して暖かい。深い藍色の髪も艶っぽく私へと落ちてきて、何でも許してしまいそうな程だ。
しかし、本来なら守護する相手から貰う魔力を不味いだと?ふざけんな。
残念ながら、私は普通の令嬢様じゃない!
「ま、」
「ま?」
「魔力が欲しいなら、モフモフの姿でこいやー!!」
火事場の馬鹿力ってどんな時でも有効なんですね。ギベオンの気が抜けていたのもありますが、見事私のグーパンはギベオンの顎にヒットしました。乙女(中身は違うけど)の唇を勝手に奪う不届き物には制裁は必要でしてよ!
「痛いぞアリア」
「自業自得ですわ!もしかして、ルチルレイにまでそうやって魔力を取ってますの?」
「当然だ」
ギベオンの言葉に絶句しましたよ、間抜けな顔を晒してぽかーんと見事にです。あんなに真っ直ぐな熱い瞳で自分だけにくるんですよ?並大抵の箱入り令嬢なら、恋に落ちていてもおかしくないじゃないですか。
触れ合うだけのキスでもなく、狼の姿でもない。しかも、それを守護聖獣となった日からやっているのなら、私にじゃれに来るギベオンをみて、ルチルレイが嫉妬しても当然としか…。
「そういえば、アリアの側に行くなといわれたな」
「やっぱりか…っ、夢から出て行って反省なさいませ!」
可愛いルチルレイとお友達になれる淡い期待が、ガラガラと崩れる音がした。ぷるぷると震える拳を握り締めて、私はギベオンを夢から吹き飛ばすイメージで拳を叩き込んだ。
次の日の朝、夜中に再び魔力を抜かれてしまった私が、ベッドから起き上がれる事は無く。泣く泣くアイクお兄様にお菓子を託し学園をお休みする事になってしまったのです。
(これは、ギベオンを直ぐにでも躾けないと大変ですわね)
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